やはり俺の弟と妹は可愛すぎる。   作:りょうさん

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俺と小町は画策している。

 「ありっとござっしったー」

 東京わんにゃんショーの次の日、俺と小町はコンビニで飲み物を買い、その足で近くで待っている八幡の元へ向かう。

 何故二日連続で出かけているのかというと、昨日東京わんにゃんショーから帰宅した後八幡から頼まれたのだ。『明日、雪ノ下と由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買うからついてきてほしい』と。

 どうやら雪ノ下さんは上手く誘うことができたらしい。俺と小町がついていくのは予想外だったが。

 「お、雪乃さんだー。こんにちはー」

 「やっはろーゆきのん!」

 「ごめんなさいね、小町さん。休日なのに付き合わせてしまって。あとあなた、次その名前で呼んだらどうなっても知らないわよ」

 怖いよ!なんで俺だけこんな親の仇みたいな目で見られてんだよ!

 「いえいえ。小町も結衣さんの誕生日プレゼント買いたいですし、雪乃さんとお出かけも楽しみですし」

 小町はそう言うとにっこりと微笑む。

 小町は雪ノ下さんのことが大好きみたいだし、その言葉に嘘はないだろう。まあ、小町は八幡の嫁候補なら基本大好きだけどな。

 「そろそろ電車来るし行こうぜ」

 八幡に促され俺達は改札をくぐる。

 今回向かうのはみんな大好きららぽーとである。

 八幡や小町と来ることはあまりないが、めぐりや陽乃さん、城廻家とは何度か来たことがある。俺的には八幡達とも来たいのだが八幡が拒んでくる為、いつも断念している。

 まあ、八幡はあのようなどこを見ても人しか見えない場所には行かないタイプだからな。拒みたくなるのも仕方のないことだとは思う。

 「俺は友達からプレゼント貰ったことあるぞ」

 気が付くと八幡達の間では誕生日プレゼントの話が始まっていた。

 「高津君からトウモロコシを貰った話だろ?あれ、八幡貰ったあと泣いてたじゃん」

 「な、泣いてねえし。目から汗が出ただけだし。あれ……。今思うと高津君友達じゃないじゃん」

 あの時の八幡は見ていて痛々しかった。母ちゃんに蒸かしてもらったトウモロコシを、涙を隠しながら食べている様は直視できない程だったからな。

 「まあ、親は子供をひとくくりにしたがるからな。親が話している時、子供同士で喋ってなさいとかな。あんま喋ったことないのに」

 ああいう時は流石に俺も困る。

 もともと俺は興味のある奴としか話さない。その子供が興味の持てない奴ならずっと黙ってたからな。あの時のサヤちゃんの顔は忘れられない。自分はずっと喋ってるのに相手が黙ってるんじゃ不機嫌そうな顔になるよな。

 「確かに、子供会とか地獄だったよな。俺ずっと本読んでた記憶しかないぞ」

 「そうね、私も大概本を読んでいたわ」

 「俺は八幡と小町しか見てなかったな」

 子供会は意外と楽しみにしていた。一人隅っこで本を読んでいる八幡を見るのも楽しいのだが、満面の笑みを浮かべながら遊んでいる小町を見るのが最大の楽しみだった。

 「う、うわー。外いい天気だなー」

 

 

 「驚いた。かなり広いのね」

 雪ノ下さんは構内の案内図を見ながら考えるように腕を組んだ。

 小町が雪ノ下さんに説明をしているのを聞く限り、いくつにもゾーンに分かれているらしく、行く場所を絞らないといけないらしい。

 確かに案内図を見ただけでも一日ですべて回れないことがわかる。

 「じゃあ俺はこっちな」

 「そう、では私はこちらを」

 「はい、ストップです」

 「まあまあ、落ち着けよお二人さん」

 左右に別れていく八幡達を俺と小町が止める。

 ナチュラルに別行動に走るあたりこの二人は流石だな。

 「何か問題があったかしら?」

 「せっかくだしみんなで行こうよ。その方がアドバイスできるからな」

 「でも、それでは回りきれないんじゃ……」

 まあ、確かにそうなのだが、そこんところはうちの小町ちゃんが何とかしてくれる。

 「小町」

 「わかってるよー颯お兄ちゃん!小町の見立てだと結衣さんの趣味的にここを押さえておけば大丈夫だと思います!」

 そう言って小町は手元のパンフレットを俺達に見せる。そこには、有名どころが集まった地帯に丸がされていた。おそらく、一般の女の子が好むようなものを多く扱っているのだろう。

 「じゃあ、そこ行くか」

 八幡の言葉に雪ノ下さんも頷く。二人とも異論はないようだ。

 それを確認すると八幡を先頭に出発する。

 「颯お兄ちゃん……」

 「わかってる」

 そして、出発して少しした頃、小町が俺だけに聞こえるように話しかけてくる。

 先程は皆で回ろうと言ったが、勿論俺と小町にその気は全くない。

 目で合図を送り合うと、俺と小町は徐々に八幡達から離れていく。やがて、八幡達が道を真っすぐ進んでいくのを確認すると脇へ逸れる。

 「まさか二日連続で小町とデートすることになるなんてな」

 「兄冥利に尽きるね!」

 「まったくだよ。いろいろと画策しおって、この妹は!」

 俺はニヤニヤと小悪魔的笑みを浮かべる小町の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 「颯お兄ちゃんだって小町がいなくてもこうしたくせにー」

 「ははは!まあな!」

 小町の言う通り、俺も同じことをしようとしていたのだが、小町に相談する前に提案されてしまった。小町のこういうところは俺に似たんだろうな。

 「さて、俺達もプレゼント買いにいくか」

 「そうだねー!」

 俺達は手をつなぎガハマちゃんのプレゼント探しへと歩いて行った。

 

 

 ガハマちゃんのプレゼントを無事買い終えた俺達は時間も余ったため、少しベンチに座り休憩をしていた。

 「……ん?」

 すると、マナーモードにしておいた携帯が震える。

 その瞬間、猛烈な嫌な予感が俺を襲う。

 やべえ、これはまずい奴だ。絶対にこの電話に出たくない。てか、携帯見なくても誰からの電話か特定ができる。

 「あぁ……」

 意を決して見た携帯には雪ノ下陽乃の文字。

 「小町、一人で帰れるか?」

 「んー?大丈夫だけど、どうかしたの?」

 「急用が入った。後は頼んだ」

 「うん、りょうかーい」

 小町に断りを入れるとその場を離れ、なるべく静かな場所で電話に出る。

 「もしもし」

 『はいはーい。颯太君の大好きな陽乃お姉さんですよー』

 携帯から聞こえてくるのは楽しそうな聞き慣れた声。

 俺は知っている。陽乃さんがこのような声をしている時、俺はロクな思いをしていない。

 「なんですか、いきなり」

 『颯太さ、今ららぽにいるんでしょ?いつも行ってるカフェあるでしょ?そこに集合ね。ダッシュで』

 電話がかかってきた時点で呼び出されることは確定していたわけだが、まさか陽乃さんがららぽにいるとは思わなかった。

 ん?ららぽにいる?もしかして!

 「行きます。いつものカフェですよね?警備員さんに怒られたら陽乃さんが責任とってくださいね」

 早口でそう伝えると俺は全速力で走り出す。

 嫌な予感が最悪な形で当たりやがった!まずいことになったぜこりゃ……。

 

 

 「はぁはぁ……」

 「い、いらっしゃいませ……」

 「あ、待ち合わせです」

 「か、かしこまりました……」

 俺は全速力でカフェまでの道のりを走ってきた。

 途中で子供連れのお母さんに変な目で見られたり、中学生くらいの女の子にぶつかりそうになり、咄嗟に助けると顔を赤くして逃げていかれたりなど様々なことがあったが無事にたどり着くことが出来た。

 そんな俺を迎えてくれたウェイトレスのお姉さんが戻っていくのを確認すると目的の人物を探す。

 「やっほー、颯太」

 「陽乃さん……」

 その人物は心底楽しそうな笑顔、もとい俺に聞きたいことがある顔を浮かべている。

 この瞬間俺は確信した。

 この人は八幡達に会った。

 「まあ、座りなよ」

 「はい……」

 陽乃さんに促され対面に座る。

 「さて、聞きたいことはいろいろあるんだけど、まずはうちの妹のことは知ってるよね?」

 「そりゃ、陽乃さんから何度も話は聞いてますから」

 陽乃さんの質問の答えになっていないことはわかっている。しかし、他の答えが思い浮かばない。てか、口がそうとしか動かん。

 「だよねー。じゃあ、弟君と雪乃ちゃんが知り合いだってことは?」

 「さ、さぁ……。そんなことは聞いたことないですよー?」

 「……」

 俺の答えに陽乃さんは無言で微笑むだけ。

 この表情を翻訳すると、『そういう嘘はいいから、正直に言えや』だ。ふぇぇ……マジ怖いよぉ!

 「すいません。知ってます」

 「もー。最初からそう言えばいいんだよ。比企谷って言ってたから証拠はとれてるんだから」

 「いや、比企谷なんて名前いっぱい居ますから」

 じいちゃんとかばあちゃんとか。身内だし……。

 「口答えしない」

 「はい」

 怖いよ!そろそろ、その笑みを引っ込めてくれませんかね!陽乃さんの本性を知っている身としては、この笑顔は威嚇以外のなんでもない。

 「どうせ颯太のことだから雪乃ちゃんと知り合いなんでしょ?」

 「はい」

 「なんでそういうことを言わないかなー。もしかして、颯太も雪乃ちゃんを狙ってるとかー?」

 「滅相もございません」

 雪ノ下さん本人にもそう言いましたから!だからそんな疑いの目で俺を見ないで!

 「まあ、これからいろいろ聞かせてもらおうかな……」

 あぁ、今日帰れるのかなー……。

 こまちー!はちまーん!たすけてくれー!

 




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