ようやっとプレゼンが終わったんで、やっと書く暇が出来ました…
流石に1日1話は無理そうだけど、できるだけ書いていくのでよろしくです。
あと、サブタイはもはや適当です
ごめん
日常の中で "時間をかけすぎ" だと感じるものはなんだろうか。
食事、睡眠、朝の支度…
この辺りはかなり個人差があるからなんとも言えない。
他にも挙げればキリがないが、多くの人が真っ先にあげるのは『女性の買い物』ではないだろうか。
確かに男性でも、何を買おうか迷うときはあるだろう。
だが、女性のそれは男性のものとは比にならないほど長い気がする。
俺は先入観とかで判断しないように心がけて来たが、今回のは残念ながら先入観が正しかったようだ。
何か使える物を探していた時に、たまたま服屋を見かけてしまったのが運の尽きだった。
目を輝かせて店内に飛び込む由紀を追いかける形で店内に入った面々だったが、その表情は明らかにいつもより明るいものだった。
まぁこんな環境なんだ。
服を選ぶことなんて出来なかったのだから、しょうがないのかもしれない。
そんな嬉しそうな顔で服を物色されては、止める気も失せてしまうというものだ。
どうせしばらくすれば気も済むだろう…
だが、その考えは甘すぎた。
初めの方は確かにいい気分転換になっていた。
普段制服しか見ていない彼女たちの私服姿は意外性があって楽しかったし、めぐねえの服を選んだ時は彼女とは逆のベクトルの露出の激しい服を選んで遊んだりもした。
だが、それが延々と続くのだ。
服に詳しい訳でも無いので、先ほどの服と何処が違うのか一見しただけでは分からない。
だが、彼女たちは何故か俺に感想を求めてくるのだ。
テキトーに返事をすると、ちゃんと見ているのかと問いつめられてしまうので誤魔化すわけにもいかない。
こうして意見を聞かれているうちはまだマシだったのかもしれない。
彼女たちが服を選んでいるのを待っている間、特に何をするでもなくボーッとしていた。
それが彼女たちは気に食わなかったらしい。
いつしか自分たちの服を選ぶのを止め、俺に何を着せるかを話し合い始めた。
正直、自分を着飾る理由がなかったので断っていたのだが、一度だけだからと押し切られてしまった。
だが、そんな口約束が守られることもなく、少なくとも4回か5回は服を着替えさせられた。
最後の方は諦めの境地に至っていた。
そうして選ばれていった服だが、荷物の容量というものには限りがある。
結局、服を入れるスペースは取れないとの結論になり、彼女達はそれほどかさばらない水着を1着ずつ持ち帰ることになった。
そこでも当然選ぶのに時間がかかったのだが、そこは割愛させてもらおう。
「やっと終わったか…」
「いやー、楽しかったな!」
「学校にもお店があれば良いんだけどね」
「学生は学生らしく、制服で我慢しましょ?」
流石に耐え切れなくなって店の外に出て待っていたら、流石にまずいと思ったのか割とすぐに彼女たちも店外に出てきた。
こんな所で時間を無駄にしてよかったのかとも思ったが、前を歩く4人の満足気な顔を見ると注意する気も失せてしまった。
久しぶりの外での買い物で少しでもストレスを減らせたのだから良しとしよう。
だが、この虚無感というかなんというか、モヤモヤとした気持ちはどうすればいいのだろうか…
「さて、これからどうするか」
「まだ残ってる人を探してみましょう? いるとしたら、上の階かしら…」
今まで4フロアを見て回ってきたが生存者は無し。
一応注意しながら物音とかも聞いてみたんだが、人が生きているような気配も無かった。
いるとするなら最上階か。
ショッピングモールというだけあって、生活必需品は一通り揃っている。
学校とは違って面積も広いから、動きの遅いアイツらからは逃げやすい。
運が良ければ生きているといった程度だが、可能性は0ではない。
行ってみる価値はあるかもしれない。
だが、その生存者が無法者や感染しかけなら切り捨てる他ないけど。
とにかく、最上階に行って生存者を探す、という方針になったらしい。
反対する理由もないから、黙って着いて行く事にしよう。
「っ、奴らがいるわ。みんな、ちょっと下がって」
おっと、気を抜きすぎたか。
こんな状況で何も考えずに歩くなんて自殺行為だ。
ちょっと気を引き締め直さないと。
いつでも戦闘態勢に入れるようにバールを握り直して前に出ようとしたが、悠里に手で制された。
「無理に倒していく必要はないわ。避けれるなら避けるべきだもの」
そう言って懐から取り出したのは、使い捨てのサイリウムだ。
逃げるのに有効だから、と1階から持ってきたものの1つだ。
アイツらは目立つものに反応する。
その習性を利用した上手い作戦だと思う。
手にしたサイリウムがある程度発光すると、それを進行方向とは別の場所へと放り投げる。
こちらの考え通り、アイツらはそれに釣られて移動し始めた。
こちらには見向きもしない。
「さ、今のうちに行きましょ」
エレベーターが機能していないので、上の階へ行くには階段を使う必要がある。
アイツらは階段を登るのが苦手なので、他の平地に比べれば階段は安全な場所なのだ。
だが、上の階と下の階で挟まれてしまえば一気に絶体絶命な窮地へと変わる。
その危険性を考慮して、俺は階段下で待機することにした。
「それじゃ、パパっと行ってくるよ」
「何かあったらブザーでも鳴らしてくれ」
「じゃあ、生存者がいたら明くんも上がってきてね」
「了解。んじゃ、待ってるよ」
こちらに小さく手を振って階上に消えていく4人を見送ってから、さっき拾った地図を眺める。
この地図は、さっき服屋の近くで拾ったものだ。
本屋は別のフロアだから、恐らく誰かの持ち物だったのだろう。
血で汚れているわけでもなく、ほとんど汚れていなかったので問題なく使うことが出来そうだ。
何か書き込みでも残っていないかと期待し開いてみると、ここから駅の経路がマジックでなぞられていた。
この本の持ち主は駅へと到着することが出来たのだろうか。
だが、駅についた所で何が出来るのか。
電車は止まっており、アイツらが習性に従うのなら、人の集まりやすい駅はかなり過酷な環境だと思うのだが。
何かしらの思惑があったのかもしれないが、今となっては知る由もない。
考えるだけ時間の無駄か…
溜め息をついて地図をカバンに戻す。
そろそろ上から何かしら合図があるだろう。
首を傾けて上を眺めた瞬間だった。
「くるな!!」
「なに?」
明らかに切羽詰まったエビちゃんの声が聞こえた。
何かしらアクシデントが起きたようだ。
辺りを見回すが、アイツらの影は見えない。
今なら上に向かっても問題無いだろう。
足元に置いていたリュックを背負うと、一気に上の階へと駆け上がった。
踊り場から見えたのは、立ち尽くす4人の背中と、崩れたダンボールの隙間から見える無数の黒い影だった。
5階へ続く階段を登り切った先にはダンボールで出来た壁があった。
普通ならこんな場所にダンボールは積んでいないはずだ。
誰かが生きてる可能性があるってことに、あたし達は素直に喜んだ。
とりあえず様子見ってことで、壁をよじ登ることにした。
ダンボールを崩して入るわけにもいかないしな。
期待して乗り越えた先には、確かに人がいた。
でも、生きている人は1人もいなかった。
ここはもう終わっていたんだ。
あたしの姿を見るなり、餌を見せられた動物みたいにアイツらが向かってくる。
この数を1人で相手なんて出来るわけがない。
迷うことなく、いま登ってきた壁を乗り越えて向こう側へと戻る。
「だ、だいじょぶ?」
着地に気を使う余裕もなく肩から落ちてしまったが、脱臼とかはしてないみたいだ。
涙がにじむくらいには痛かったが、ここで立ち止まっている暇はない。
バリケードが立てるミシミシという音が焦燥感を駆り立てる。
「急げ!」
肩を押さえながら何とか体を起こすと同時に、後ろの壁が崩れ去った。
そこでようやく状況を理解できたのか、下の階へと繋がる階段を降り始めた。
いつの間にか登ってきていた、明を除いて。
何で逃げないんだよ!
「おい、何やってんだよ!? さっさとお前も逃げるぞ!」
「誰かが足止めしたほうが確実だろ? お前のほうこそさっさと逃げろ」
「あー、もうめんどくせぇ!」
こいつはいつもこうだ。
他人の事は心配するくせに、自分のことになるとどうでもいいような態度を取る。
それが周りをどれだけ不安にさせるかなんてお構いなしに、自ら危険に突っ込もうとする。
コイツはそういうやつだ。
こうなった明は何を言っても動かないだろう。
だったら実力行使するまでだ。
「おら、早く来い!」
「ちょっ」
すでにバールを構えていた明の腕を無理やり引っ張り、階段の方へと引きずっていった。
最初はどうするか逡巡していたみたいだが、諦めたのか抵抗する力が抜けていく。
ひとつ溜め息をつくと、素直にあたしの後を付いていてくれた。
ったく、溜め息つきたいのはこっちだっての。
「この辺りで休憩しましょうか」
「由紀、顔が赤いけど大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ…」
あの後はとにかく大変だった。
右へ行っても、左へ行っても、下に行っても、何処に行っても奴らがいる。
サイリウムが無かったら、どうなってたか分からないな。
サイリウム様々だ。
それにしてもここはどこだろうか。
自販機とかベンチが置かれてるし、休憩スペースみたいな場所みたいだ。
周りに奴らの気配も無いし、やっと一息つけそうだ。
元運動部とはいえ、この広いショッピングモールを走り回るのは疲れる。
体力のないゆきにとっては、かなり辛いものだっただろう。
明の言うように顔が赤いし、息も上がっている。
心なしか、体調もあまりよくなさそうだし。
「熱があるわね…」
「これくらい平気だよー」
「だめよ。この後もいっぱい走るし、少し横になってなさい?」
ゆきなりに心配を掛けたくないのか、自分が弱っているところを見せるのを渋っていたが、身体は限界に近かったのかめぐねえの膝に頭を乗せた。
こうしてみると、先生と生徒っていうより親子か姉妹だよなぁ…
「めぐねえひんやりして気持ちいいー」
「平熱があんまり高くないから… って、ちょっと!くすぐったいからスリスリしないで…」
「んー、いいにおい~」
なんか大丈夫そうだな…
この後も気の抜けない状況が続くし、今のうちに少しでも休めるといいんだけど。
「エビちゃん、5階はどうだったよ」
いつの間にか横に来ていた明がそう聞いてくる。
表情はいつもどおり笑顔だが、どこか目が真剣な雰囲気をしている。
りーさんもめぐねえも気になるようで、口には出さないが目線がこちらを向いた。
「…来るのが遅すぎたみたいだ。結構な人数で生活してた痕跡はあったんだけど…」
「全滅、か」
「ああ…」
「ほかに生存者がいると思う?」
「さぁな… いればいいけど」
口ではそんな希望的観測を言ってみるが、心の何処かでは分かっているんだろう。
明の口調は、かなり投げやり気味なものだった。
そのことを2人も理解しているのか、表情はどんどん沈んでいった。
重い沈黙の中に、少し苦しげなゆきの寝息だけが響いていた。
「ゆきちゃん、寝ちゃったわね」
「車まで走るのに体力いるし、いまは休ませておこう。お前らも寝るか?」
「そんな暇ねーだろ。長居しても意味ないし」
寝るならちゃんと部室で寝たい。
いつ襲われるか分からないような中で寝るのはもう嫌なんだよ。
そんな気持ちを汲み取ったのか知らないが、それ以上明が仮眠を勧めてくることはなかった。
「まぁ体を横にするだけでも違うもんだぜ?」
「あら、じゃあ私が膝枕でもしてあげようか?」
「それは魅力的だけど、足が痺れて走れないーとか笑えないぞ?」
「お前ら呑気だなぁ」
さっきまで死にそうになってたっていうのに…
でも、こうやってバカやってられるこのメンバーだからここまで来れたんだ。
これからも、誰も欠けることなく日々を過ごせればいい。
顔を上げ、先程までいた上の階の方を見つめる。
あたし達は、お前らみたいにならないからな。
絶対にみんなで生き残ってみせる。
この日、あたしの中で明確な目標が決まった
今度はバイトが忙しくなるのか(白目)
時間がほしい