「先輩、早くして下さいよ。帰るのがどんどん遅くなっちゃうじゃないですかぁ」
「そう思うなら手伝ってくれませんかねぇ?俺一人でやるより二人でやったほうが早いに決まってるんだから」
「え~だってわたしの担当分は終わりましたし」
「そもそも割り振りがおかしくない?何でお前が1列で俺が4列なの?」
「細かい男の子は嫌われますよ?あ、先輩の場合そうでなくてもですね。気がつかなくてごめんなさい」
「さり気にディスるのは止めてくれる?俺泣いちゃうよ?」
ハァと溜息をついている先輩をみていると自然と笑みがこぼれてくる
現在、明日の高校入試のための準備で教室内の机や椅子を後ろに移動している。
何故こうなったのかと言うと、話は1時間ほど前に遡る
放課後、平塚先生に呼ばれて生徒会メンバーは職員室に集合していた。
「えっと、全員そろったんですけど、今日呼ばれた理由って何ですかね?」
「実はな、明日の入試に備えて色々と準備をせねばならんのだ。君達にはその手伝いを頼みたい」
なるほどぉ。ようは雑用ですね。
「ではさっそく2階の教室の椅子と机を全て後ろに移動してもらおうか」
うぇ~肉体労働ですか…ていうかこんな寒いのに2階の教室全部って…
「そんな嫌そうな顔をするな一色」
おっとっと、顔に出てましたか
「ちゃんと助っ人を呼んである」
助っ人?と首を横にかしげると同時に入口のドアが開かれた
「失礼します」
そちらに目を向けると、よく見知った3人の先輩方の姿
その姿を見るとわたしの顔は自然と緩んだ表情になっていたと思う
「よろしくお願いしますね。せーんぱい!」
何が?という顔をした3人の顔に思わずクスッと笑ってしまった。
そんなこんなで奉仕部の3人を含めてお仕事が始まった
雪ノ下先輩の提案により効率よく作業を進めるために3組に分かれることになった
グループは先輩ーわたし、雪ノ下先輩ー結衣先輩、副会長達(ちなみにわたしが決めた)
「ほらほら先輩、他の人達は皆帰っちゃいましたよ?」
「そうですね。俺も早く帰りたい。だから手伝ってくれませんか会長」
「せんぱ~い、これ以上かよわい後輩に重いモノを移動させるのはどうかと思いますよぉ?」
「うぜぇ」
愚痴を言いながらも先輩は作業を続けてくれる。
今日1日中考えた。わたしの気持ちってやつを
わたしが先輩に抱くこの感情は「恋」というにはまだ不確定だ
でも、確定している事がある
それは、先輩の傍にいると楽しいと言う事
だからわたしは、先輩の傍にいたい
先輩の事をもっと知りたい
だから、これからはもっと纏わりついてやる
いつか、この感情を明確にするために
だから―――
「覚悟して下さいね。せんぱい」
「は?何が?」
「クスクス。何でもありませーん」
「??」
今はまだ…ね