怠け癖の王子はシンデレラたちに光を灯す   作:不思議ちゃん

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王様ゲームが考えていた以上にグダグダしそうでしたので、番外編で載せ直しをと。一旦、消しました。
それとこの話ですが、いままでは記憶にあるアニメの内容に沿って書いていたのですが、アニメを見ながら書いていたので変な感じがあるかもしれません。違和感など何でもいいので何かあったのならば感想や活動報告のコメにでも書いてくださるとありがたいです


19話

「あっはっは」

 

 その一室は異様な風景であった。

 偉そうな態度で笑いながらイスに座っている女の子のような男。

 その前には楽しそうにはしゃぐ小さい子どもたち(小学生まで。一部中学生を含む)。

 そして大半のアイドルたちは髪が乱れるのも構わずにトップアイドル、新人アイドル関係なしに床へと倒れこんでいる。

 

「…………あの、これはどういった状況でしょうか」

 

 部屋に訪れた武内Pは中の状況を確認し、しばし固まったあとに把握しようと考える。しかし、どういった経緯(いきさつ)でこうなったのかがさっぱり分からない。

 そうして問いかけたのであったが、その声は誰に届くでもなく、むなしく響くだけであった。

 

☆☆☆

 

 親睦会という名に隠れた翠のお遊戯会があった次の日、武内Pから重要な話があるとCPメンバーが集められた。

 そして――。

 

 

『新田美波さん、アナスタシアさんのお二人。それから島村卯月さん、渋谷凛さん、本田未央さんの三人。それぞれこのプロジェクトのユニットとしてCDデビューしていただきます』

 

 

 メンバー全員の目の前で武内Pの口からそのような発表があった。

 前川が他のメンバーはどうなのかと尋ねるが『……企画検討中です』とだけ。

 

 

 それから島村、渋谷、本田の三人組ユニットでニュージェネ。アナスタシア、新田の二人組ユニットでラブライカとしてデビューすることを武内Pの口からCPのメンバーに発表された五人は、CD発売イベントのミニライブを行うために発声練習から始まり、曲の歌詞や振り付けの練習を。

 残りのメンバーは今まで通りに基礎練習をこなしてきた。

 前川、城ケ崎妹、赤城の三人は島村たちに勝負を挑み、勝利をもぎ取ってCDデビューと頼み込むも苦い返事が返るだけ。

 

「あ~、基礎練ばっかにゃあ……」

「ねぇ、もっかい勝負しに行こうよ~」

「トランプしようよ! ねえ!」

「これは遊びじゃないにゃ。アイドル生命をかけた真剣勝負なの」

 

 赤城の額に軽いデコピンをしながら前川がそう伝えると。

 

「アイドル生命?」

 

 多田の疑わし気な声が聞こえてくる。

 そちらに目を向けると、緒方、三村、多田の三人が立っていた。

 

「アイドルっぽいこと、まだ何もしてないじゃん」

「…………うぐっ」

 

 もっともな意見であるため、言葉に詰まる前川。

 

「でも、みんなはCD出したくないの?」

 

 城ケ崎妹のセリフを聞き、今度は多田が言葉に詰まる。

 

「お? 面白い状況じゃん」

「あ、翠さん!」

 

 前川たち三人と三村、緒方、多田が話しているところに棒付き飴をなめている翠が通りかかる。

 

「どうしたん?」

「Pちゃんがユニットを発表したんだけど……」

「ああ、なるほどね。理解した」

「えっ? それだけで?」

 

 まだ一部分しか説明していないというのに、納得いった風で頷く翠に疑わし気な目を向ける前川。

 

「なんだ、駄猫。俺は結構すごいんだぞ」

「自分で言ってたら世話ないにゃあ」

「たっちゃんが卯月、凛、未央の三人。美波とアーニャの二人組ユニットを作ったはいいけど、残りのメンバーはどうなのか知りたいってところだろ? んで、尋ねたはいいけど企画検討中と濁され、三人に勝負挑んで勝ったはいいけど、試合に勝って勝負に負けた状態」

「スルーされたことに異議を申し立てたいけど……見てないのにどうしてそこまで分かるにゃ?」

「ちょっとね」

 

 ほぼ完璧に言い当てられ、前川だけでなく他の五名も驚きをあらわにしている。前川の質問に対しては口の前に人差し指を立てて誤魔化したが。

 

「翠さんは何してるの?」

「俺? 今日はオフだし、いろいろとあるからここでブラブラしてる」

「よく分からないけど、トップアイドルってそんなに暇なの?」

「暇じゃないぞ」

 

 そこに偶然、奈緒が通りかかって翠の代わりに答える。

 

「トップアイドルにも関わらず暇してるのはこいつだけだ。高垣や他の有名アイドルたちは多忙だ」

「まあ、俺には俺の悩みがあるのさ」

「……数少ない仕事をちゃんとやってくれているから、それでいいさ」

 

 何か言いたげな表情をしながらもそれを飲み込み、一言だけ言い残して去っていった。

 

「さて、お前らはこれからどうするんだ?」

 

 翠の問いかけに六人は顔を見合わせる。

 

 

 

 

「たのもうにゃ!」

「「にゃ~」」

 

 島村、本田、渋谷、新田、アナスタシアが話しているところに前川たち三人が再びやってくる。

 真っ先に反応した本田が立ち上がって『返り討ちにしてやる』と言いかけたところに追加で三村たち三人が入ってくる。

 

「っえ、ろ、六人!? こっち五人なんだけど~!」

「おっすおっす」

 

 困惑しているところに、あえてタイミングをずらして入ってきた翠が声をかける。

 

「す、翠さん!」

「こ、こんにちは」

「堅苦しくなくていいよ。ほかの先輩アイドルには挨拶必要だけど、俺は特に気にしないし」

 

 島村たちも立ち上がって挨拶してくるのに対して軽く手を振って応え、壁に背を預けて座り込む。

 

「さて、駄猫。どうぞ」

「駄猫って呼ばれるのが気になるけど……今はいいにゃ。美波ちゃん、アーニャちゃん。交渉しに来たにゃ」

『……交渉?』

 

 前川のいきなりな発言に五人は首をかしげる。

 

 

 

 

「…………あっ」

 

 武内Pは部屋が部屋に入ってまず目にしたもの。

 

「ミクたちのライブにようこそにゃ! さ、美波にゃん」

「ええっ! ……ええっと…………さあ、好きにプニャプニャするにゃ!」

「アーニャん!」

「肉球、気持ちイイ……にゃん?」

 

 前川をセンターに、猫耳をつけた新田とアナスタシアが並んで立っていた。

 

「どおどお、Pちゃん! にゃんにゃんユニット可愛いと思わない?」

「うわぁ……あざとすぎる」

「ぷふっ……くはっ、腹痛い! マジで笑いすぎて腹痛い!」

「にゃ! 酷いにゃ! 特に翠さん、笑いすぎにゃ!」

 

 困った表情をしている武内Pをよそに、前川は声を出して笑いながら床をバンバン叩いている翠に詰め寄る。

 

「だって、おまっ……っふ。にゃんにゃんユニットとか……あ、駄目だ。思い出してまた笑いが込み上げてきた」

 

 目の端に涙をためながら呼吸を整えた翠が前川に説明しようとするも、頭につけている猫耳を見て再び笑いのツボにはまる。

 

「翠さんの言うとおりだよ。二人はもっとクールに決めるべき。ロックにいこうぜ!」

「ぶふっ! だりぃなもただのバンドじゃん」

「そうにゃ。一人寂しくエアギターでもやってにゃ」

「なぁにぃ……勝負するかぁ!」

 

 続いて多田が意見を出すが、それを聞いた翠がまたしても噴き出す。それに前川も乗っかって挑発する。

 

「あの……これはどうしたのですか?」

「プロデューサー。美波ちゃんたちのユニットにもう一人入れるんじゃないかってミクちゃんが……」

「あのね! 卯月ちゃんたちが三人だけど、美波ちゃんたちは二人でしょ? もう一人入ったら三人でぴったりだよ!」

 

 武内Pの疑問に三村が答え、続きを赤城が答える。そしてアナスタシアに抱き着きに向かう。

 

「私、楽しいユニットがいいな!」

「ワタシも、そう思います。……が」

 

 アナスタシアは赤城の案を肯定するが、武内Pに困った笑みを向ける。

 

「新田さん、アナスタシアさんの二人はこのまま二人で行きます」

『え~!』

 

 その視線を向けられた武内Pは皆に聞こえるよう、はっきりと申し上げる。

 

「申し訳ありませんが、すでに準備を進めているので。今から変更というわけには…………」

「そんにゃぁ…………」

 

 きっぱりと言い切られ、前川は肩おおとしてうなだれる。

 

「……ゴメン、なさい。残念です」

「ごめんね」

 

 アナスタシアも抱き着いている赤城の手を握って謝る。その脇でも猫耳を外した新田が謝罪を口にする。

 

「……ううん。私は大丈夫だよ」

 

 悲しそうな笑みを浮かべて大丈夫だと言い張る赤城に二人は心配の色を含ませた目を向ける。

 周りでも、納得がいっていない子や、残念そうにうつむいている。

 そんな雰囲気の中、武内Pに渋谷が目を向けるも気づかない。

 

「笑いすぎてほんと、腹筋崩壊だわ…………って、何この空気? ああ、なるほどなるほど。そろそろか」

 

 先ほどまで一人で笑っていた翠が目の端に溜まった涙を拭いながら立ち上がって周りを見回すと、先ほどまであった楽しげな雰囲気が一変、暗い雰囲気へと変わっていたので一瞬だけ動きを止めるも、納得がいった風に頷く。

 

「たっちゃん。少し話いい? ドア出たすぐそこでいいからさ」

 

 そう声をかけ、武内Pの手を引っ張って連れ出す。

 

「あの、一ついいでしょうか?」

「ええよ」

「先ほどの、前川さんたちの件ですが……翠さんが?」

「あー……関係していると言えばしているし、してないといえばしてないかな。ちょっとしたアドバイスはしたけど、考えて行動したのはみくたちだよ」

「分かりました。それで話とは何でしょうか?」

「たっちゃん。きちんとあの子たちの事、見ててあげなよ? 大丈夫だとは思うだろうけどさ、一応は言っておこうと思って」

「はい」

 

 翠の目をまっすぐに見つめ返しながら首を縦に振る。

 島村たちに用があったらしい武内Pは再び部屋へと戻っていく。

 一人になった翠はそれを悲し気に見送った後、口を開く。

 

「何が大丈夫だと思う、だよ。これから起こることも、その先に起こることも知ってるくせしてな」

 

 その目に寂しげな色を浮かばせていたが、頭を振ったあとの翠はいつもと同じ調子に戻っていた。

 

「あ、今更だけどすでにユニット名、決まってたな。本来ならまだなはずなのに」

 

☆☆☆

 

 島村たちに発売イベントまでのスケジュールを伝えた武内Pは自身のデスクへと戻り、イベントに関する準備を進めていた。

 

「お疲れ様です、プロデューサー。順調ですか?」

 

 それに関する資料を千川から受け取り、質問に答える。

 

「決め事は、概ね」

「あの子たちは?」

「……え? ああ、はい。頑張っています」

 

 突然の質問に面食らうも答えると千川はニッコリと笑顔を浮かべ。

 

「プロデューサーさんにかかっていますからね」

 

 と言いながらドリンクをデスクに置く。

 

☆☆☆

 

 次の日。

 場所は小日向美穂の撮影現場。

 前川、城ケ崎妹、赤城の三人は着ぐるみを着て仕事をしていた。

 今はメイクを入れなおすための休憩時間である。

 

「そういえば今日、美波ちゃんたちレコーディングなんだって~」

「いいなぁ~。あたしも早く歌いたい。プロデューサーに曲欲しいって言いにいくぞ~!」

「お~」

 

 頭の部分を外して端っこで休んでいた三人は、デビューについて話していた。

 

「言っても検討中って言われるのは分かっているにゃ」

「よく分かってるじゃないか」

「翠さん!」

「どうしてここに?」

 

 またぽっと現れた翠に、三人は驚きを隠せない。

 

「今日もブラブラ。あっちへブラブラ。明日はどこに行く~……みたいな?」

 

 城ケ崎妹の質問に、答えになっているようでなっていない返しをする。

 当然、なんのことだか分からない三人。もしかしたら翠も何を言っているのか分かっていないかもしれない。

 

「翠さん、杏ちゃんたちみたいにみくたちにも仕事が欲しいにゃ」

「おっほぅ……ドストレート」

 

 懇願するように前川が翠に頼むが、濁して交わされる。

 

「ごめんな、みく。よく分からないかもしれないけれど、まだ時期じゃないんだ。仕事は無理だけれど、案を授けてしんぜよう」

 

 珍しくきちんと前川の名前を呼んで謝る翠。それだけで真面目なことだと三人は感じ取る。

 そして続いた言葉に首をかしげるが、その案とやらを聞いて口の端をつりあげる。

 




この話のような書き方の評判が良ければ(特に反対意見がなければ)、そのまま描き進めたいと思います
なんだか書く速さも上がっているような気もしますし

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