貴女の笑顔のために   作:さぶだっしゅ

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今回かなり適当になってしまったので、まとまった時間が出来ればかなり直すかもしれません…


きゅうけい

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、俺はここで待ってっから」

「ええ、すぐ戻るわね」

 

くるみの話では、ゆきちゃんは個室で待たせてあるそうだ。

いつまでも待たせるのもしのびないので、早く迎えに行ってあげなくては。

さっきまでアキくんに肩を借りていたくるみだが、ゆきちゃんの前でそんな姿を見せれば心配されると思ったのか、自分の脚で歩いている。

問題なく歩けているようだけどやはり不安だし、何時でも支えられるようにしてあげないと。

 

「おーい、ゆき?いるか?」

「くるみちゃん!」

「ちょ!痛いって!」

 

待ちきれんと言わんばかりの勢いでゆきちゃんが飛び出してきた。

あれほどの大立ち回りをした後にあのタックルを受けるのは辛いだろうけど、我慢しなさいね。

私達を心配させた罰よ。

…それにしてもすごい抱きつきね。そろそろ止めてあげないとマズイかしら?

 

「ほら、だから心配すんなって言っただろ?」

「心配くらいさせてよ!」

 

…心配ぐらいさせてよ、か。

ゆきちゃんが何かで悩んでいたのは分かっていたけど、もしかすると自分が何も出来ないっと思ってしまっていたのかもね。

だとしたら、それは大きな間違いね。

あなたが居てくれるから、私達も生活できる。

ゆきちゃんが笑ってくれるから、私達の心は崩れていないのよ。

本人は気づいていないだろうけど、ゆきちゃんの存在は私達の中でとっても大きいものなんだから…

 

「わ、わりぃ…」

 

ゆきちゃんの心からの言葉に思うところがあったのか、くるみもちょっとたじろいでいる。

あんな真剣な顔で言われたら、心が動かないわけ無いわよね。

ふと横に目をやると、めぐねえが成長した我が子を見るよな目をしていた。

その気持ち、すごく分かります。

 

「あれ、めぐねえは?」

「ここにいるわよ、ゆきちゃん」

 

っ!大丈夫かしら…

一応、トイレに入る前にめぐねえにはゆきちゃんの現状を伝えてある。

ゆきちゃんの中のめぐねえと本当のめぐねえが鉢合わせしてしまう事も有り得たけど、様子を見る限りゆきちゃんの中ではこの場にめぐねえは居なかったみたいね。

そこはひとまず安心ね…

 

「ゆきちゃん、ちゃんと待てたのね。えらいえらい」

「めぐねえ!怪我とかしてない?」

「ええ、大丈夫よ。胡桃さんが守ってくれたもの」

 

そう言いながらめぐねえはゆきちゃんを抱きしめた。こうして見ると、本当の姉妹みたい。

これなら、多分大丈夫…

 

「ううっ…ぐす…」

「あ、あら?ゆきちゃん?どうしたの?どこか痛いところでも…」

「ううん…よく分かんないけど…なんか、めぐねえにぎゅってしてもらうのが懐かしいような気がして…」

「ゆきちゃん…」

「おかしいよね?さっきも同じことしてもらったのに…。何が違うんだろ…?」

 

良かった…辛くて泣いている訳じゃないのね。

ゆきちゃんの中にはめぐねえが生き続けていたけど、本当のめぐねえと何かが違っていたのだろうか。

私たちには分からないけど、ゆきちゃんにはその違いが分かったのかもしれない。

めぐねえもゆきちゃんを残して、ここまで追い込んでしまった事に責任を感じていたのだろう。

その責任から解放されたせいか、どこか晴れやかな笑顔を見せていた。

 

しばらく2人が抱き合って居るのを眺めていると、めぐねえの胸元から安らかな寝息が聞こえてきた。

緊張の糸が解けた上に、めぐねえが帰ってきたんだ。

そうなってしまうのも仕方が無いだろう。

 

「おーい、まだなんかね?」

 

あ、外にアキくんを待たせているのをすっかり忘れていた。

時計が無いから正確な時間は分からないけど、かなりの時間待たせてしまったかも知れない。

寝てしまったゆきちゃんはめぐねえがおぶってくれるようだし、すぐに出ないと申し訳ないわね。

 

「ごめん、待たせちゃったわね」

「遅いから何かあったのかと思ったけど、大丈夫そうだな」

「ええ。とにかく、一度部室に戻りましょう」

「そうだな。今後の事もある程度は話しておいたほうが良いだろう。エビちゃん、歩けるか?」

「おう、だいぶ回復したぜ。ゆきのハグのお陰でな」

「なら案内頼むわ。部室の場所知らねーし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、生徒会室を部室にしてんのか。

確かにここなら、給湯設備のある職員準備室も近いし、放送室とかも近いから都合が良いな。

ソファとかもあるから仮眠も取れる。中々に良い場所に住んでるみたいだな。

 

「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい…っていうのも何か変か」

「そうね。それに風間くんも学園生活部の一員になるんだから、遠慮は要らないんじゃない?」

「そういえばそうだったな。入部届とかあるのか?」

「ほら、ここにあるぞ」

「サンキュ…おい、最初っから副部長って書いてあるのはどういうことだ」

 

俺が居ない間に何があったんだ。めぐねえの説明にも無かったんだが。

部長じゃないだけマシなのかもしれないが、普通居るやつで役職は埋めるもんだろ。

 

「ゆきのやつが、『副部長はあーくんだよ!』とか言ってな」

「なるほど、すべて理解した」

 

こいつならいかにも言いそうなことだ。

ここは部長に推されなかったことだけでも喜んでおこう。

当の由紀は、俺が外で待っている間に寝てしまっていたらしい。

これじゃ文句も言えないな。

 

「みんな、コーヒーが入ったわ」

「お、ありがとよ」

「腹減ってるなら乾パンもあるぞ」

「そこまで腹は減ってねえけど…ちょっと貰っとくわ」

 

うん、やはり自分以外の人間が居るってのは良いな。

めぐねえが降りて来るまでは… 過去のことを考えるのはやめておこう。

そんなことより、今後の方針を大雑把にでも決めておかないとな。

無計画に過ごしたって碌なことにならない。

 

「今後、やろうと思ってた事とかってあるか?」

「うーん、特には無かったはずだけど…」

「でも、人が増えたから家計簿を見直さないとね」

 

なるほど、確かに2人もいきなり増えたんだから食料とかの分配料を見直さないとな。

一応地下からも缶詰とかを幾つか持ってきているが、こんだけじゃ足りないだろう。

電気を使う量とかも計算し直さないといけないだろうしな。

俺達のせいで苦労を増やしてしまって、何か申し訳ないな。

足りない分は購買部に取りに行くことになるだろうし、その時は俺が行こう。

せめてもの償いってやつだ。

 

「風間くん、入部届は書けた?」

「おう、ほらよ」

「折角だし、何か意気込みでも言ってもらおうかしら?」

「おっ、それいいな。すごいの期待してるぜ?」

 

なるほど、これが学園生活部流の洗礼ってやつか。

まぁ意気込みを語るのは構わないんだが、そんなに期待されると言えるものも言いにくいな。

うーん、意気込み…

 

「よし、決めた」

「じゃあ、張り切ってどうぞ!」

「俺は…」

 

ニヤニヤ顔のエビちゃん、目を細めて俺の言葉を待つ悠里、気持ちよさそうに寝てる由紀、なんだかんだで世話になっためぐねえ。

これだけの人間がここに居るっていうのはある意味奇跡だ。

あの日、全員が脱落する未来だって有り得た。

それでも、こいつらは生きていてくれた。こんだけ広い世界で、触れ合う事のできる唯一の存在なんだ。

これ以上、失うことは俺が許さない。傲慢だって言われるかもしれないけど、それが俺の本心だ。

だから…

 

「副部長として、お前らを絶対死なせない。絶対に守り抜く。それが俺の意気込みだ」

「…」

「…」

「あらあら、随分と熱い言葉ねぇ」

 

 

なんで2人は黙ってるんだ?

意気込みを言っただけなんだが。なにかまずいことでも言っちまったか?

もしかして、そこまで本気で考えなくても良かったんだろうか。

だとしたら赤っ恥かいちまったな…

 

「風間くん、まるで告白みたいな言葉だったわよ?やるじゃない!」

 

若いっていいわねー、なんてめぐねえが言っているが…

告白?なんのこっちゃ。

こんな状況で恋愛なんて出来るわけねーだろ。

そんなの2人だって重々理解してるはずだし。

 

「はぁ…こんな状況じゃなかったら惚れてたかもなぁ」

「そうねぇ…でも、カッコ良かったわよ」

 

おお、2人にもそこそこ好評だったようだ。

副部長としての威厳も崩れずに済んだかな。よかったよかった。

 

その後も話し合いは続いたが、結局明確な方針は完璧には立たなかった。

結局、すぐに決めてもしょうがないということで日を改める事になった。

一区切りついたのがかなり遅い時間だったから直ぐ寝ることになったんだが、1つ問題になったのが俺の寝る場所だ。

俺以外は女子だから、全員同じ部屋で寝るっていうのも向こうが嫌だろうと思い、俺は廊下で寝ずの番でもしようかと思ったんだが却下されてしまった。

じゃあ屋上で…と言ったら今度は呆れられてしまった。何故だ。

 

結局、余っているマットを放送室に引いて寝ることになった。

どうしてかめぐねえも一緒にだ。なんで?

理由を聞いたら、「勝手に見回りに行きそうだから」とのこと。

そんなことするつもりは無いと言っても信じてもらえなかった。

むしろ、俺とめぐねえが同じ部屋に寝ることに大しての言葉は何か無いのか。

すると「昨日まで一緒だったのに何をいまさら」とのこと。仰るとおりで。

 

もう反論するだけ無駄だと悟り、諦めの境地で布団へと潜り込んだ。

自覚はなかったが、あれだけの動きをしたせいか疲れが溜まっていたらしい。

目を閉じると意識は一瞬で沈んでいった。

 

 

 

 




くるみちゃんとりーさんは惚れてません(多分)

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