やはり俺の弟と妹は可愛すぎる。   作:りょうさん

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雪ノ下雪乃と奉仕部

 「私になんの用でしょうか?」

 俺をまっすぐ見つめながら問う雪ノ下さん。

 こう近くで見るとやはりこの少女が可愛いということがはっきりわかる。

 「先輩?」

 少しの間雪ノ下さんに見惚れていると、綺麗な顔を歪めた雪ノ下さんがこちらを見ていた。

 「ああ、ごめん。雪ノ下さんと少し話をしてみたいと思ってね。何度か特別棟に出入りしてる雪ノ下さんを見たことがあったから、ここかなって思って。」

 「そうですか。残念ですが、私に近寄って告白しようとしても無駄ですよ?」

 「おやおや、これは手厳しい。これでも顔はなかなか良い方だと思うんだけどなぁ。まあ、それはないから安心しなよ」

 笑顔でそう告げると雪ノ下さんは一瞬イラついたような表情を見せたが、すぐにいつもの綺麗な表情に戻った。

 「それでは何を話に来られたのですか?」

 「弟の事と奉仕部のことかな」

 雪ノ下さんは一瞬考える仕草を見せ、納得のいったように話し始める。

 「……苗字が同じなのでまさかとは思いましたが」

 「雪ノ下の思ってる通りだよ。比企谷八幡は俺の弟だ」

 「兄弟で随分と違うのですね」

 「よく言われるよ」

 まあ、八幡はいわゆるボッチというやつだし、この世を腐った目で見ている。それに比べて俺はリア充とまではいかないが、友達もそれなりにいるし、他人への愛想も良い。どこでここまで道がわかれたのだろうか。

 「ああ、八幡に話してる感じで喋りなよ。遠慮はいらないからさ」

 「そうですか。それでは遠慮なく。あなたはあの腐った目をした男の兄にしては社会に適合してるのね」

 うわ、ひっでぇ。昨日会ったばかりなのにこんな風に思われてんだな、八幡の奴。しれっと社会不適合者ともいわれてるし。

 「八幡にも良いところはいっぱいあるんだけどねー」

 「そうは思えないのだけれど」

 「雪ノ下さんにもそのうちわかるよ。さて!それじゃあ、部長さんに聞こうかな?この部活は困っている人を助ける部活でいいのかな?」

 八幡の話を切り上げ、この部活の本質を聞いていく。

 「間違ってはいないけれど、少し違うわ」

 「ほう?その心は?」

 「この部活は人を助けるのではなくて、人の手助けをする部活よ」

 ふむ。助けるのではなく手助けか。

 「飢えている人間に魚を与えるのではなく、獲り方を教えるといった感じかしら」

 「なるほどね。あくまでもやるのは依頼主だと?」

 「そうね」

 俺の納得した表情に満足したのか、雪ノ下さんは小さく頷きながら肯定した。

 「そんじゃあ、次は八幡のことね。君は平塚先生に八幡のことで何か頼まれたかい?」

 「あの腐った性根の更生を頼まれたわ」

 やっぱりか。おおよそ、先生の権力でも使ったんだろう。そうでないと雪ノ下さんが受けそうにないし。

 「そっか。君は問題から逃げることについてどう思う?今の自分や過去の自分を肯定できるかい?」

 「……そんなのは、誰も救われない」

 雪ノ下さんは声を低くし、鬼気迫る表情でそう述べた。

 あー。こりゃ八幡のやり方とは相性が悪いなぁ。どこかで一度は対立するだろう。

 「昨日、比企谷君もそんな事をいっていたわ。逃げるのがなぜ悪いと」

 「言うだろうなぁ、八幡なら」

 もう一度対立してたみたいだわ。

 「あなたも比企谷君と同じ考えなの?」

 「さあね。でも、俺は八幡の思ってることなら無条件で肯定できる。八幡の考えの悪いところなんて無視して、良いところだけ見ることができる」

 「そんなの」

 雪ノ下さんは反論しようと俺にきつい目を向ける。

 「それが兄貴ってもんだから。なんたって俺はブラコンだからな!」

 「……気持ち悪い」

 なるほど。これがジト目というやつか。一部のマニアのように興奮することはないな。

 「よし!じゃあ、最後の質問!スリーサイ……あ、すんません。なんでもないっす」

 全て言い切る前に吹雪のような寒気が俺を襲った。

 やべえな。思わず謝っちまったぜ。

 「質問を変えるね。君は友達がいないの?」

 「友達の定義がどの……」

 「あ、うん。わかった。昼は基本ここにいるんだね?」

 「ちょっと、話を」

 「じゃあ、ちょくちょく来るからね!それじゃまた!」

 「誰もいいとは……」

 「さよなら!」

 雪ノ下さんが言い切る前に押し切らせてもらった。

 そっか、雪ノ下さんって友達いなかったんだ。だから、あそこで飯食べてたんだな。まあ、昼休憩にあそこにいる時点でそうだよな。うん。

 「あ、おかえり、颯君」

 「おう。ただいま、めぐり」

 教室に帰るとめぐりが笑顔で迎えてくれる。

 「どこ行ってたの?」

 「女子とお話してきた」

 「ふーん。あっそ」

 拗ねたようにそっぽを向くめぐり。

 「なんだよ。嫉妬してんのか?」

 「別にー?颯君はモテるもんねー。よりどりみどりだよねー」

 あらま、完全に拗ねていらっしゃる。こうなると面倒くさいんだよな。

 「別にそんなんじゃねえよ。俺には八幡や小町がいるからな!」

 「颯君には一生彼女出来ないんじゃないかな……」

 今度は呆れられてしまった。失礼な。これでもモテるんだぞ!めぐりも自分で言ってたくせに!

 「まあ、そん時はめぐりが責任とってくれよ」

 「え?」

 「俺に貢いでくれ」

 「少しでも期待した私がばかだったよー!」

 そういってめぐりは窓の方へと向いてしまった。

 俺はそのめぐりを見ながら微笑みでニヤついている顔を隠す。不覚にも、そんなめぐりを可愛いと思ってしまったから。

 あ、八幡と小町の次にな。

 

 

 「おい兄貴」

 「おー、おかえりー。八幡」

 その日の夜、俺がソファーで漫画を読んでいると八幡が話しかけてきた。

 「今日、雪ノ下に会ったろ」

 「会ったよ?」

 「ったく、何してんだよ。兄貴のせいで散々罵られたんだぞ」

 八幡は疲れ切った顔で俺を咎めてくる。

 そんな顔をするまで罵られたのか。ちょっとその場面を見てみたかったな。

 「別にいいだろ?愛する弟がお世話になるんだし、挨拶くらいしておいた方がいいだろ。個人的に興味があったし」

 「なんだよ、兄貴って雪ノ下のこと、その……す、好きなのか?」

 そこで恥ずかしそうに好きって言葉を一瞬ためらう八幡も可愛いよ。

 「バカ言え。俺には八幡と小町がいれば充分だ」

 「本当ブレねえな」

 「本気で思ってることだしな。まあ?男が女に興味があるって言ったら八幡でなくてもそう思うよな。雪ノ下さんにも言われたし」

 きっぱり違うと答えたけどな。

 雪ノ下さんは可愛いし、綺麗だし、勉強もできるからそういう意味で近づいてくる奴をいっぱい見てきたんだろうな。俺もそれと同類に見られたのだろう。

 「なになにー!お兄ちゃん達、女の人の話してるの!?遂にお兄ちゃん達にも春が!」

 そんなことを考えていると、台所で料理をしていたはずの小町がソファーの後ろから顔を出す。

 「ちげえよ。そんなわけあるかよ」

 「そうだぞ、小町。俺のじゃなくて八幡の春だ」

 まだ雪は溶けてないけどな。あれ?それまだ冬じゃん。

 「うそ!颯お兄ちゃんよりお兄ちゃんの方が早く!?小町は嬉しいよ……」

 「だよな……。俺も嬉しいよ。だけどちょっぴりお兄ちゃん寂しい……」

 「颯お兄ちゃん我慢だよ。これもお兄ちゃんの為だよ」

 「そうだな……」

 泣き真似をしながら目に手を当てる小町に俺も便乗する。

 「はぁ……。部活仲間ってだけだ。断じてそういうやつじゃない。今日も友達になるのを拒否されたくらいだからな」

 八幡は溜息を吐きながら否定する。

 そんなこと言われたのか。でもまあ、そう言ってる場面が容易に想像できるな。

 「なーんだ。つまんないのー。あ、でも今度紹介してね。もしかしたら未来のお義姉ちゃんかもしれないからね!」

 「紹介したくねぇ……。絶対それ本人に言うなよ?被害を被るのは俺なんだからな」

 八幡は先程より大きな溜息を吐きながら部屋へと戻っていった。

 確かに八幡が罵倒されている図が目に浮かぶよ。気の毒にな、八幡。

 「ふふふ……。今から絶対に逃がさないもんねー……」

 「……」

 少し小町のことが恐ろしくなった俺だった。まあ、そんな小町も可愛いけどね!

 ……俺も早くいい人見つけないとこうなるのかな。




どうもりょうさんでございます!
この小説も五話目を迎えることになりました!お気に入りの方も百件を超えまして、感謝の気持ちでいっぱいでございます!これからもよろしくです!

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