ゴーレムとオーバーロード   作:NIKUYA

8 / 22
短いです
次から冒険者やります、多分。


石と虫の齟齬

 

シャルティアとアウラは緊張していた。

 

今二人は、アインズの部屋で、NIKUYAを含めて四人で、冒険になる為の計画を立てている。

計画の大筋はアインズとNIKUYAが決定し、冒険者としての偽名も決まり、細かい調整に意見を出し合う事となったが、それは問題ではない。

問題なのは、NIKUYAが言った一言である。

 

「エイトエッジアサシンの調査書を見ると、宿は四人部屋が取れない状況のようだが。」

 

四人部屋が取れないので、相部屋か二人部屋しかない。

相部屋は元より取るつもりがない。

これが何を意味するか。

そう、四人が二人ずつに分かれるという事だ。

つまり。

 

「そ、それはつまり、御方々のどちらかと、護衛である私達の一方が、二人で泊まる、という事でありんすか?」

 

護衛として付いていくのだから、護衛二人が同じ部屋というのは奇妙な話である。

当然と言わんばかりの顔で、NIKUYAは頷く。

 

「俺は魔法がほぼ使えないから、魔法が使えるシャルティアと同じ部屋が良いんだけど。アインズさんはどう?」

 

シャルティアがなにかブツブツ言いだしたのを無視し、問う。

 

「私はどちらでも構いませんが。強いて言うなら、人間化の影響で睡眠が必要ですから、朝にちゃんと起こしてくれる方がいいですかね?」

 

冗談を交え、NIKUYAの好きにしていいと言う。

そういえばアウラには、心地よい目覚めをさそう魔法があった気がするなぁと思い、NIKUYAにはシャルティアを、アインズにはアウラを宿での護衛に就かせると決定された。

 

 

「で、次は出自とか間柄の設定なんだけど。」

 

これはNIKUYAとアインズの間で激しい論争になり、アルベドとデミウルゴスを巻き込んだ大事になった。

最終的に、アルベドとデミウルゴスが、アインズとNIKUYA双方の主張を調整し、「遥か遠方の国の実力あるマジックキャスターであるモモン(アインズ)が、見聞を広げる為に、親友であるニック(NIKUYA)と双方の一人娘達のアイリ(アウラ)とティア(シャルティア)を連れて大魔法の転移で旅に出た。たまたま転移した先がこの国だったので、とりあえず腕っ節で食える冒険者とやらになることにした。」との設定になった。

…たしか、冒険者の最高位ランクである蒼の薔薇とやらにティアという名の者がいたと報告書にあったが、問題にはならないだろう。

 

その後アルベドによる細かな演技指導を受け、四人は解散した。

 

 

 

「あ、アインズ様と二人部屋かぁ…粗相の無いようにしないと。緊張するなぁ」

 

緊張といいながら、大役を担うことへの興奮の色を見せるアウラに、シャルティアは溜息交じりに愚痴る。

 

「チビはお眠りになられているアインズ様を眺めておけば朝がくるのだから緊張することはないでありんすぇ。私は寝ないNIKUYA様と一夜でありんすよ?なにを話せばいいやら、どうすれば数時間も楽しんで頂けるのか…あーもう、アウラ、なにか案を出して!お願い!」

 

「え、あんたなら真っ先にアレに辿り着くと思ってたのに…仕方ないわね、今からあんたの部屋で会議よ!」

 

 

 

 

 

「おまたせ、ユリ姉。」

 

「そのようなお戯れはご容赦ください、NIKUYA様。お待ちしておりました。」

 

軽く流されて少し悔しそうなNIKUYAは、プレアデス副リーダーのユリ・アルファと、大食堂で待ち合わせをしていた。

なにやら相談があるらしい。

自分が相談役という任に就いていたのを思い出し、適当に軽食を頼み、席につく。

今日頼んだのはスパイシーアメリカンドッグとメロンソーダである。

 

「で、相談だったよね。」

 

「はい。実は…」

 

ユリ曰く、最近エントマの様子が少しおかしい。

食事量は減り、口数も減り、時々何かを考える素振りを見せたと思えば身体を震わせている。

バッドステータスなどでは無いようなので、心因だと思うが、原因を聞いても答えてくれない。

職務に差し支えるレベルまで悪化しそうだから、なんとかしてほしい。

とのことだ。

 

…心当たりはある。

前日にこの大食堂でエントマに会った時に、不意に言ってしまった一言がある。

 

「ユリ姉、ごめん、原因は俺かもしれんわ」

 

エントマとシズのいる席に着いて、ワニ肉入りカレーを食ってたときに、エントマを眺めながら口をついて出た言葉。

『蜘蛛ってどんな味するんだろう』

 

「身の危険を感じた、という事でしょうか?」

 

ユリが強い口調で問う。この小さくない怒りは、NIKUYAにではなく、エントマに向けられているものである。

 

「まぁ、真偽はわからんし…本人に聞いてくる、ね。」

 

 

 

自室にエントマを呼び出した。

エントマはNIKUYAの一挙一動に過剰な反応を見せ、落ち着きがない。

 

(やっぱり怖がらせたんかな…)

 

席に着かせ、紅茶を啜る。

ユリから頼まれた事は伏せ、最近の不調を問う。

 

「最近あんまり調子良くないみたいだけど、なにかあったかな?」

 

できるだけ優しく問う。

この辺はリアルで部下を持っていた経験が多少活かされている気がしなくもない。

 

しかし、エントマの反応は芳しくない。

肩を小刻みに震わせ、頑なに口を閉ざしている。

 

(これは完全に俺の所為だわ…ユリ姉ごめん…)

 

「エントマよ、別に取って食おうってんで呼んだんじゃないんだ。ただ大事な配下が不調だと聞いたから心配してるだけなんだよ。」

 

優しく、優しく話しかける。

上司の二度の問いに答えないのはマズイと思ったのか、エントマは少しだけ口を開く。

 

「食べない、のでしょうか…」

 

どこか誘われるような、甘い声が耳に届く。

エントマの偽顔は表情を変えないが、その裏の本当の顔から吐息が漏れているのが聞こえる。

 

本気で怖がってると思ったNIKUYAは、安心させるために幾度も肯定する。

なぜか少し悲しそうな雰囲気だが、ようやく更に口を開いて貰えた。

曰く、やはりNIKUYAの所為であった。

食べられる事を考えると体が震えてしまい、他の事が手に付かなくなってしまったそうだ。

 

NIKUYAは過去を反省し、かわいい部下を食べるつもりは無いと強く言いつけ、怖がらせたお詫びにと冒険者業で要らない人間を手に入れたら優先的にプレゼントすると約束した。

ユリには、ほぼ解決したと伝え、エントマを叱らないでやってくれとお願いした。

 

(発言にはもっと気をつけないとな…)

 

 

 

 

 

「ところでエントマ、貴女、NIKUYA様に食べられると思って怖がってたって聞いたけど?」

 

ソリュシャンが少し意地悪げにエントマに問う。

しかしエントマは全く動じず、答える。

 

「怖がってたんじゃないわ。今まで食べる側だった私が食べられると思ったら、そう、興奮してしまったの。」

 

こいつはドMだな、と、今まで知らなかった姉妹の性癖を垣間見たドSであった。




ODⅡを見る限り、ソリュシャンとエントマはアウラとシャルティアみたいな関係性ぽいですね。

はぁ…シャルティアちゃんかわゆ…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。