「すーはー」
落ち着いてわたし。目の前には奉仕部の扉
待ちに待った放課後、何故だかドキドキしている鼓動を落ち着かせようと自分に言い聞かせる
今までこんなことはなかったのに一体どうしたんだわたしは!
「よっし!」
パンパンと頬を叩いて気合を入れ、いざ奉仕部へとつにゅー「何やってんだお前?」
「ひ!?」
しようと思ったところで横から聞き覚えのある声が聞こえた
振り返ってみると、そこにはいつものように目の腐った先輩が立っていて…
「ひ…」
「ひ?」
「ひゃああああああああああああ!」
思わずわたしは大声を上げてしまった。
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「先程は驚かせてしまって申し訳ありませんでした」
わたしは奉仕部の定位置に座りながら対面に座っている二人の先輩に頭を下げた
「何事かと思ったよー。廊下からいきなり悲鳴が聞こえるんだもん」
うぅ…改めて言われると恥ずかしい
「まぁ、無理もないわ。いきなり背後霊に声をかけられたら誰だって驚くわよ」
「ちょっと?人を霊扱いするのやめてくんない?俺まだ死んじゃいないからね?
だいたい、いきなり悲鳴あげられて驚いたのは俺も同じなんだけど?」
雪ノ下先輩の罵倒にいつものように先輩が反論する
この言い合いは傍から何度見ても微笑ましく感じる
「どうぞ、一色さん」
「あ、ありがとうございますー」
雪ノ下先輩が紙コップに紅茶を注いで出してくれる
以前までは「紅茶、いるかしら?」と一言断られてから出してもらっていたが、最近では何も言わなくても出してくれるようになった
まるでこの部の一員だと言われているようでとても嬉しかったりする。
一口飲むと冷えていた身体が温まっていき思わずうっとりする
「で?今日は何しに来たんだよ?」
少し落ち着いたところで先輩が話しかけてくる
「せんぱーい、せっかく可愛い後輩が訪ねてきているのにその投げやりな態度は酷くないですかねー?」
「あーはいはい。つーか本当に最近は毎日のようにここに来てるが生徒会はいいのか?」
「この時期の生徒会って意外と暇なんですよねー。細かなところは副会長がやってくれますし」
「生徒会が忙しくないのだったらサッカー部に顔をだしたらどうかしら?一応あなたマネージャーなのでしょ?」
「この時期はその…外寒いですし…」
はぁ。とわたしの言葉に雪ノ下先輩が溜息をつく
ん~我ながらどうしようもない理由ですね
「寒いから嫌だとかお前社会舐め過ぎだろ」
「しょうがないじゃないですかー。それにほら、わたしって冷え症ですし」
「いや知らんけども」
「むー。じゃあ確かめてくださいよー」
この時わたしは特に何も考えず手を伸ばして先輩の片手に触れた
そう、特に何も意識していなかったはずだったのに…
ボッ!
「!?」
触れた瞬間、一気に身体全体の温度が上がったような感覚に陥った
あまりの不思議な出来事にわたしは慌てて手を引いた
「え?あれ?」
な、何いまの?いきなり体温が上がったような…
みると、僅かながら手汗をかいてるのが分かった
な、何これ?もしかしてたかだか手が触れ合っただけで恥ずかしがってるの?
「ど、どうしたのいろはちゃん?大丈夫?」
突然のおかしなわたしの行動に結衣先輩が心配そうに声をかけてくれる
「あ、はい。何でもないです」
「まぁ、本来触れれるはずもない霊に触れられる時点でおかしなものだし、何らかの拒絶反応を起こしても無理もないわね」
「ちょっと?いつまでそのネタ引っ張るつもりですかね?大体、さっきの悲鳴といい、何だかんだでちょっと傷ついてるのは俺の方なんですが…」
やばい。やばい。やばい。何でもないっていったものの身体はどんどん熱を帯びていく
「一色さん?」
「あ、えっと、やっぱり先輩方の言うとおりですよね!たまにはサッカー部の方に顔を出す事にします!雪ノ下先輩、紅茶ご馳走様でした!」
「え、ええ」
呆気にとられている先輩達を無視してパパッと支度を済ませ、わたしは奉仕部を出ていく
「結局、何だったんだアイツ」と出て行ったあとに先輩の声が聞こえた気がした
ていうか、わたしも今のわたしの状況を知りたい
そう思い、急いでお手洗いに駆け込み、鏡を見つめる
すると、そこには顔を真っ赤にしている乙女の姿があった
「うわ、な、何この顔…」
今まで見た事もない姿。マンガ何かで見る"ある感情"を抱いているヒロインの姿
「ウソでしょ?たかだか手が触れたくらいで…」
確かめるように自分の手を胸に持っていく
ドクンドクンと心音が早いのが分かる
「これって…いやいや、ありえないでしょ…」
今までそんな予兆もなかったはず
なのに、湧き出てくるこの感情は…
「そう言う事……なの?」
何やら展開が早過ぎる気もします。
SSって難しいですね。