可愛いからしゃーない
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「よくやった!!!!!!!!」
「最高だなお前ら!!!!!!!!」
玉座から駆け下り、俺はマーレを、アインズさんはナーベラルを、ひしっと抱きしめた。
大変重要な報告があるということで、玉座の間にて、守護者、プレアデス、それらの副官などを呼び集めた。そこで語られた、マーレとナーベラルの報告。
武技を持つものの捕獲と、そして。
「傾城傾国……これだけでも大手柄もいいとこなのに」
「ロンギヌスまで……!!あーもう、お前ら、マジでよくやった!お前らのおかげでナザリックはさらに、さらに強くなった!もう!あー、語彙が足りない、どう言えばいいのか!!」
ワールドアイテム。
精神支配無効を無視して相手を支配できる、それも対象人数に制限のない『傾城傾国』
使用者とターゲットのデータを抹消することができる『ロンギヌス』
ふたつのワールドアイテムが、マーレとナーベラルによってナザリックにもたらされた。
さらに、この世界にワールドアイテムが存在するという証拠、それらを使用する組織の存在の証拠、その組織に対する圧倒的な損害、着用者の抹消……これは、ただワールドアイテムを手に入れただけではないのだ。
抱きしめたままだった両者を、似たタイミングで解放し、ふたりで考えを巡らせる。
まずは、ワールドアイテムの対策が必要だろう。この世界でワールドアイテムの存在が確定したわけだし、出し惜しみしてこの子らを危険に晒すわけにはいかない。
それと、これらを所持していた組織の情報も必要だ。これは、装備品への刻印などから、組織はスレイン法国だと思われる。スレイン法国といえば、アインズさんが消した敵対グループが、陽光聖典という法国の一組織だったと思う。ともかく、粗方進んだ帝国と王国の情報収集の人員を減らし、法国への密偵を拡充するべきだ。
可能なら…法国は消すべきだな。
それらはアルベドとデミウルゴスに任せよう。デミウルゴスには様々な仕事を振ってるが、優先度の低いものは部下に回すように言っておこう。全部1人でやりたがるのは、悪くはないが関心しない。
そして、ワールドアイテム対策だが、これはワールドアイテムを所持する他ない。たしか、カロリックストーンは複数あったよな。
外で活動するものに所持させなければならない。
マーレにはもちろん『傾城傾国』
ナーベラルには『山河社稷図』
王都のセバスとソリュシャンは『熱素石』でいいだろう。
アインズは自前のモモンガ玉がある。
実はNIKUYAにも『世界核(ワールドコア)』というワールドアイテムが備わっていたりする。
デミウルゴスは『ヒュギエイアの杯』
シャルティアは『真なる無』
アウラは『強欲と無欲』
とりあえずはこれでいいだろう。
ナーベラルとマーレに関しては、ワールドアイテムの使用を推奨した。ナーベラルが空間ごと隔離し、マーレが支配。これで人材収集も捗ることだろう。
セバスとソリュシャンは、荒事に巻き込まれる心配はほとんどない、あっても現地の者らとだろうから、ワールドアイテムの中でも格が低いものをもたせている。まぁ、あれはあれでとんでもないアイテムなんだけどね。
「さて、余りに想定外の報告だったため、少々取り乱してしまったな。これからは、先に言った通り、外での任務を負うものはワールドアイテムを所持するように。なお、場合によっては貴様らの命よりもワールドアイテムを優先すべきだという事を理解してくれ。……もちろん、我が子らに傷をつけようとするものが現れた場合は、ナザリック全軍を持って殲滅するが」
これで、とりあえずの対策はできただろう。あとは情報を待ち、集まり次第法国を潰す。
「で、だ。今回の件での、褒賞だが……」
ワールドアイテム2点に加え、数多いゴッズ、レジェンド、レリック装備。武技を使える存在。それに、ワールドアイテムを鹵獲したことによる副次的な情報。
これらの褒賞となると、場合によってはとんでもないことになる。
仮にアインズ・ウール・ゴウンのギルドの場合、メンバーがワールドアイテムを単騎で入手しギルドに寄付した場合、最低でも100億金貨に様々なマジックアイテム、場合によっては他のワールドアイテムをも褒賞とする。
そのため、今回の件、褒賞はとても難しい。
お金は欲しがらないだろうし、ワールドアイテムは預けてる以上の物は与えづらい。…いっそ聞くか。
「なにか欲しいものはある?なんでもいい。本当になんでもいい。絶対に無理な事でなければ全力で叶えてあげる。言ってみて」
「い、いえ、こうしてお褒めいただけるだけで、最高の名誉です!」
「同じく、これ以上ない幸福でございます…!」
「いやいや、それじゃこっちの気がおさまらない。なんでもいいんだよ?普段ならできないような事でもさせてあげるし、本当になんでも言って?」
こればっかりは譲れない。ワールドアイテムに対する等価にはなりえないが、なにかしてあげないと気が済まない。
「な、なら……」
「うん、なんだい?」
「お世継ぎを…授かりたいです」
「……ん?」
ん??お世継ぎを、授かりたい……いや、まて、マーレ、男の子でしょ。え、どうしよ。
そんなマジックアイテムは…性別を変えるマジックアイテムはなかったはずだ。いやそんな問題じゃないだろ何考えてんの。
「……すまない、男であるマーレにそれは不可能だ……。ほ、ほかに、ないか?」
「な、なら、明日一日中、アインズ様とNIKUYA様と、デートが、したいです」
瞬間、複数の人物から殺気があふれた。俺がそいつらを睨んで黙らせる。
「明日はちょうどなにも大きな用事ないし、いいかな。アインズさんもいいよね?」
「ああ、構わない。ただし、6、9、10階層のみとしたいが、よいか?」
「もちろんです!あ、ありがとうございます!身に余る光栄です!」
ともかく、デートか。しっかりとリードしてあげないと…………あれ、男の子をリード?あれ?
「よいよい。して、ナーベラル、お前はなにかないか?」
「はっ、それでは……もう一度、その、ハグを……」
ひしっ、ひしっ。
アインズさんと俺で、左右から挟むようにハグしてやった。頭なでなでも込みだ。
ていうか、ふたりとも無欲かよ。可愛いな。
横の方から歯軋りが複数きこえるが、知らん。信賞必罰はナザリックの掟だ。
「さて、では、御開きとするか」
「各員、しっかりと任務をこなすように。では、解散!」
(ふ、ふふっ、御方々に、抱きしめられ、た……ふふふ、ふふふふ………暖かかった。頭なでなでもしてもらえた。マーレ様に感謝してもしきれない。ああ、もう、感触を思い出すだけで幸せで絶頂しそう。もう死んでもいい。幸せってこういうことなのね……)
「ナーベ、顔がきもい」
「シズ、そっとしておきなさい」
「わかった、ユリねえ」
次回はデート回!
と思わせて、実はシャルティア回やろうと思います
多分