ゴーレムとオーバーロード   作:NIKUYA

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今回も今回とて、思い付きで書いた回です。毎度。
誤字や脱字などご指摘いただけるとありがたいです。


石と骨と酒

「じゃあ、冒険者として外に連れていく子を選ぶわけだけど。」

 

「うーん、この指輪の効果って、物理攻撃力と魔法攻撃力が激減するのと、種族特性の無効化、ですよね。」

 

人間化の指輪を眺めながら、アインズさんが問う。

 

「そうですね。なので、護衛に持たせるのは得策ではないです。」

 

「じゃあ…限られてきますね。」

 

冒険者の御伴として連れていく子は自ずと絞られていた。

コキュートスは見た目がアレだし、、アルベドとデミウルゴスはその頭脳故に仕事がまさに山のようにある。

村できいた話によると、エルフなどはあまりよろしく思われていないようなので、アウラやマーレは耳を隠す必要がある。

プレアデスも、ユリは副リーダーとしての執務があるようで、ルプスレギナにはカルネ村の監視と護衛の任を負わせている。

シズは攻撃方法が近代的過ぎて目立つし、ソリュシャンは粘液飛ばすし、エントマは虫だし…

パンドラは、すまんけど外させてもらうわ。

残ったのは、シャルティア、セバス、一応アウラとマーレ、ナーベラル。

 

「シャルティア連れていきたい。」

 

「…NIKUYAさん最近、シャルティアを贔屓しすぎじゃないですか?趣味をどうこういうわけではないですけど、不和の元にならないですかね…?」

 

「うーん、確かに…」

 

確かに最近、事あるごとにシャルティアを呼びだしたり、いろんな雑務に使ったりしている気がする。

これはほかの子からみると不公平なのでは…と思うことはあったが、やはりかわいいシャルティアと共に居たい気持ちが勝ってしまっている。

では、不公平に思われないようにはどうするか…

 

「…着いてこれない子には他の任務を割り振りますが、その任務の重要性をこれでもかと説きましょう。で、今後の大きな任務に優先して選抜すると。」

 

「ありがとうございます。じゃあシャルティア決定!いえーい!!」

 

「…うん、精神抑制有ってよかったですよ私。」

 

犯罪者を見るような目に晒されているNIKUYAではあるが、そんなことよりシャルティアと旅ができるのがとても嬉しかった。

さて、では残り一人を決めるのだが。

 

「アインズさんは希望ありますか?」

 

「うーん、正直、NIKUYAさんと私のペアなら並の100lvが束になっても負ける気がしないので、誰でもいい感じですねぇ。」

 

確かに、脳筋ガチタンクビルドの俺が前を守れば、モモンガさんの魔法の雨でなんとかなるのだが。

 

「あ、アインズさんは人間化してもらいますからね。それか、上位道具創造での鎧纏って剣士になるか。」

 

「…うーん…魔法攻撃が激減したら60lv相当の威力になりますよね…上位道具創造で武器持っても筋力は30lv相当…精神抑制が厄介かもしれませんが、人間化します。」

 

「じゃあ魔法職はもう要らないですかね。前衛のセバスかアウラですが…」

 

「アウラにしましょう。耳ぐらいは幻術の装備でなんとかなるでしょう。」

 

結局連れていくのは、シャルティアとアウラになった。

パーティとしては、前衛盾のNIKUYA、前衛範囲攻撃のアウラ、前衛兼後衛遊撃のシャルティア、後衛火力のアインズ。

 

「思ったよりガチな編成じゃないですか?」

 

「うーん、例の軍の実力を考えれば、国落とせるんじゃないですかね。」

 

「またまたぁ~。…いや、いける、俺らならいける!うおー!」

 

「いや!冒険!侵略じゃないからね!しっかりして!」

 

毎度の事一波乱ありながらも、随伴決定会議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまたせ、デミウルゴス。」

 

会議を終え、人間化したアインズさんと九階層にあるバーに来た。

扉を開けると、そこには仕事を一段落させたデミウルゴス、コキュートス、マーレがカウンターに掛けていた。

三人は席から立ち、こちらに一礼する。

 

「お忙しい中、私めの我儘を聞き届けていただき、感謝いたします。」

 

「いやいや、丁度暇になったとこだよ。」

 

デミウルゴスが先導し、予約札の置かれた6人掛けのテーブルに掛ける。

アインズさんの向かいに、デミウルゴス、コキュートスの順に掛けていく。

俺はアインズさんの横、その横にマーレ。

今日は男子会ということで、皆、バッドステータス無効化を解除する装備を着用して来店している。

 

副料理長が全員分のお酒を持ってくる。

アインズさんは日本酒のぬる燗、デミウルゴスは麦焼酎のロック、コキュートスはアポロという甘いカクテル、マーレは白ワイン、俺は苺ミルク酎ハイ。

(ぬる燗とか粋だなぁ。デミも渋い。コキュートスは虫だからな、甘い方がいいのか。…マーレは意外。もしかして…美容の?)

 

「んんっ、では皆、今日もご苦労。」

 

アインズさんが御猪口を片手に持ち上げ、皆の前に掲げる。

皆がそれに従い、グラスを掲げる。

 

「「「「「乾杯」」」」」

 

カキンッ

 

 

次々と運ばれる趣向の凝らされたオツマミに舌鼓を打ちながら、酒が回りだしたアインズさんが守護者と楽しく談笑する。

それを見守りながら、酒にクッソ弱い俺はちびちびとアルコール3%のコレを飲み進める。

 

 

 

 

「デミウルゴスよ、このような席を設けてくれたこと、心より感謝するぞ。」

 

アインズさんが真っ赤になった顔でデミに感謝を伝える。

コキュートスは多少羨ましそうな顔をしている。

 

「お前たちも来てくれてありがとう。私は今、とても楽しい。異変が起きてから、こんなにも温かい気持ちになったのは初めてだ。ありがとう。」

 

屈託ない笑顔でシモベに感謝を伝える。

それを受け、シモベは感極まり大泣きしてしまう。

 

(あー、アインズさんやっちまった)

 

「泣くな泣くな!ほら、飲むぞ!マーレ、飲み明かせ!」

 

「ああ、ナザリックに生まれてよかった!一曲歌わせていただきます!『ナザリックよ永遠なれ』」

 

「イイゾデミウルゴス!」

 

「う、あ、やばいこれ、うっ」

 

「あー!アインズさんが吐きそう!誰か魔法を!」

 

「あ、はい!えっと、え、…なんだっけ」

 

「酔ってる!マーレ酔ってる!アインズさん大丈夫!?」

 

「あ、ああ、大丈bうぇっぷ」

 

「副料理長!水!水と袋持ってきて!」

 

「ただちに!」

 

「うん、大丈夫そう…ってマーレ、それ俺のお酒じゃない?」

 

「ええ、あ、ああっ申し訳ございません!…か、あ、間接キス…!?」

 

「いやいや、男同士だからね!…おーいマーレ!?」

 

「アンコールダデミウルゴス!!」

 

「うむ!なら次は『至高の存在~A・O・G~』」

 

「うぇ、うっぷ…ごめんNIKUYAさん、ちょっとトイレ」

 

「あ、マーレ連れてってあげて!」

 

「あ!はいっ!!」

 

「なんでそんな嬉しそうなの!!」

 

バッドステータス、恐ろしや。

デミウルゴスは歌い止まないし、コキュートスは合いの手に忙しい。

マーレは間違えて(?)俺とアインズさんのお酒を飲もうとするし、アインズさんははしゃぎすぎてトイレなう。

酎ハイ二杯で記憶が飛ぶ俺は、その経験からコントロールして飲んでたので大事には至らず。

 

これが、ナザリック男子会…。

 

次やるときは、お酒の量とか酔い醒ましの手段とかを副料理長と相談しとこう。

そう心に決めるNIKUYAであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、気持ち悪い…」

 

「申し訳ございません、私どもがついていながら…」

 

「いやいや、はしゃぎすぎたアインズさんの責任だよ、ほんとに。」

 

デミウルゴスの歌のレパートリーが尽きたころに飲み終え、ようやく退店した3人。

マーレとコキュートスは寝落ちしたので店に置いてきた。

全部トイレに流したアインズさんを担いで、ほろ酔いのNIKUYAはデミウルゴスとともにロイヤルスイートを歩く。

アインズさんの部屋にはすでにペストーニャを待機させている。

状態異常はペストーニャに任せるとして。

 

「デミウルゴス、今日のアインズさんを見てどう思った?」

 

大事な事を聞く。羽目を外したアインズさん、バッドステータスにここまで魘されるアインズさん。

こんなアインズさんをみてどう思ったか。

俺はちょっと引いた。

 

「バッドステータス無効化の恩恵を知ることができましたね。…アインズ様に関しては、本当に、心から、幸せに感じました。」

 

「幸せに?」

 

「ええ。NIKUYA様がいらっしゃったとはいえ、あのような姿では我々の誰よりも基礎能力で劣っております。それでも我々の前にてあれほど楽しまれたご様子…我々の事を心より信用なされていなければ、できないことでしょう。」

 

そうだ、あんなに幸せそうなアインズさんは、2人でのオフ会でも見たことがなかった。

あの時でさえ、酔っては居たものの吐くほどではなかった。

 

この世界に転移して、人間を辞めて、精神の変化もアインズさんに聞かされていた。

もはや人間であったころの心なんて無くなってしまうのではないかと危惧、不安があったが。

やはり俺たちは俺たちだ。俺の知ってるアインズさんは、これからもアインズさんのままだ。

 

「この人はね、君らシモベのことを我が子のように思ってるんだ。我が子と酒の席を共にする喜び…そういうのはわかんないけど、きっとそういう気持ちなんだろうな。」

 

「我々を御子と…なんと寛大で慈悲に溢れた御方なのでしょう…!」

 

感動に打ちひしがれて感涙するデミウルゴス。

 

「この人はシモベに甘いから、なにかあればデミウルゴスがフォローしてあげるんだよ。」

 

「承りました。私めにどうぞお任せください。」

 

「じゃあ、またなにかあったら呼ぶからね。アインズさんのこと頼むわ。」

 

自室についたNIKUYAは、担いでいたアインズさんをデミウルゴスに渡し、一息つく。

 

 

 

 

 

「メイド…ごめん、名前なんて言うの?」

 

毎日部屋の事を任せているのに名前を知らなかった。

さすがに礼儀に欠けると思い、尋ねる。

 

「は、はいっ!シクススと申します!」

 

シクススか。フランスの作家にそんな人いた気が…

 

「じゃあ、シクスス。胃もたれとか酔い醒ましに良さそうな飲み物もってきてくれる?カップで2つね。」

 

「畏まりました、少々お待ちくださいませ。」

 

 

数分後、ホットミルクをもってきた一般メイドのシクススを無理やり同席させ、命令にて仲間同士で話す時と同じ態度で接するようにさせる。

身体を温めてくれるミルクを飲みながら、互いに愚痴や世間話をする。シクススは緊張しているようだが。

 

「いやぁ、やっぱり可愛いメイドと席を共にするのは素晴らしいな…」

 

ヴァーチャルでしか体験できなかったことを現実で経験できるなんて思いもしなかった、と気持ちを吐露する。

固まるシクススを他所に、ミルクを飲み干す。

 

 

「お代りなどはよろし…いらないかな?」

 

「うーん…じゃあシクススの余ってるミルク頂戴よ。」

 

「な、あ、いえ、私で良ければ是非…!」

 

「ああいや、冗談よ。次はもうちょっと甘めでお願い。」

 

「あ、はい…うん、待ってて!」

 

ああ、幸せな一日だった。

シクススを待つ間にペストーニャにメッセージを送り、アインズさんの容体を聞く。

どうやら酔いは醒めて、今は人間化の指輪を外して執務に励んでいるそうだ。

アインズさんにメッセージを飛ばす。

 

『アインズさーん、大丈夫ですかー』

 

『あ、NIKUYAさん…ご迷惑をお掛けしまして』

 

『いいのいいの。どうだった?』

 

『いやぁ、もうすっごい楽しかったですよ!またやりましょう!』

 

『次はアインズさんもデミと歌ってくださいね』

 

『え、じゃあNIKUYAさんも!よーし、いろいろやる気でてきたなぁ』

 

『あ、冒険者になるのって来週ですよね?』

 

『ええ、来週からで。どうしてですか?』

 

『いや、残りの守護者達とも飯食いたいなと。』

 

『私は忙しいので、ご一緒できない事もありますが』

 

『そうですね…いろいろ落ち着いたら、皆で宴会しましょうよ!』

 

『宴会!いいですね!無礼講で…ああもう、はやくいろいろ終わらせましょう!』

 

『宴会の件は料理長達と相談しときますね!じゃあ、がんばってください。』

 

『あいー、NIKUYAさんも頑張ってくださいねー』

 

 

「宴会、かぁ。」

 

「どうしm…どうしたの?」

 

シクススが帰ってきていた。

甘めのミルクの横にシュガースティックが数本。

 

「うん、いつかナザリックで宴会するからね。一般メイドにも参加させるかぁ。」

 

「え、私達が…それって、守護者様達や、あ、アインズ様もいらっしゃるんです…よね!?」

 

「ああ、うん。無礼講だからみんな仲良くさせるよー?」

 

「アインズ様とお食事…!シャルティア様やシズちゃんも…ああ!素晴らしいですね!宴会楽しみです!」

 

こんなに期待されては…とりあえず、料理長達と会議の必要があるなぁ。

食事量が大変な事になりそうだ。

 

さて…

 

「じゃあ、俺はアウラのところに遊びに行くから。シクススは…料理長に、明日のご飯は中華風がいいって頼んどいて。」

 

「はい…うん、わかったわ!」

 

 

 

 

 

 

 

転移にて巨大樹に到着。

ここからは日課である、アウラの部屋での、シャルティアやアルベド、プレアデスを交えたガールズトークwithNIKUYAの時間だ。

 

「お待たせアウラ。あら、もうみんな来てる?」

 

待たせた詫びにと持参した料理長特製プリンを皆に配り、朝まで続くトークが始まる。

 


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