やはり俺の弟と妹は可愛すぎる。   作:りょうさん

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新学期と共に実感する。

 年が明け、正月ムードも大分収まってきた今日、いろいろな意味で大変だった冬休みも終了し学校が始まる。

 正月太りしている奴もいるかもしれないし、逆にセンター試験に向けそれどころではなかった者はやせ細っているかもしれない。どちらにしても何かしらの変化があるだろう。

 かくいう俺にも少しばかりの変化があった。

 「おはよーさん、めぐり」

 「おはよう、颯君っ」

 そうして挨拶を交わした俺達は並んで学校へと向かう。

 これまで通りであれば、俺の隣には小町を後ろに乗せた八幡がいるはずだ。しかし、今現在隣で微笑んでいるのは、この冬休み中に晴れて彼女になっためぐりだ。

 新学期を迎えるにあたって、家族、主に小町と母ちゃんから俺に提案があった。

 それは、週四日はめぐりと通学すること。

 当初は全てめぐりと通学することを提案されたのだが、それは流石に可哀想だし、颯君の気持ちを尊重したいというめぐりの一言でそこまで譲歩された。

 別にそんなことしなくてもみんなで登校すればいいんじゃね?と言ってみたのだが、小町と母ちゃんに怖い目で睨まれた。多分呆れも混ざっていたと思う。

 とまあ、そんなこんなで週の大半をめぐりと登校することになったというわけだ。

 「新学期初日だし、別に小町ちゃん達と登校してもよかったんだよ?」

 「んー、今日は絶対めぐりお義姉さんと登校しなさい!って覚醒して間もない時に言われたんだよ」

 こちらを窺いながらの質問に俺は苦笑いをしながら答える。

 まあ、流石に今日はめぐりと登校しようと思っていたし、すんなり了承したんだけどな。

 「なんか気を使ってもらってるみたいで申し訳ないなぁ。小町ちゃんだってお兄ちゃんと登校したいだろうし……」

 「気にしなくてもいいと思うぞ。小町も八幡もいつもより清々しい笑みで見送ってくれたからな。そもそも、めぐりと一緒に登校するよう提案したのは小町だしな」

 あの時の目は凄まじかった。俺殺されちゃうのかと思ったもん。

 「まあ、その、俺もこういうのしてみたいと思ってたし」

 「元カノさんとはこういうことしなかったのー?」

 そっぽを向き明後日の方向を見る俺にめぐりは、陽乃さんとは違う純粋な笑みでからかうように尋ねてくる。

 うーむ、なぜしている行為は同じなのにこうも笑みに違いが出るのだろうか。それとも俺の目がそう見えるように矯正されてしまっているのか?え、どちらに?そんなの言えるわけないじゃないですかー。

 「うーん、かおりと付き合ってた頃はいろいろと事情があったからな。一緒に登校するとかは俺が拒否してた」

 「あ、そっか……。ごめんね?」

 本当に表情がころころ変わる奴だな。別に気にしてないっていうのに。

 「気にすんな。ほら見ろめぐり、今日も元気に子犬が走り回っているぞ」

 「颯君、あれサッカー部だよ……」

 「おや、そうであったか。ぬっはっはっは!」

 ジト目で見られるという一種の人種にはご褒美になる行為を食らったが、めぐりの気を逸らすことはできたようだ。

 ん?めぐりのジト目?可愛さの塊でしかありませんよ?

 

 

 学校に到着し、一を筆頭にクラスメイトに挨拶を済ませ、少しすれば始業式。それが終われば放課となり、担任教師が出ていくと再び教室内はざわつき始める。

 「そーくんっ!」

 「はいよー」

 HRで配られたプリント類を鞄に詰め込んでいると、隣の席からひょっこりとめぐりが顔を出す。めぐりの良い香りが鼻をくすぐって幸せな気分になったのは内緒だぞっ。

 「これ着けてー」

 「ほいほい」

 めぐりの手には俺がクリスマスプレゼントで贈ったネックレスが握られている。

 服装や装飾物、更には髪色に至るまでの校則が緩い我が校だが、元生徒会長という肩書きがあるめぐりは始業式の間ネックレスを外していたようで、それを着けろという意味らしい。

 「ほい、でけたでー」

 「ありがとーだよー。ふふー」

 ネックレスをいじりながら嬉しそうに笑うめぐりは可愛くて、人目がなければ一目散に抱きしめていただろう。その笑顔は反則だと思う。

 「新学期になっても本当に仲が良いよな」

 その様子を眺めていた一が慈愛の目を向けながら話しかけてくる。

 「はっはっは!羨ましいだろう!」

 「うるせえよ。まったく……これで進展がないってんだから不思議だよなぁ」

 そう言って一は小さく溜息を吐く。

 あ、そっか。まだ言ってなかったな。

 「俺達付き合ってるぞ。なあ、めぐり?」

 「ふぇぇ!?……う、うん。付き合ってる……よ?」

 めぐりがその言葉を紡いだ瞬間、教室内から一切の音が消え、次の瞬間全員が持っている物を落とす音が響き渡る。

 「おーい、一くんやーい。起きろー」

 「……う」

 う?うなぎパイか?あれ美味いよな。

 「うわあぁぁぁ!」

 『うわぁぁぁぁ!』

 「うぉ!?なんだなんだ!?」

 一が隣のクラスにも聞こえているであろう叫び声をあげると、その叫び声で再起動したクラスメイトが一斉に騒ぎ出す。

 「なんじゃこの騒ぎは!お前ら静かにせぇ!」

 「厚木ぃ!比企谷と城廻が付き合い始めたぁ!」

 「……」

 おい、厚木先生?なんで黙ってるの?おーい。

 「ぬおぉぉぉぉ!」

 お前もかーい。いや、なんとなく予想はついてたけどね?

 「う、うわわぁ!そ、颯君!ど、ど、どうしよう!」

 いや、めぐりが取り乱してどうするんだよ……。はぁ、この様子じゃ校内に広まるのは決定事項だな……。

 

 

 その後、この騒ぎを聞きつけてやってきた校長すら騒ぎはじめ、その勢いでカツラが取れるという事件が起こったりもしたが、慌ててやってきた教頭により騒ぎは沈静化した。

 普通であれば大目玉であるが、その輪の中に生徒指導と校長がいたことにより、責任の多くは二人に押し付けられたが、生徒には教頭による少しばかりの説教と情報の拡散が課せられた。

 ……いや、なんで教頭は情報拡散を推奨してんだよ。別に隠すつもりもないし、隠せる自信もないからいいけどさ。

 ていうか、律儀に拡散しても良い?って聞かないでくださいよ……。

 「いろいろと大変だったみたいだな」

 「ほんとですよ……」

 そんなことがあった数時間後、俺とめぐりは平塚先生に呼ばれ生徒指導室に来ていた。

 教頭からの説教が俺には珍しくなかった為、平塚先生からの説教が待っているのかと思ったが平塚先生にそんな様子はなく、いつも通り綺麗で優しい笑みを浮かべていた。

 「まあしかし、やっと君達もくっついたか」

 「おかげさまで」

 「えへへ……」

 平塚先生から直接言われたわけではないが、おそらく俺のめぐりに対する気持ちも平塚先生には見破られていたのだろう。

 そう考えると悶々とした日々を過ごさせてしまったかもしれないな。一にもそういわれたし。

 「校長も厚木先生も教頭も、そして生徒も君達の行く末を見守っていたんだ。ああなるのも無理ないよ」

 「まあ、悪い気はしませんけど」

 「もうすぐ君達は卒業してしまう。早いものだ。教頭たちも寂しくてたまらんのだよ」

 平塚先生の目には何が写っているのだろうか、一年生からの俺やめぐりの姿が走馬灯のように駆け巡っているのかもしれない。

 そんな寂しさと嬉しさの混じった優しい顔をしている平塚先生を見ていると、やっともうすぐ卒業なんだと実感することが出来た。

 勿論、まだ少しだけ時間はある。

 しかし、その少しだけの時間が寂しさを増幅させてしまうのだ。陽乃さんや双葉さんもこんな気持ちを経験し、卒業していったのだろうか。

 卒業するのが寂しい。入学した当初の俺ならばそんなこと思えるはずがなかっただろう。本当に感謝してもしきれないと思う。

 「ところで比企谷」

 「はい?」

 「陽乃には報告したのか?」

 あ。

 「ふふ、最大の難関が残っていたな。まあ、覚悟しておくんだな。城廻もだぞ」

 「ういっす……」

 「はい……」

 やっべぇなぁ……。俺、卒業できるのかしら。物理的な意味で……。




どうもりょうさんでございます!
新学期が始まり、物語は終盤になってまいりました。相変わらずの更新速度ではございますが、見守っていただけると嬉しいです!
寒くなってまいりました。お身体にはお気を付けください!


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