貴女の笑顔のために   作:さぶだっしゅ

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サブタイトルのネタが無さ過ぎて鉛筆転がして決める事に…


けっか

 

 

 

 

「あー、やっと2階かぁ。めぐねえ大丈夫?」

「だ、大丈夫よ…」

 

階段を登り始めた当初はかなり辛かったが、踊り場まで来てしまえばかなり楽だった。

というのも、アイツらは階段を昇るのがかなり下手くそなのだ。

どこぞの中華の妖怪みたいに、関節が固まってしまったのかは分からないが、今はどうでもいい。

ただでさえ遅い奴らが余計に遅くなったのだから、格好の的だった。

運動神経があまりよろしくないめぐねえも、刺股を使って階段から突き落とすという、なかなかにえげつない方法で奴らを倒していった。

 

それでも、如何せん数が多すぎた。

いつかやったゲームのように、倒しても倒しても何処からか湧きだしてくるから厄介だ。

それでも確実に上へと登れている。

このペースで行けば、1時間以内には確実に…

 

「めぐねえ、何か聞こえないか?」

「え?…本当ね。この音って…」

「多分、シャベルかなんかを引きずってる音…あ、何か殴ったみたいだ」

「シャベル…?まさか、恵飛須沢さん!?」

「ん?エビちゃん戦ってんのか」

 

そういえば、エビちゃんが屋上で先輩をシャベルで殴り倒したって言ってたな。

だとしたらこの音の原因もアイツらと戦ってるから、って考えるのが普通かな。

まさか、仲間割れでは無いよね?

悲鳴とか聞こえないから大丈夫だと思うけど。

 

「めぐねえ、急いだほうがいいかも」

「そうね。幸い、上の階にみんな気がいってるみたいだし、さっきよりは楽なはずよ」

「よし、ちょっと強引に押し進もうか」

 

階段の上からこちらを見下ろしていた奴らも、今は後ろを向いている。

こうやって急所を見せてくれてると、こっちの仕事も簡単になっていいねぇ。

一応噛まれないように注意して、バールを打ち付ければそれでおしまい。

後ろはめぐねえが注意してくれてるから問題ない。

3階へと向かう階段は先程とは打って変わって作業ゲームに成り果てていた。

正直ありがたいね。ここで体力を使ってしまえば、この先に居るであろう学園生活部のメンバーを助けるのが難しくなってただろうし。

 

「りー…ん、無理だ…くるんじゃ…」

 

おっと、今の声はエビちゃんかな?

『くるんじゃない』って言ってたって事は、他にも近くに誰か居るかもしれないのか。こりゃ本格的に急がないと。

誰かを庇いながら戦うのってすごく大変だしな。

 

とりあえず周りいた奴らをまとめてなぎ倒すと、一気に3階まで駆け上がる。

さて、どこらへんにいるかな…?

廊下を見回せば、少し離れた所にはアイツらに囲まれたエビちゃんの姿が。

もう少し遅かったらやばかったかも。いや、もう一人の姿が見当たらない。まさか、もう食べられちゃったか?

エビちゃんも膝付きそうになってるし、奴らに食われてるのを目の当たりにしちゃった可能性もあるわけだ。

間に合って無いかもしれないけど、とりあえずエビちゃんだけでも助けないと。

 

「めぐねえ、俺は先に行くからちゃんと着いて来てね?」

「ええ、お願いね」

「ほいよ」

 

俺の心配はどうやら杞憂だったみたいだ。

辺りに飛び散っている血は、いずれも黒々としたものだけ。

つまり、アイツらの血だけだ。誰かが食われた時は新しい血が一面中に流れてたりするからなぁ。

もう一人は何とか逃げれたみたいだ。

誰かを逃がすとか、エビちゃん格好良すぎるわ…

 

それにしても、めぐねえ以外にもちゃんと生き残りが居たんだなぁ。

数日間経っちゃってるから最悪の事態も想定してたけど、無駄になってよかった。

さて、どうやって助けようかな。

ここはサプライズ的な何かをやってみたいところだけど…

でも考えすぎて時間使うのは駄目だしなぁ。

うーむ、迷いどころだけど…

 

「いいんだよな、これで…」

「いやー、あんまり良くないんじゃないかな?」

 

やっべ、あんまりにもエビちゃんが諦めムード出してたから思わず答えちゃったよ。

こうなったらしょうがない。この流れに乗るしか無いか。

エビちゃんも呆けた顔してるし、ある意味サプライズは成功したみたいなもんだし。

とりあえず、彼女を救助するために周りに群がっていた奴らをまとめてバールで殴り倒す。

おっと、力加減を間違えた。首がすごい遠くまで飛んでいっちゃったよ。

 

「第一生存者はエビちゃんかぁ。いや、めぐねえに会ってるから第二生存者かな?」

「お前は状況分かってんのかよ!」

「まぁ悪いほうだよねー」

 

悪いっちゃ悪いけど、あの日ほどじゃない。

なんたって、戦える人数が段違いなんだからな。

 

「1人で辛くても、3人ならどうにかなんじゃない?」

「くるみちゃん!」

 

意外と早かったね。途中にいた奴らもついでに潰しといて正解だったかな。

おー、エビちゃんの顔がますます驚きに染まっていく。

そりゃそうか、死んでたと思ってた人物が二人共生きてたんだから。

俺はあの日に直接会ってないからそんなに衝撃は無いだろうけど、めぐねえの別れ際なんて完全に助かる見込み無かったもんな。そりゃ驚くか。

もし俺があの場に居たとしても、めぐねえが生きてるなんて夢にも思わなかっただろう。

 

「めぐねえ…」

「ごめんなさい、遅くなっちゃって」

 

感動の再会してるところ悪いんだけど、次の波が来てるからそろそろ戻ってきてね?

流石に2人を守りながらっていうのは無理だよ?

 

「ねえ、ふたりとも…」

『下校の時刻になりました。まだ残っている生徒は、速やかに下校してください。下校の時刻に…』

 

え、何故このタイミングで校内放送が?

もしかして、さっきエビちゃんが逃がした人は放送室に行ってたのか。

だとしたら、その人はすごい策士だな。アイツらの生前の記憶を上手く使った作戦だ。

かなり頭のいいやつじゃないと考えつかないだろうな。

 

「くるみ!…って、あれ?」

「りーさん!」

「あ、この放送したのは悠里だったか。納得した」

 

なるほど、確かに彼女ほどの頭があればこんな考えに到れるか。

悠里は頭が良い上に回転も早い。戦略ゲームとかでも搦め手が上手いタイプだ。

テストの時とかでも普通は見ないようなところまで学習しているから、よく点数を比べては辛酸を舐めさせられてきたからな。

 

「な、なんで風間くんが?それに、めぐねえ…どうして…」

「何でって言われてもねぇ…」

 

以前から感じていたことだが、悠里は予想外の出来事に弱すぎる。

これから起こるであろう事を予定を立てながら動けるのは素晴らしいが、想定と違うことが起こった途端に動きが鈍くなるんだよなぁ。

日常生活だったらそれでいいかもしれないが、今は何が起こるか分からない、こんな環境に居るんだ。

ある意味、由紀以上に心が疲れてる可能性も有り得るな。

あれ、そういえば…

 

「胡桃ちゃん、悠里ちゃん。ゆきちゃんは何処かしら?」

「あぁ、ゆきならトイレで待ってる」

 

よかった、食われたわけじゃないんだな。

二人の様子を見る限り精神がまずい状態なんてこともなさそうだし、案外上手く生活してきているのかもな。

先ほどの放送のおかげで3階にはアイツらの影も殆ど無い。

場にほっとした空気が流れる。

 

「とりあえず、ゆきちゃんと合流しないとね。その後の事は部室で話しましょう?」

「そうだな。いつまでもここにいるのもアレだしな…エビちゃん、立てるか?」

「ちょっと辛いわ…悪いんだけど、肩貸してもらってもいいか?」

「おうよ。何なら、おぶってやっても良いぞ?」

「流石にそこまで重症じゃねーよ」

「くるみ、本当に大丈夫なの?怪我とか…」

「心配すんなよ、ただ動きすぎて疲れてるだけだって」

「そう…」

 

見た感じ出血とかしてるわけでも無いし、本当に疲れてるだけなんだろう。

その疲れが、場合によっては命取りになるんだけどな。

それに、アイツらから傷を貰ってたとしたら…その時は俺が…

…いや、今は考えるのはやめておこう。

せっかく再会出来たんだ。

めでたいのに、腹の中に色々抱えながら話すのも無粋ってもんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、今の今まですごく混乱していた。

だって、もうあえないと思っていた人が、いきなり現れたのだから。それも2人もだ。

嬉しいのか、と言われれば当然とても嬉しい。

当たり前だろう。本当なら、お別れなんてしたくなかったから。

 

めぐねえが私達を庇ったあの日、私はとても後悔していた。

いつも私達を守ろうとしてくれた恩人を見捨てるような真似をしたのだ。

本当ならあの場で呼び止めたかった。

でも、あの時のめぐねえは腕を怪我していた。

つまり、そのままにしておけば彼らのようになっていたかも知れないのだ。それが怖かった。

ドアを封じた密室の中で、誰かが感染したらどうなるか。答えは簡単だ。

逃げ場がないのだから、感染した人を倒すか、全員に感染してしまうかの二択しか無い。

私には、いや、私たちにはめぐねえに手を掛ける勇気など無かっただろう。

そしてそのまま…

私は臆病者だ。

そんな私にめぐねえとまた一緒に過ごす資格なんてあるのだろうか…

 

「また暗い顔しやがって。そうやって勝手に沼にハマっていくの、お前の悪い癖だよなぁ」

「アキく…風間くん」

「別に昔みたいにアキくんでもいいんだぞ?誰も気にしやしねーよ」

「うん…」

 

彼とは、風間明くんとは小学校からの仲だ。

といっても、中学・高校になって周囲の目を気にするようになってからは疎遠になってしまっていたのだけれど。

アキくんは誰にでも平等に接する。

逆に言えば、贔屓などせずに皆に優しく出来る人物だ。

だから、昔はかなりモテていた。今は知らないけれど。

そのせいか、アキくんの近くにいると、「彼女でもないのに?」というような目線を向けてくる輩が居たのだ。

アキくん本人は全く気にしていなかったけれど、私はそれが切欠でクラスの輪から外されるのを恐れてしまった。

そのせいで、高校に入ってからはあまり話す機会も減っていた。

そんな彼と、こうして話す機会が事故のせいで出来たっていうのも、なんとも皮肉な話だと思う。

 

「あの…その…」

「あー、話は後でな。流石に俺が女子トイレ入るわけにも行かねーから、さっさとゆきを迎えに行ってやってくれ」

「ええ、そうね…」

 

そうだ、時間は嫌というほどあるんだから。

ゆきちゃんも長い間待たせてしまっては不安に感じるだろう。

ただでさえめぐねえを失って…

 

あら?結局失ってないのよね?

なら、本物のめぐねえと会わせたらどうなるのかしら…?

 

 

 

 

 




ちょっと中途半端な所で切れてしまいました…

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