一色いろはが望むもの   作:ブイ0000

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一色いろはは先輩を逃がさない

「あ~やっと終わった。すっかり暗くなっちまったな」

 

「お疲れ様です。せーんぱい」

 

平塚先生から任された仕事、もとい雑用を終えたわたし達は下駄箱で靴に履き替えて校門へ向かう

 

「じゃあ一色、俺自転車だから」

 

お疲れと言って先輩は駐輪場へ向かおうとするので

 

「待つよろし」

 

先輩のマフラーを引っ張り上げた

 

「ぐらっ!」

 

先輩から妙な奇声が漏れた

 

「ゴホッゴホッ!な、何だよ…」

 

「あのですね先輩、空を見てください」

 

「はぁ?」

 

「どうなっていますか?」

 

「星が輝いてるな」

 

「そうですね。ということは夜ですね」

 

「時間的には夕方だけどな」

 

「辺りは真っ暗です」

 

「そうだな。寒いし早く帰りたい」

 

「………(ぷくー)」

 

「え?何で膨れてんの?」

 

「はぁ…あのですね先輩?こんな暗いのにこんな可愛い女の子が一人で帰るのは危険と思わないですか?」

 

「いや、いつも一人で帰ってんじゃないの?」

 

「いつもはもう少し明るい時間に帰ってます」

 

「ああ、そう。で、俺にどうしろと?」

 

普通今の流れで察してくれるものじゃないですかね?

 

それとも分かっててとぼけてるだけなんですか?

 

ふっ!仕方ない。ここはとっておきを出すとしますか

 

コホン、と一呼吸置いて――

 

「もちろん、先輩はわたしを駅まで送ってってくれますよね?」

 

きゃぴるん。と、極上の笑顔を向けてみる

 

大抵の男子はこの笑顔で一発だ!

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ものすっごく嫌そうな顔をされた!

 

「なーんーでそんな嫌そうな顔をするんですかぁ!」

 

「え?だってめんどくさいし」

 

超正直に言いやがりましたよこの先輩

 

ていうか失礼過ぎませんかね

 

「とにかく!先輩にはわたしを送る義務があります!」

 

「いつそんな義務ができたんだよ?」

 

「先輩、考えてみてください。今日は生徒会の仕事をしていて遅くなりました」

 

「そうだな」

 

「そして、わたしが生徒会長にならなければこんなことにはならなかったはずです」

 

「う…」

 

「さて問題。わたしが会長になったのは誰のせいでしょう?」

 

わたしが小悪魔的な顔でみつめると、先輩はバツが悪そうに顔をそらした

 

ふっふっふ。こういえば先輩は断わりませんよね?

 

ちょっとズルイかもしれませんが、逃がしませんよ?

 

「はぁ…分かったよ。駅まで送る」

 

嫌々そうではあるが認めてくれた先輩

 

よっしゃ!と心の中でガッツポーズをする

 

「ちょっと待ってろ。自転車とってくる」

 

「はーい」

 

 

 

先に校門で待っていると、カラカラと自転車を押しながら先輩がやってきた

 

「じゃ、行くか」

 

「はい!しっかりとボディーガードしてくださいね」

 

「はいはい。ん」

 

先輩は自転車に跨りながら後ろを軽く顎で指す

 

「何ですか?」

 

「乗れよ」

 

「あのですね先輩、二人乗りは禁止されてるんですよ?先輩は生徒会長のわたしに学校前で違反をしろと?」

 

「それもそうか」

 

やれやれと言った感じに先輩は自転車からおり、右手をわたしに差し出す

 

「なんですか?」

 

再び同じ言葉で問いかける

 

「鞄。籠に入れるから」

 

「っ!?」

 

あ~今のは効いた

 

完全に虚を突かれた感じ

 

「どした?」

 

しかもこの先輩は下心とか、計算してとかではなく素でやっているからタチが悪い

 

 

少し顔を背けながらわたしは先輩に言った

 

 

「先輩、あざといです」

 

「はぁ?」

 

訳が分からないと言った感じの先輩にわたしは鞄を差し出す

 

渡した鞄を籠に入れ、わたし達は一緒に歩き出した。


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