この小説、書き始めて……どれくらいたったんだ?
…だいたい、一年と二ヶ月。よくここまで続いたもんだ(まだ未完結)
本年もダラダラと更新は続けていく予定ですゆえ、みなさま、今年もよろしくお願いします。
「んもぅ! また杏ちゃんがいないにぃ!」
「あ、それなら私が行ってきます」
翠にレッスンを見てくれと頼み、準備をしている時になり。双葉がいないことに諸星が気づき、声を上げる。
それを聞き、すでに準備を終えている緒方が手をあげる。
「ごめんにぃ」
「ううん。いつもきらりちゃんが杏ちゃんのこと見てるから、手伝えたらいいなっておもってたの」
話もそこそこに。緒方は双葉を連れてくるため向かう。
「初めてのテレビの時、杏ちゃんに助けられたこともあるし。きらりちゃんの力に少しでもなれるよう、もっとレッスンに連れてこなきゃ!」
声を出して気合いを入れる緒方。
もし、双葉が聞いていたのならば『感謝してるならもっとぐうたらさせてよ』とでも言っていたであろう。
しかし、この場にはいないため。
緒方の言葉に反応するものはいない。
「杏ちゃーー」
「ーーーーこと?」
「…………?」
ドアを開け、双葉を呼ぼうとした緒方だが。
ふと、聞こえてきた会話がなぜか気になり。その正体を掴むべく、気配を消すようにして歩きながら声のする方へと近づいていく。
話は武内Pのデスクがある部屋で行われているらしく。
緒方は中の話をよく聞こえるようにとドアに耳を当てる。
「双葉さんからは何も話せない、ですか?」
「無理無理。誰かがこれ以上、周りに漏らしたら……翠さん、引っ込んじゃうよ」
すぐそばで緒方が聞き耳を立てているとは知らず、二人の会話は進む。
「……自分が何もできないのがもどかしいですね」
「……そりゃあ、翠さんがそうさせないように振舞ってきたんだからしょうがないでしょ。むしろ、ここまで短期間の間にボロが出て、加えて夏のイベントが終わったら翠さんから話の場所を設けてくれるって言ってるんだからすごい進歩じゃない?」
「それは……そうなのですが」
「翠さんには杏も含めてみんなが助けられたんだから……その、めずらしく本気でも出して、翠さんの力になるよ」
頬を赤くさせ、そっぽを向いている姿が簡単に想像できるほど、口調から照れが伝わってくる。
途中からである上、前提を知らない緒方は何なんの話かさっぱりであったが……翠が関係することと何か悩んでいるといった推測がたっていた。
そしてその推測が外れていなかったりする。
「それより、そろそろあんずも行かないと。着替えたきらりが入ってきそうだから」
それを聞いた瞬間、緒方はパッとドアから離れてさらに部屋の中へと入っていく。
そして双葉が部屋から出てくる前よりも先に呼びかける。
「杏ちゃん? あれ、ここにはいないのかな? きらりちゃんの代わりに来たんだけど……違うところに行っちゃったら……」
オロオロとした感じを出し、辺りを見回し始めたところで双葉がドアを開けて出てくる。続くようにして武内Pも。
「智絵里?」
「あ、杏ちゃん! もう練習始まっちゃうよ! プロデューサー、行ってきます!」
緒方から出てくる積極的なことにより、二人が思考停止へとなっている間に双葉の手を引いてレッスン室へと向かう。
☆☆☆
「…………えーっと……?」
翠は今、緒方と二人でお茶をしていた。
本日は凸レーションがデビューする日であるのだが、緒方がどうしてもと翠に声をかけた。
作曲をサボって凸レーションの成り行きを見たかった翠だったが、珍しく緒方が積極的に行動したため。興味がそちらへと移ったのである。
「相談、があるんだっけ?」
しかし、こうやって対面すると緊張がでてきたのか。
先ほどから緒方は紅茶を飲み進めるばかりで話そうとしない。時折、視線を翠に向けるも、目が合うとすぐにそらしてしまう。
いつまでもこうしているわけにはいかないため、翠から話を切り出していく。
「相談……というか、聞きたいこと……というか」
「んん? 聞きたいこと?」
「は、はい。……その、翠さんにはたくさん助けてもらって、その恩返しというか……何か、少しでも力になれたらな……と」
「…………?」
要領を得ない台詞に、翠は首を傾げつつも思考を巡らす。
自身のことについてある程度深く知られている人の中に。緒方は入っていない。
であるならばその全て、または一端を誰かから聞いた。あるいは何かしらがあって知る機会があった、ということである。
……もしくは本当に何も知らず、今までの会話の中から推測して『闇』に気づいたのか。
いま持つ情報だけでは断定できないため、翠は少しだけ表情を歪める。
翠の願いとしては何も知らず、『闇』にも気づいておらず。ただ何か悩み事があるとだけ思ってくれていることである。
「……誰かから聞いたの?」
またも話が止まってしまったため、翠はカマをかけてみる。
引っかかれば誰が原因なのかが分かるし、仮にそれが出なくとも何かしらの情報は得られると思い。
「その、
「…………誰かが話してる? ドア越し?」
誰が原因なのかは分からないままであるが、緒方が
誰かが話しているということは、すでに知るメンバーの誰かと誰かが。もしくはそれ以上で話していたということである。
あのメンバーの誰かが他の人にペラペラと話すことはないと思っているため、必然的にそうなる。
聞いた経緯も話しているのをドア越しに、盗み聞きした形であることも翠の精神に少なからずダメージを与えた。
「…………そっか。聞いちゃったんなら智絵里だけ話さない、ってわけにもいかないもんね」
実際に話していたのは双葉と武内Pであり。双葉からは何も話していないため、緒方は翠が何か悩み事があると思って力になろうとしただけである。
しかし、二人はすれ違いに気づくことがなく。
翠は自爆するような形でまた一人、深いところまで知る人物を作ってしまう。
「確かに。俺は親から虐待されてたし、体に傷も残ってる。だけどそれはもう過去のことだし、区切りもついたから大丈夫だよ」
「……………………ぇ…………」
突然の重い話についていけず、緒方は固まる。
ただ何か悩んでいると思っていただけに、衝撃は大きかった。
そして、翠も話した後の緒方の反応にやらかしたと理解する。
どこで間違えたのかと先ほどの会話を思い返し、さまざまな推測を立てるが原因は分からず。
色々と諦めた翠は、カップに残っていたカフェオレを飲み干す。
「……い……、…………私…………なって…………なきゃ……」
どうしたものかと考えていると、緒方が何やら呟いていた。しかし、その声は小さく。翠の耳には途切れ途切れにしか届いていなかった。
「智絵里?」
「は、はい! すみません、大丈夫です!」
「そっか。取り敢えず、今日のところはここまでにして……詳しい話は後日、俺から声かけさせてもらうね」
「…………はい」
「…………」
悲しそうな表情をする緒方を見て。翠も表情を歪めるが、いつまでたっても終わらなくなってしまうために伝票を持って立ち上がる。
「……あ、誘ったのは私ですし」
「気にしない気にしない。智絵里の年頃だと色々必要なものもあるでしょ? デビューしてお金が入ったんなら、自分のために使いな。……後は、後輩に奢ってもらうのはなんだかなって感じでさ」
「…………翠さんだって、もっと自分のことを大切にした方がいいと思います」
「うぐぐ……痛いとこを突いてくる」
思わぬ切り返しに、翠から苦笑いが漏れる。
「まあ、今日のことは他の人には内緒ね。今度お茶するときはもっと楽しくできたらいいな」
そう言って翠は緒方を席に残したまま会計を済ませ、店から出て行ってしまった。
「…………もっと、頑張らなくちゃ」
残された緒方は少し濁った瞳をさせながら、静かにそう呟いた。
…智絵里がヤンデレっぽいって有名だよね
…まだ、完全でないからセーフ
……そろそろ、浮気して違う小説の二次創作を書き始めそう。