簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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簪との幸せまったりタイム

 風呂イスに腰をかけ待っていると、室内の無機質な音が静かに聞こえ、浴室のドアの向こうの物音を嫌でも強く意識させられてしまう。

 ドアの向こう側には簪がいる。

 

「……」

 

 距離があり、ドアを隔てているのに関わらず、簪が緊張しているのが、緊張したその息遣いが分かる。

 そしてドアには服を脱いでいる様子が影となって映っていて、余計に意識させられてしまう。

 やましいことは何もないはずなのに、何だかいけないことをしている気分だ。

 それに少しばかりの緊張と気恥ずかしさはやっぱりある。別に何も簪と風呂に入るのは今日が始めてというわけじゃないのに。

 

 この状況からから分かる通り、俺と簪は今から一緒に風呂に入る。

 どうしてこうなったかは深く語るまでもない。年頃の男女が二人っきりの部屋でイチャついていれば、場の雰囲気やその流れで“恋人同士の営み”をすることになる。

 お互いいい年齢でそういうことに興味あって、ある意味、俺達はそういうことをするのに関しては積極的と言っていいかもしれない。そうなる頻度的なものだって少なくない。

 しかし、そうなれば激しい運動になるわけで疲れもすれば、汗やら何やらいろいろ出る。実際、お互い汗やらなんやらでベトベト。それにウェットティシュで綺麗に拭き取ったけど、精子を簪の髪につけてしまったし。

 なので、それらを洗い流して、疲れも取る為に風呂に入ることにした。折角だから、二人一緒で。

 

「……お待たせ……」

 

 ようやく簪が入ってきた。

 ドアのほうを見れば、そこには眼鏡をしていないタオルで前を隠した簪がいた。

 緊張しているのか、恥ずかしいのか、多分どっちもだろう簪の頬は赤く染まっていて、恥ずかしそうに下のほうを見ている。

 

 前だけを長細いタオルで隠した簪。

 本当に前だけしか隠れてないので、普段衣服で肩や二の腕、くびれた腰などが見え、それらは行為の後だからなのか、汗で少しだけ光っている。そんな簪の姿はとても綺麗。そして、艶やかに見え、目を奪われてしまう。

 オマケに前を隠しているタオル、その下は先ほどまで見ていたものが隠されているのが分かるだけに、反射的にと言ったらいいのか、つい想像させられて思わず息を呑む。

 ガン見してしまっているだろうことは自覚しているし、あんまり変なこと考えるのは簪に失礼な気がするけど、目を奪われてしまうのはそんな簪も魅力的だからで、実際エロい。そそられるものがある。

 

「は、恥ずかしいから……じっと見ないで」

 

 恥ずかしそうに身を縮こませている簪にほんの少しだけだが、怒られてしまった。

 本気で怒っているわけじゃない。照れたように簪は笑みを浮かべながら言っていた。

 それにさっきまで今以上に恥ずかしいことに耽っていたのに何を今更……と思ったけど、じっと女子見るのは失礼なことには変わりない。怒られても仕方ない。こういう場でなら尚更。

 それに見惚れてのはどうしようもないけど、ずっとそのままってのもよくない。さっさと綺麗にし始めよう。

 まずは簪の髪から。

 

「ん、お願い」

 

 前にある風呂椅子に腰を下ろしてもらう。

 もちろん、前は変わらずタオルで隠したまま。

 目の前に簪の綺麗な髪の毛が広がる。簪の髪はふわふわとしていて細くて気持ちいい。

 オマケに光沢のある頭髪に出来る美しい天使の輪があって凄い。 普段から手入れを怠らず大事にしているのだと触る度に思う。

 だから、そんな簪の大切な髪を傷つけないよう丁寧を心がけながら洗っていく。痛かったり、痒いところとかないか心配だ。

 

「大丈夫。気持ちいいよ」

 

 それを聞いて安心。

 鏡に目をやると、シャンプーが目に入らないように目を瞑っている簪は、その言葉通り気持よさそうにしている。

 というか、自分に髪を洗われている簪と、簪の髪を洗っている自分が鏡に映っているのを見るのは何だか不思議な気分だ。自分たちの今姿が映るのは当たり前のことで、何もおかしなことはないのは分かってはいるが、本当にくっきり俺達を映している。鏡には俺からは見えない前からの簪の姿も。

 鏡に映る前から見た簪は、タオルで前を隠しているのは変わりないが、髪を洗う為頭にかけたシャワーのお湯がタオルにもかかってしまったようで、濡れたタオルは胸やお腹にピッタリと張り付き、特に胸の部分のは強調するような感じになってしまっていた。

 実際に胸は見えてないのだけど、その様子は見えている時以上に艶かしい。濡れていることも相まってか、尚更艶かしい。また、ついつい目を奪われてしまう。

 

「? どうかしたの?」

 

手が止まっていたのかもしれない。

簪は目を閉じたまま不思議そうに聞いてきた。

いけない。さっさと洗い終えてしまおう。

適当に言葉をごまかし視線ごと意識も反らした。

 

髪を綺麗に洗い終えると、次洗うのは体。

 しかし、流石に簪の全身、特に前を洗うようなことは出来ない。簪は恥ずかしがってさせてはくれないし、前ぐらいは自分で洗いたいとのこと。その気持ちは分かる。

 なので、二つあるうちのボディタオル一つ使って、簪の手が届かない背中を洗っていく。

 簪の背中は一言で表わすのなら、純白だ。もっと言うのなら、玉の肌。シミはもちろん傷なんてものはなく、美しくとても綺麗。髪を大事にしていると感じだけど、肌も同じぐらい大事にしているのだと感じる。

 それにボディタオル越しではあるけども、それでも肌の柔らかさを感じられて楽しい。

 

「……んっ、ふふ……」

 

 くすぐったそうにほんの少し身を捩じらせ、そんな声を小さくもらす簪。

 くすぐったくてそういう声をもらしているのは分かるけど、何だか喘ぎ声のように聞こえる。

 それが扇情的に聞こえ、おかげで理性の防壁みたいなのがガリガリ削られていくのを感じる。

 

 削られてると言えば、今更ではあるけれど、簪の姿もそうだ。

 今も後ろからしか見えてないけど、背中を洗っていれば、それにあわせて後ろからのいろいろなところに目をやらなければならない。

 すると必然的に腰やら脇やらが見える。特に横腹、そこから見える胸の横姿、横乳といったらいいのだろうか。それに目が行ってしまう。理性の壁も削られてしまえば、その横乳、胸に触れたくなってくる。とても魅惑的だ。

 でも、今は体を洗いあっている時。今はまだ早い。高まっているモノを沈めなければ。

 そろそろ簪も前しっかり洗い終わったみたいだし、シャワーで流していく。これでようやく簪が洗い終わった。

 後は俺だけ。簪には一足先に湯船に浸かってもらって。

 

「ダメ。交代」

 

 はい。

 後ろ前交代して、今度は俺が簪に洗われる番。

 手にシャンプーをつけた簪が俺の髪を洗い始めてくれた。

 

「……よいっしょ……ふふっ、お加減はどうですか?」

 

冗談っぽく簪が聞いてくる。

悪くない。それどころか気持ちいい。

一生懸命丁寧に洗ってくれているのが分かって嬉しい。

普段、風呂なんてサッと入ってサッと出る。髪や体も綺麗に洗っているつもりだが、結構雑。ここまで丁寧には洗わない。だから、他の人……簪に洗ってもらうのはいいものだとしみじみ感じる。

 

「じゃあ……次。ボディーソープつけて」

 

言われたとおり、ボディタオルにボディソープをつけて簪に渡す。

髪を洗い洗ってもらうと、今度は体。

簪と同じように前は自分で洗い、手の届かない背中とかを簪に任せる。

つい先ほどまでは自分が洗っていたのに、今自分が簪に洗われるというのはいつになっても多少なりにでも恥ずかしいものがある。何だか簪よりも照れている気がする。女々しいというか何とも情けない。

 男である俺は体洗うのに簪ほど時間はかかるものじゃない。さっさと前を洗い終えてしまおう。

 そう思いながら洗っている時だった。ふにゅっとした感触が背中に触れた。それが何の感触なのかは言うまでもなくすぐに分かった。だから思わず、声を出して驚いてしまった。

 

「……んふふ……」 

 

 俺が驚いたのが嬉しいのか、楽しそうにくすりと簪は小さく笑っている。

 簪が後ろから抱きついて来ているのが分かった。

 後ろでは珍しいことに簪はきっと悪戯っぽく小さな笑みを浮かべていはずだ。見なくても分かる。

 人肌って本当にあったかいんだな……というか、本当に柔らかい。

 ちゃんと目で確認してないけど、俺の背中と簪を隔てるものは何もない。おそらく、さっきまで簪が前を隠していたタオルは今つけてないはず。文字通り、肌と肌が密着している。

 どうしてまたこんなことを突然。

 

「嬉しくない?」

 

 嬉しい。

 少し不安そうな声で聞かれれば、そう正直に答えるしかない。

 

「ふふ、よかった。大きい」

 

 嬉しそうな簪。そのまま簪は、抱きつくようにもたれかかってくる。

 大きいって……背中のことを言っているんだよな。背中とは言えこれだけ密着しているのだから、下品な話ではあるが別のものは大きくはなっている。それはもう臨戦態勢といっていいぐらい。

 背中一杯で簪の胸の感触を楽しむ。嬉しいし、ふにゅふにゅとしていて気持ちいいけど、何だかこそばゆい。だから、身を捩じらすと。

 

「ゃ、あんぅっ、んぅ……っ。こ、擦れちゃうから……動いたら、ダメ……」

 

 何がこすれたなんて聞けない。半分、そうなるだろうなと思いながらもやったことでもあるし。

 それに簪は注意するようなことを言っているが、それでいて何処か期待しているような声色。

 さっきまでの行為で簪のスイッチはおもいっきり入っていたから、ここまでのことをしているとまたスイッチが入ったんだろうな。経験からそうなんだろうと想像できてしまう。

 

 それでも簪はしっかり背中を洗ってくれて、ようやく二人一緒に湯船に浸かることができた。

 




簪とお風呂はいる幸せ。

今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません。

それでは

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