一色いろはが望むもの   作:ブイ0000

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一色いろはは幸運の持ち主である

「さ~む~い~」

 

マフラーに顔をうずめながら呟く

 

ハァ…こんな雪の中何してるんだろうわたし

 

—――数分前

 

 

「ハァ…」

 

「若者が何を辛気臭い顔をしてるのいろは」

 

ベッドでクッションを抱きながら呆けていると後ろから声が

 

「………ママ、部屋に入るときはノックしてって何回も言ってると思うんだけど?」

 

「あ、いけない忘れてた。ごめーんね☆」

 

 

テヘッ!という顔をするわたしの母親

 

あ、あざとい

 

というか、アラフォーの人妻がやってもイラッとするだけだ

 

「で、何の用?」

 

「今日の晩御飯用のおかずがなくってさぁ、いろは買ってきてくれない?」

 

「(指で外を指す)」 (この雪が降ってる中買い物に行けと?)

 

「(コクコク)」

 

「絶対に嫌!」

 

「え~でも、ママこれからパートに行かないといけないし、アンタなら買い物に付き合ってくれる男の子一杯いるでしょ?」

 

 

「いや、そういう問題じゃないし」

 

ハァと再び息を吐き、スマホに目をやる

 

確かに声をかければ何人かの男の子は付き合ってくれるだろう。

 

だけど、そういうのは嫌だと今は感じてしまう。

 

わたしにとって買い物に付き合ってくれる男の子イコール荷物持ちなわけだが、適当に会話をし愛想笑いをしているだけで自分の労働を肩代わりしてくれる

 

メリットはあってもデメリットはあまりない

 

天秤にかけるまでもなくならば誘ったほうが得だと思うだろう。

 

—――――今迄のわたしなら

 

だけど今は違う。いまのわたしにはデメリット、というか感情的な問題が出てきてしまう。

 

もし、万が一の可能性に過ぎないが、男の子と一緒に出掛けているところを先輩に見られてしまったら?

 

別に先輩とは付き合っているわけでもないし、後ろめたさを感じる必要はどこにもない。

 

だけど、そういったシーンを見られるのは嫌だ。すごく嫌だ。

 

そんなことになるくらいなら一人で出かけたほうがマシだ。

 

というか、やっぱり先輩の連絡先を聞いておけばよかったなぁ。

 

先輩なら嫌だと言いながらも押し切れば最終的には一緒に行ってくれそうだ。

 

先輩と一緒に買い物。荷物持ちとしてではなく、デートとしてお出かけ…

 

やだ、なにそれ楽しそう。むふふ

 

「いろは?」

 

「ん?」

 

ハッとママの声で妄想の世界から現実に引き戻される

 

「あーまぁ、仕方ないから行くけどお小遣い頂戴ね」

 

「はいはい。じゃあこれ買い物リストとお金ね。お釣りはお小遣いでいいから」

 

「はーい」

 

—――――

 

以上、回想終了

 

 

そんなこんなで一人で出てきて買い物も終わったけれど、外は大雪

 

さすがに寒すぎる。

 

そう思っていると、ふとドーナツショップが目に入る。

 

お小遣いもあるし、ここは温まって行こう。

 

お店に入り、ドーナツ1個と飲み物を受け取って2階に行く。

 

どこに座ろうかと迷っていると—――

 

「あれ?」

 

顔は後ろ姿で見えないが、妙に見覚えのあるアホ毛が目に入る

 

「え?え?」

 

わずかに鼓動が早くなるのを感じ、早足にその人物の前に回り込む

 

すると、本を読みながら飲み物を啜っている目の腐ったような男の人がいた

 

もちろんじっとしているわけにもいかず、自然と笑みになりながらわたしはその人物に声をかけた

 

「せーんぱい!」

 

 




遅くなりました((+_+))

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