後については今日の午後6時以降くらいには載せようかと考えていますが、少し編集しようかと考えてます
時系列としましては、アニメの一期、二期が終わったあたりになりますかね
変装姿などは、あえて細かく書いていません。皆さんで妄想して『ぐへへ…』と楽しんでください
「あれ? まゆちゃん」
「美嘉さんに楓さん、美波さんとアーニャさんに蘭子さん、きらりさんと杏さん? こんなところでどうしたんですか?」
場所は秋葉原。祝日であるために多くの人が道を行き来していた。
変装している城ケ崎姉、高垣、新田、アナスタシア、神崎、諸星、双葉の七人は遊ぶためにここへ訪れていたのだが、そこで何かを探している様子の佐久間とであう。
「私たちは前に遊ぼうって話してて、今来たところなんだけど……まゆちゃんは?」
「そうだったんですか。私は朝起きたら翠さんがいなくって……。今日は仕事がなくて休みの日ですし遊びに行っていると思うんですよ」
答えになっているようでなっていないために、城ケ崎姉は頭の中に疑問符を浮かべながらも再度尋ねる。
「翠さんがここにいるって連絡きたの?」
「いえ……なんとなく、ここにいるような気がして」
「そ、そうなんだ……」
いつも通り変わらずにいる佐久間に、困ったような笑みを浮かべながら城ケ崎姉は頷き返す。
「ならまゆちゃん、私たちと一緒に行かない?」
「一緒に、ですか?」
「一人でいるよりも、楽しいと思うのだけれど」
先ほどまで大人しく話を聞いていた高垣が楽しそうに笑みを浮かべながら提案する。
「それに、前からまゆちゃんとお話しをしてみたいと思っていたの。美波ちゃんたちもいいわよね?」
「はい。346内でも何度か見かけたり、お仕事もご一緒させていただいたことはあるんですけど、話す機会はあまりなかったですし」
「とても、楽しそうです」
「魂の共鳴を今こそ叶えようぞ!」
「一緒だと、もっとハピハピだにぃ!」
「杏はどっちでもいいよ」
ここまできて佐久間も断ることはなく、可愛らしい笑みを浮かべて頷く。
「みなさんがここにいるって珍しいとまゆは思うんです。渋谷とかで服を見るのかと」
「最初は私もそうかなって考えていたんだけど、話していくうちに美波ちゃんたちがゲームセンターに行ったことがないって分かって、これはもう行くしかないって思ってね」
「恥ずかしい話ですけど……あまり機会がなくって」
「一人だとなかなか入りにくいところではあるわね」
「きらりは杏ちゃんと一緒に何回か来たことあるにぃ」
佐久間も加わって歩き出したものの、まだどこの建物に入るわけでもなく歩き続けている。
何度か城ケ崎姉が近くのゲームセンターに入ってみないかと提案しているが、そのたびに佐久間が首を横に振っているのだ。そして、何かを感じ取ったように『こっちです』と皆を導いていく。
「まゆちゃん、どこに向かっているの?」
「あそこです」
最近のファッションやおすすめの小物など、女の子らしい会話を続けながら歩くことおよそ十五分。
どこに向かっているのか新田が尋ねると、佐久間は視線の先にある一つのゲームセンターを指さす。
「ここ?」
「はい。二階のクレーンゲームのコーナーだと思います」
なんの脈絡もない言葉であるが、付き合いが長い城ケ崎姉と高垣はなんのことを言っているのか理解していた。
接点があまりないが察しのいい双葉、諸星、新田の三人も佐久間が何に対して言っているのかなんとなく感づいていたが、アナスタシアと神崎はチンプンカンプンであった。
堂々としながらゲームセンターに入っていく佐久間の後を少し遅れて七人はついていく。
物珍しさに新田、アナスタシア、神崎の三人はあたりをキョロキョロと見回すが、壁や人にぶつかりそうになっているところを何度か高垣や諸星に注意されている。
階段を使って二階に上がると、佐久間は一度周りをを見回したあとにどんどん奥へと向かって進んでいく。
向かう先には足元に大量の戦利品が入った袋を置いてクレーンゲームをプレイしようとしている、白いベレー帽を被った白髪の少年の姿が。
「翠さん」
「ん? まゆじゃん。どったの?」
お金を入れたタイミングで佐久間はその少年へと声をかける。
振り向いた少年――翠は黒縁のメガネをかけており、よほど彼のことを知っていない限りはバレない変装をしていた。
腰まで伸びていた白髪もいまは肩のあたりで切りそろえられており、内側に軽くウェーブがかかっていた。
パッと見では文学少女のようにも見える。
「来ちゃいました」
「そう。そろそろ手に持てなくなってくるし、荷物持ちお願いしてもいい?」
「翠さん……それ、女の子にやらせるようなことじゃないよ」
「ん? 美嘉もいたんだ。お? 楓とかも珍しい」
呆れながら声をかけてきた城ケ崎姉に、いま気づいたようで少し驚いた様子を見せる。その背後にいる高垣らも見つけて首をかしげる。
「どったの?」
「前からみんなで遊ぼうって話してたんだ」
「そか。ゲーセンにいる面子としては珍しいね」
そこまで話したところで、クレーンゲームにお金を入れたままだったことを思い返した翠は佐久間らから視線を外してゲームへと戻る。
そして横に奥にとボタンの操作を終えて再び振り返る。
「最後まで見なくていいの?」
「ん。だって落ちるし」
城ケ崎姉の質問に対し、特に嬉しそうに喜んだりすることもせずに答えたと同時。
クレーンゲームの機体から『ガコン』と物が落ちた音が聞こえてくる。
翠が何か言うこともなくそこから佐久間が商品を取り出し、足元に置いてある袋の中へと入れる。
「うっぴゃぁ! 一回で取るなんてすごいにぃ!」
「来たことがないですけど……こういったものが一回でなかなか取れないってのは知ってます」
「相変わらずね」
商品を一回で取った翠に対する反応はさまざまであった。
その中の二人ほど、翠の評価がまた上がっていたりする。
「みんなはどうするの?」
「私たちも何かチャレンジしてみようかなって」
「そう。なんだったら教えよっか? ……あ、商品取れました」
近くにいた店員を呼び、商品が取れたことを伝えると足元にあった戦利品を手に持って休憩スペースへと移動する。
「……可愛い声で話すんだね」
「普段の声だとバレるかもしれないし。見た目こんなんだから女の子のキーで話したほうが何かと楽じゃん」
城ケ崎姉のつぶやきに、納得のいく答えを返す。
「でも、それだとナンパとかされませんか?」
「あー、何回かあるよ。結構しつこいの」
「そうした時ってどうするんですか?」
「そんときは声低くして話すよ。そしたら男だと分かって去っていく。たまにそれでもいいってやついるけど、そこまでいったら店員呼べばいいし」
「翠さんも大変なんですね」
「一人で来るのはそんなに多くないよ? だいたいは奈緒とか、たっちゃん、空いているアイドル誘って来るから。一応はからまれること、できるだけ避けるようにしてるし」
その場面を想像してか、新田は苦笑いをする。
「んで、何か取ってみたい景品とかあるの?」
翠の問いかけに、本来の目的を思い出す。
一人は翠に会うことが目的であったために、もう達成されていたりするが。
「……あれ、やってみたいです」
意外なことに、いの一番は神崎であった。
機体はここから近く、みんなでそこまで移動していく。
たくさんある戦利品の荷物は翠自身で持っておらず、佐久間と高垣が半分ずつ持っていた。
「人気アイドルを荷物持ちに使うって、翠さんぐらいにしかできないよね……」
「今日、荷物持ちとしてナツキチでも呼ぼうかと思ってたんだけど、だりぃなとドライブ行く予定だったらしくて無理だった。だから取るだけ取ったら奈緒に向かえ来てもらえばいっかなって」
「……もしかしたら夏樹さん、何かを感じて逃げたのかも」
「いや、だりぃなに確認取ったし本当に元からの予定だったんだろ」
「……確認したんだ」
城ケ崎姉と新田から呆れたような視線を受けるが、翠は特に気にした様子は見せない。
「す、翠さん」
「ん、放っといて悪かった。……このタイプね。初心者でもうまくいけば一発でとれるやつ」
話したままでいる翠に、少し頬を膨らませた神崎が服を引っ張りながら注意を引く。
今は神崎の番であったと翠は謝りながら機体に目を向ける。
神崎がやってみたいと言った機体。商品が糸につるされており、操作するのは横移動だけ。ただし、商品をつるしてある糸を切るためのハサミが小さいために、ちょっとしたずれで失敗するようなタイプである。
簡単なもので初心者でも一回で取れるような機体であるが、つるされているものはそれほどたいしたものでないためによっぽど欲しいものがない限りはやる人はいない。
「どれが欲しいんだ?」
「……え、っと、これです」
神崎が指さした商品は、翠を二頭身のキャラクターとして描かれたものがプリントされたハンカチであった。
「ああ、これね。このキャラって俺が自分でイラスト描いたんだよね」
「……翠さんって何でもできるよね」
「人って大抵のことはやればできるよ」
「……そんな、簡単なことじゃないと思います」
簡単に言ってのける翠に、また城ケ崎姉と新田の二人が呆れたようね目を向けるが、それを無視して機体に五百円玉を入れる。
ワンプレイ百円だが、五百円いれると六回できるシステムである。
翠が自身でやるなら百円の一回で事足りるが、初めてである神崎を考慮して五百円分入れたのである。
「あの、お金……」
「いいよ。今日一日の遊び、神崎含めて全員分の代金は俺もちで」
「さすがにそれは」
「先輩の恰好つけだよ。言わせんな馬鹿野郎」
「私たち、野郎じゃないですよ」
「楓……突っ込むとこそこじゃないし」
ポーズまで決めた翠だったが、高垣の一言でいろいろと台無しになった感が漂い始めた。
コホンと咳ばらいを一つした翠は、先ほどまでのことはなかったかのように振る舞って神崎へと目を向ける。
「ってことで気にするな」
「あ、ありがとうございます!」
とはいったものの、慣れぬ場所、初めての経験。みんなに見られていることも含めて様々な要因があり、緊張してすでに五回連続で失敗している。
「あうぅぅぅ……」
一回目の失敗から二回目の失敗へと続いていき、取れないといったプレッシャーも拍車をかけている。
当然、それらの要因などに翠が気が付いていないなんてことはなく。
「落ち着けって、蘭子。初めてはこんなもんだぞ?」
腰のあたりをポンと軽く叩きながら声をかけ、操作ボタンに置かれている神崎の手に自身の手を重ねて体を近づける。
「す、すすすす翠さん!?」
「ラスイチだし、一緒にやるよ」
「「「「「「「…………」」」」」」」
いきなりのことで、神崎は顔を真っ赤にさせながら翠のことを見るが、本人は特に焦ったりすることはなく、目的の商品へと視線を注いでいた。
先ほどまで周りで神崎のプレイを見て一緒に落ち込んだりしていた七人であったが、翠が神崎と手を触れさせて体も密着と言っていいほど近づいているのを見て、雰囲気が一変する。
露骨なのだと目からハイライトが消えて凍てつくような視線を向けているがそれも一人だけであり、他の面々だと頬を膨らまさせたり、羨ましがったり、面白くなさそうであったり、複雑だといった表情をしていたりする。
幸いなことに神崎は密着している翠と重ねられた手に意識が言っているために周りの変化に気が付いていない。
「……思ったけど、手ぇ重ねてやっても実際にやるのは俺みたいなものだからつまらないか?」
「い、いえ! とても……その、楽しいです」
「ならいいんだけど……」
寸分の狂いがないの言っていいほどピッタリ成功させたがどこか納得のいっていない表情の翠は、商品を取り出して神崎に手渡しながら考えを述べる。
しかし、神崎が顔を赤くさせながら首を横に振って否定するために、無理矢理にでも納得する。
「次は誰がやる?」
振り返りながらそう尋ねた翠の視界に映ったのは、手を挙げて次は私を選んでといった力強い視線を送る七人のアイドルたちであった。