怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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76話の最後、問い詰められるところですが、数日経っていると加筆しました
まあ、その日のうちに広まるのもできなくはないですが、なんとなく
それと活動報告で参考程度になのですが、1話あたりの文字量が大体どれだけがいいのか聞いて見たいと思います。長い方がいい、短い方がいい、だけでも大丈夫ですので


77話

 ニュージェネの三人はレッスンに向かっていたが、数日が経ってもいまだ翠が了承していることについて引きずっている三人の雰囲気は重く、会話はなかった。

 

「……あ、加蓮、奈緒」

 

 イスに座っている二人が見知った顔であった渋谷が足を止め、名前を呼ぶ。

 その声に反応し、俯いていた顔を上げた北条と神谷はイスから立ち上がって頭を下げる。

 

「「おはようございます」」

「「お、おはようございます」」

 

 それにつられ、島村と本田も頭を下げて挨拶を返す。

 

「この前、話した子たち」

「凛ちゃんが話してた」

 

 誰だかよく分かっていない二人は渋谷の補足を聞いて思い出す。

 と言っても初対面であるのだが。

 

「アイドルフェス見てました! 凄かったです!」

「そうなんですか! 嬉しいですね」

「二人のことも美嘉姉が褒めてたし、私たちも頑張らなきゃ!」

「べつに……まだ仕事もそんなにしてないし」

 

 照れているのか、神谷はそっぽを向いて頰を指でかきながら否定する。

 その横顔が赤くなっているのに気づいているが、指摘するものはいなかった。

 

「いやいや、センスいいって言ってたよ」

「嬉しいな。…………あの、私たちまだ新人だけど、よろしくお願いします!」

「よろしく!」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 北条に続いて頭を下げる神谷に、本田と島村も照れ臭そうにしながら言葉を返す。

 

「そういえば、二人は何してたの? レッスン待ち?」

 

 ふとした渋谷の疑問に北条と神谷は顔を俯かせる。

 その様子に三人は首を傾げ、二人から話を聞くことに。

 

 

 

「CDデビューが延期!?」

「それって酷すぎない?」

「まだ未熟だし、しょうがないって思う部分もあるんだけどさ」

「常務のプロジェクトが解体って話でね……」

 

 そのプロジェクト解体について、翠が了承していることを思い出し、三人も口を閉じる。

 

「…………ちょっといってくる」

「行くってどこに? 今は待つように言われてるでしょ」

「それは、そうだけど……。でもこんな酷いことってないじゃん!」

 

 だが我慢の限界がきたのか、本田は踵を返して何処かへと行こうとする。

 言ってやりたい気持ちは同じである渋谷だが、抑え込んで待ったをかける。

 

「…………しまむーはどうなの?」

「へっ!? わ、私ですか?」

 

 渋谷と暫く睨み合ってた本田だが、もう一人の意見を聞こうとたずねる。

 矛先を向けられると思っていなかった島村は驚き、視線をあちこちへと向けながらも言葉を紡いでいく。

 

「あ、あの……えーと、頑張ります! レッスンをいっぱいして、ライブだってありますし! まずはそれを頑張って、その……あれ? すみません……何か変なこと言っちゃいましたか?」

 

 途中で皆の様子が変わっていることに気付き、おろおろし始める。

 

「ごめん! 頭がゴチャゴチャになっててきつく当たってた。……よし! 本田未央、レッスン頑張ります!」

「私もごめん。何かしてないと悪いことばかり考えてて。加蓮と奈緒も一緒にレッスンしよ?」

 

 島村を見て毒気を抜かれた本田と渋谷は謝罪を口にし、少しだけ気持ちの切り替えができたようであった。

 

「い、いいのか?」

「邪魔にならないかな?」

「大丈夫!」

 

 北条と神谷も今のやりとりを見て少し気が晴れたのか、少しだけ表情が明るくなっていた。

 

☆☆☆

 

「君らしい企画だね」

 

 今西部長に時間をもらった武内Pはこの数日で考えた企画を見てもらっていた。

 

「他にもいくつか考えたのですが……」

「いや、君の信念を感じるいい企画だと思うよ。……ただ、美城常務がこの内容を納得してくれるか、かね?」

「部署や彼女たちの未来がかかっています」

 

 今西部長は武内Pの真っ直ぐな瞳に思わずこの間聞いた話をしてしまいそうになったが、この経験を()て成長すると翠から言われているため。

 なんと答えたらいいのか悩み、こうなるのだったら知らない方がよかったかと思考がそれていた。

 

「ん〜……高垣くんの話、聞いたかね?」

「はい。美城常務の誘いを断ったと」

「彼女も彼女のやり方で美城常務に対抗するようだ。……ふふっ。なんだか君に少し似ていると思ってね」

「私に……ですか」

 

 彼の話から推測するに、高垣くんには美城常務の話を断って欲しかったように思える。

 たとえそれが翠くんから勧められた仕事で、期待を裏切ると思うような状況を作られて(・・・・)いたとしても(・・・・・・)

 

 僕が言えるのはここくらいがせいぜいだろう。

 武内くんやアイドルの子たちはすごく彼に愛されている。

 ただ、本人は素直じゃなくて不器用だから。勘違いをされるほど遠回しになってしまうけど。

 

 ──いつか、気づいてくれると信じているよ。

 

 すでに何人かは気がついているようだけど。

 ふふっ。彼はいつだって皆のことを思っている。


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