それらを含めた結果、もしもの話として「貞操観念が逆転」したアイマスの話を書こうかと……
書いてみたいのもいくつかあったのですが……どのように落とすか話が浮かばなかったので……
ifの引退して何してるかとかは今後、思い浮かんだ時に書くかもしれませんが
翠さんが泊まりに行くのは本編でもしかしたら出る可能性があるので……なかったら遠い未来にある完結後に書こうかな、と
後書きにネタバレ含む(?)話を少し
「翠さん、お疲れ様です」
「おー、たっちゃん。おつおつー」
「それで、皆さんは……」
「五時までレッスンだから、そろそろ終わると思うよ」
大きなイベントに向けてのレッスンであるため。皆の完成度を高めてもらうため、食後のアドバイスは少しキツ目にした翠。
つい先ほどに見て回り、皆のレベルが上がっていることに内心喜びつつ。さらに細かいところまで気を配るようアドバイスを終えたところである。
縁側に腰掛けながら空を見上げ。陽も傾いて空がオレンジ色へと染まるのに暑いままだとボヤいていた時。仕事に一区切りをつけた武内Pが様子を見に戻ってきた。
「みんな、きちんと俺の言うことを聞いてくれるし、分からないところがあれば俺にすぐ聞くんじゃなくて、こうしたらいいんですか? とまずは自分で考えて答え合わせをするし。どんどん吸収していくから。俺が見本として見せる踊りも、何か盗めないか真剣に見てくれる。教え甲斐があっていいね。いつ俺を抜かしてくれるのか楽しみだよ」
その時を想像してか。柔らかく微笑む翠を見て、武内Pも少し顔を綻ばせる。
「それは何よりです。翠さんがいればこの後も問題はなさそうでしょうか?」
「んー……確かに、俺がいればこの後も大きな問題は出ないだろうけど……」
「けど……?」
「一応はさ、シンデレラプロジェクトってものがあって。それに集められた少女たちがいる。……ならさ、その中からリーダーを決めるのもありなんじゃないかな。って思ってさ」
「……なるほど。翠さんがいつもいるとは限りませんし、いい案です」
頷くや武内Pは手帳を開き、何かを書き込んでは前のページをめくって何かを確認し始める。
「翠さんのリーダーを決めるという案なのですが、この合宿の中頃から全体楽曲のレッスンが始まりますし、その時にいたしましょう。名目も私が仕事で離れるといった風に伝えれば皆さんも納得いくかと」
「おけ。いきなりリーダーって言われてもできること限られてくるし、俺がサポート入るよ。んで、問題が出ても俺が入ればそれほど深刻にもならんだろうし」
「はい、よろしくお願いします。私は仕事がありますのでここで寝泊まりできませんが……翠さんならば安心して任せることができますので」
軽く確認を終えたとほぼ同時に。
レッスンを終えた少女たちがやってくる。
「あ、プロデューサー!」
『お疲れ様です!』
「みなさん、お疲れ様です」
「おつおつー。早いけど、風呂入っておいで。お湯に浸かりながらマッサージするように」
挨拶もそこそこに。汗を流させるため、翠は手を振って早く行くようにと促す。
伝わる人には伝わるため、その子たちが他の子たちに伝え。みなは一度頭を下げて風呂の着替えなどの準備に向かう。
「さて、これから夕食の支度なのだが……たっちゃん、手伝ってくれる?」
「はい。それくらいなら」
時計で時間を確認した武内Pは首を縦に振り、スーツを脱ぎ。何故か翠の荷物と一緒に運ばれていた武内Pに合うエプロンをつける。
「メニューはどのようにしましょうか」
「んー、昼はカレーとサラダにしたんだが……夜の方が腹減ってるだろうし、ガッツリなものと栄養補うのをいくつか、かな?」
「分かりました」
そのあと、二人はこれからのことや夏フェスの話といった仕事関係の話をしながら。
調味料などが必要だと思えば手渡され。
先の調理で必要なものの下準備がされていたりなど。
息のあった様子でテキパキと料理を作っていく。
「このようなものでしょうか」
「だな。夕食にはだいぶ早いが……腹減ってる時に食べるのが一番だしな。それと夕食後にはデザートもあるし」
冷蔵庫へと目を向けた翠はゴクリと喉を鳴らす。
「……翠さん、全部一人で食べてはいけませんよ」
「あ、あはは……まさかそんなことするわけ」
「……前科があるのをお忘れですか」
「はてさて、なんのことやら」
武内Pの視線から逃れるように目をそらした翠の口元は引きつっていた。
「……さすがに、今度は殺される気がする。食べ物の恨みは……特に女子からは怖い」
ブルリと体を震わせるのを見て、武内Pもこの様子なら大丈夫と息を漏らす。
「でわ、私はそろそろ」
「おう。行ったり来たりで悪いね」
「いえ。みなさんのこと任せてしまってすみません」
「たっちゃん。こういうときは感謝を述べるものだよ」
「……はい。ありがとうございます」
エプロンを翠に手渡し、武内Pはもう一度『よろしくお願いします』と残して帰っていった。
「…………でもね、たっちゃん。俺は感謝されるようなやつじゃないんだよ」
「……翠さん?」
「…………」
背が見えなくなり、ポツリと漏らした言葉。
そばには誰もいないと思っていたため、驚きから固まり。少しの間、声をかけてきた人ーー双葉の顔をジーっと見ていた。
「…………は、早いね」
「もう、みんな上がってるけど」
そう言われて耳をすませば、少女たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
「んー、そっか。なら俺も風呂入ってこようかな。みんなには体冷やさないよう気をつけてって伝えといて。…………それと」
双葉の横を通り過ぎて。
途中で切られたセリフが気になるのか、振り返る双葉に翠も振り返り、裾を少し持ち上げながら。
「ーー覗くなよ?」
妖しい雰囲気を出し、魅惑的な笑みを浮かべる。
「…………」
それを真正面から、手を伸ばせば届きそうな距離で行われ。
当てられた双葉は顔を赤くさせながら頷くことしかできないでいる。
今まで、翠はその見た目をフルに活かし。あどけなさや、素の性格である面倒、怠さを出していた。
ほとんどの割合で怠さであったが、稀に見せるあどけなさなど、違った魅力で人を飽きさせず。引き込んでいた。
であるため。
ほとんどの人が……いや、ほぼ全員が大人の雰囲気を出せないものだと思い込んでいた。
しかし、それは間違いであり。
出せないのではなく、出さなかったのである。
わけとしては単純明快。
ーーーー仕事の幅が広がるからである。
ただでさえ、引退できず。日頃からサボりたい辞めたいなどと言っている翠である。
そのうえ、今ではアルバムを出した後は仕事が倍増間違いなしである。
この事まで先読みしていたのかは不明であるが、最初からあの雰囲気を出せることが分かっていたら。仕事が今以上に増えていたのだけは感じ取っていた。
そして初めての犠牲者が双葉であった。
翠は言うだけ言うとすでに風呂入るための準備に向かっており。今の双葉がどのようになっているかなど知らないでいた。
しかも、少し照れて終わりぐらいだとしか考えておらず。
後々、これが面倒になるとは微塵も思わなかったであろう。
☆☆☆
翠が風呂から上がった後は早めの夕食となり。昼と同様に好評であった。
中には自身の料理の腕に嘆くものもいたが。
「それじゃ今から自由時間ね。いつ寝てもいいけど、明日のレッスンに支障が出たら……ね?」
片付けや洗濯(少女たちが自分でやった)が終わり。
各々、自由な時間を過ごし始める。
みんなで楽しめる簡単なオモチャなら持ってきていいと言っていたのでトランプをしたり。
読書や、雑誌を一緒に見てたのしくおしゃべりなどをしていた。
中にはユニットで集まり、あーだこーだと今日のレッスンを振り返っている子たちもいたが、翠から休むこともレッスンだと言われ。他の子たちの遊びに混ざっていった。
それらの様子を少し離れたところでイスに座り、今度は自分のためだけに用意した紅茶を飲みながら見ていた翠は携帯を取り出してどこかへと電話をかけ始める。
『…………はい』
「なんでそんなテンション低いんですかね」
『翠さんからの電話なんてロクなものありませんし』
「そんなこと言ってると、また何時ぞやみたいにありすのいえに突撃するぞ?」
『…………切りますよ』
「別に切っても構わないが……まだ俺だけしか知らない秘蔵写真が親御さんの手に渡るかもしれないが……ああ、それもいいか」
そう伝えた瞬間、電話口の向こうから何か物が落ちる音や慌ただしい音が聞こえてくる。
『な、ななななななっ!? まだあるんですかいくつあるんですか早く処分! 処分してください!』
「まあまあ、少し落ち着きなって。夕食は食べたかい?」
『…………まだですけど。そんなことより写真の件です』
「全く。もっと素直になりんさい」
『翠さんにあまり言われたくありません』
「やっぱり、また変装してドッキリかけるしかないようだな」
『……………………』
「どした?」
急に向こう側が静かになり。翠が声をかけるも、しばらく橘は黙ったままであった。
「たまにはでもいいから、お前さんからもかけておいで」
『…………ありがとうございます』
「まったく……嬉しくて泣くなら俺が一緒の時にしなさい。写真撮れないじゃないか」
『さ、最低です! 女の子の泣き顔を撮るなんて……最低です!』
最後にそう叫んだ後、ガチャっと電話が切られる。
初めからうるさくなる事を見越していたからか。電話口を耳から遠ざけていた翠はダメージをおっておらず。口には楽しそうに笑みを浮かべていた。
「さて、次は……」
再び携帯をいじり。どこかへと電話をかける翠。
しかし。
『可愛い可愛い僕は大変忙しいので電話に出ることができません。なので可愛い可愛い僕に連絡があればピーという音の後にメッセージを残してください』
「…………お前、俺が帰ったら覚えとけ」
自分から電話をかけておきながら。相手の都合など一切考えていない翠はそう言い残し、電話を切る。
そして電話に出なかった苛立ちが一割と帰ってからの楽しみが九割ぐらいの笑みを浮かべて携帯の画面を落とす。
「さて、と」
あくびを噛み殺して立ち上がった翠は玄関へと向かう。
「翠さん、どこかいくのですか?」
靴を履いているとき、後ろから声をかけられる。
振り返り見れば純粋な疑問から尋ねる新田の姿が。
「ちょいと、そこらへんを散歩」
ドアを開け。
すっかり日が沈み、月が照らす外を見ながら答える。
「……なら、私もご一緒していいですか?」
「別に構わんが……特に面白いことなんてないぞ? それでもいいんなら他のみんなに伝えてからおいで」
「分かりました」
頷いて、出かける事を伝えるために奥へと少し小走りで向かう新田を見ながら。
翠は内心で『このまま黙って、先歩いて行ったらどうなるんだろう』と考え。
玄関から外へと出て扉を閉め。
すぐ横に移動して壁へと張り付く。
「あれ、翠さん……?」
「もしかして先に行っちゃったにぃ?」
「なら早く追いかけるにゃ!」
しばらくして。戻ってきたのは新田だけでなく、他にも数人分の足音が聞こえてくる。
そのことに翠はやっぱりそうなるよねと半ば諦めた表情をしながらも息を殺し。玄関口へと目を向ける。
そして『あ、このままじゃドア閉める人に見つかる』と思った時には既に遅く。
準備を終えた新田たちが玄関から出て歩いて行く。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「蘭子ちゃん? どうかし…………翠さん」
新田、諸星、前川と続いて出て行き、最後であったのか神崎が出てきたのだが。
まるで初めから翠がそうする事を分かっていたかのようにすぐ見つかった。
そのまま、なし崩し的に神崎がついてこない事を不思議に思って振り返った前川も翠を見つけ。
その声に反応して新田と諸星にも見つかる。
「…………さて、散歩に行くか」
壁につけていた部分を手で叩きながら。
何事もなかったかのように歩き始める翠。
しかし、そうは問屋が卸さないようで、
「…………翠さん、何してるにゃ」
「子どもっぽいにぃ」
「ぽいじゃなくて、子どもです」
「……………………」
思ったままを口にしていく。
神崎は鍵を閉め。翠に対して何も言わないまま、ジッと見ているだけであった。
「別にええやん。遊び心は大事ぞ?」
特に悪びれた様子もなく。
小さくあくびを漏らしながら新田の横を通り過ぎ。散歩を始めてしまう。
四人も一つため息をつき。翠の横に並んだり後ろを歩いたりとついていく。
「杏もくると思ってたんだが……面倒だって?」
「はい。……その後に杏は杏で時間があると言っていたのですが」
「ちょっとした世間話だよ。あとは……凛や智絵里は?」
「凛ちゃんはあまり行きすぎてもあれだからってお留守番だにゃ。……でも、なんで智絵里ちゃんが出てくるにゃ?」
「…………ん? 聞いとらんの? 智絵里にもバレちゃったんだよね」
この場にもし双葉がいたとしたら。今のを聞いて、武内Pと話していた時の事が脳裏をよぎったであろう。
だが、今この場には双葉がおらず。後に緒方が翠について深くまで知っていると聞いても、その事が頭をよぎることはなかった。
「翠さん、またバレたのかにゃ」
「…………」
「あいたっ!? どうして叩くにゃ!?」
重い空気にさせないよう気を使ってか。前川は明るく言ったつもりであるが、無言のまま翠に頭を引っ叩かれていた。
「お前さんらがペラペラと話さなければ美波やきらり、凛も知らなかっただろうよ」
「…………うっ、それはみくが悪かったにゃ」
「そ、それはみくちゃんだけじゃなくてきらりたちも悪いんだにぃ……」
「半ば無理やり、聞き出しちゃったもんね……」
「まったく。散歩に来たんだから落ち込んだ雰囲気出すなし」
どうあってもこの話題では重くなる空気に翠はため息をつく。
「蘭子はさっきから大人しいが……どうかしたのか?」
「ふぇっ?」
先ほどまで静かであった神崎に話をふるも、予想していなかったのか可愛らしい声を漏らす。
「……まあ、何か他に話題を……話題、ねぇ……」
話題を探す翠の口角が少し上がった。
しかし、新田たちも話題を探すのに意識がいって気がついていなかった。
「そういえばさ」
翠が口を開き、視線を集める。
「今でこそ俺がこうして仕事しないでアルバムの曲作ってるが……こうなった経緯、知らなかったよね?」
皆としても興味のある話題であったらしく。首を縦に振って続きを促す。
「実は、もしかしたら本当にアイドル引退してたかもなんだよね」
以下、ネタバレ含むかと
案の一つに翠さんが不慮の事故で行方不明といったものがあるのですが
…………まんまそう、ではないのですが、それに近いものを本編に書く予定ですので……
不慮の事故……事件……、まあ、だいぶ先の話になってしまいますが……