俺もそろそろちゃんと管理しないと終始つかないのでは?と思い始めました。整理してから本筋進めます
19
いろいろとゴタゴタしたが、無事に騒動が終わった。
俺たち『黒の暴風』は、スケリトルドラゴンの討伐の実績をかわれ、金級冒険者になった。
アダマンタイトにはまだ遠いが、知名度は上がったので良しとしよう。
「なんだか思ったほどでもないですね、いろいろと」
「そうですねニックさん。まぁ、スケリトルドラゴンと千程度の雑魚ですからね。飛び級だけでもありがたいもんです」
一応、他の冒険者でも問題なさそうだったが、街を救ったということで、金一封もいただいた。これは王都に送り出したセバスとソリュシャンに送ろう。
「とりあえず一度帰還して、金策でも考えますか、モモンさん」
「そうですねニックさん。バーも行きたいし、食堂も行きたい。とにかく帰りましょう」
「あー、とりあえず食堂で昼飯にしますか。ティア、ゲートを」
「かしこまりんした、パパ。『ゲート』」
昼飯を食堂で食い、遊技場でビリヤードを楽しみながら冒険者としての名声をあげる計画を話し合い、夕方にバーで軽いドリンクを嗜み、夜。
「銭湯いきましょ」
「え、NIKUYAさん、私もですか?」
「もちろんですよ。あとはー……」
あとは誰を連れていくか。
女性陣はもちろん無しで、セバスは王都、デミは任務で聖王国とやらに行ってて、コキュートスは風呂が苦手。となると……
「パンドラは嫌ですよ」
「え、可哀想。心ってもんがないんですか」
「それこの前も言ってませんでした?とにかく、パンドラはダメです。風呂なのに落ち着けない」
「そうなると、いま時間とれそうなのってマーレだけですね」
「ん……?ああ、マーレは6階層で作物の改良中でしたか。時間がありそうなら呼びますか。『メッセージ』」
言わずもがな、マーレは最速で部屋に来た。薄々わかってた。
「ぷっはぁぁぁぁ…………いきかえる……」
大浴場、とは言うものの、その規模はこのナザリックの他の施設に比べるとささやかなものだ。それこそ、100年ほど前に存在した、大衆浴場にある大浴場と遜色ない。
まぁ、この浴室自体、数ある銭湯フロアのひとつでしかないのだが。
なんというか、他の、バラが浮いていたりだの、黄金のマーライオンがあるだの、そういうのは落ち着かないわけで。こういう、庶民的な雰囲気の方が最高に落ち着ける。
それに、このフロアにはあの堕天使の作品がないのだ。女性陣のようにマーライオンに追いかけ回される心配がない。
「あー、やっぱ肉体あると風呂は格別ですね。骨のほうだと温かいだけで、染みるような気持ち良さがないんですよね」
「あ、わかります。石のときはなんというか、いっそ不快な感じなんですよ。人型に変形させてるだけなのに、触覚も違ってくるみたいですね」
「なるほど、でも防御力は変わらずですもんねー。現実なら優秀な種族じゃないですか」
「遠距離攻撃が遠投だけってのがですね……」
とにかく、心身に染みる。温かく、暖かい。
昔の人間は毎日風呂に入ってたというから、水資源も豊富だったのだろう。全く、たった100年ほどで何故ああまで衰退したのか。
それはともかく置いておいて。
「マーレ、いつまでそこにいるつもり?タオル置いてはやく入ってきなさい。体が冷えちゃうよ」
浴場の外側に目を向けると、そこには、タオルを胸から下に巻いて、おろおろと落ち着かない様子のマーレがいる。
「だって、NIKUYA様ぁ……ぼ、ぼく、あの……はずかしくて……」
「男同士でしょ、恥ずかしくないよ?それとも、俺の言うことが聞けないって言うのかな?ん?」
「NIKUYAさん……マーレ、タオルは巻いたままでいいから、此方へきなさい」
「は、はい……」
ようやく覚悟を決めたのか、浴場に向かうマーレ。
足の指先で水面をちょんとつつき、意を決したように足を滑り込ませる。
そして縁の段差を降り、俺とアインズさんの間に座り込む。
「んっ……あぁ…………ふぅ」
「アインズさん、ごめん、あとで俺を1発殴ってください」
「NIKUYAさん…さすがにドン引きです。節操なさすぎじゃないですか?」
「な、俺はシャルティア一筋ですよ!それに俺は同性に欲情しません!」
「欲情…浴場で欲情、ふふっ」
「マーレ……」
「マーレ…………」
「NIKUYAさん、『なにこいつ可愛い。ほんまに男か?ついてるんか?見えへんな。シュレディンガーのマーレやな。茶釜さんほんっまに神。天使を生み出してしもてる。ぐへへ、悪いようにはせーへんよ、ちょいと堕天使にするだけや』ってメッセージで送ってこないでください。キモいです」
「な!!マーレに聞かれたらどうすんですか!セクハラで訴えられちゃう!」
「に、NIKUYAさまがお望みなら……いいですよ……?」
「ぐふっ」
「なっ、NIKUYAさん!メディック!メディー……いいや、ほっとこう。マーレ、上がるぞ。フルーツ牛乳を買ってやろう」
「あ、ありがとうございます…!謹んで、あの、ごちそうになります…っ」
「ふふ、そうかしこまらなくてもよい。そうだ、風呂上りのドリンクの飲み方の作法なのだが、片手を腰にあて、足を肩幅まで開き、一気にグイッと呷るのが作法なのだそうだ。やってみるか」
「えーと、こう、ですか…?」
「うむ、文献に載っていた通りのポーズだ。私もやってみよう」
深夜、たまたま巡回していた執事助手のエクレアに発見されるまで、NIKUYAは浴場に浮いていたという。
(昨日からマーレの様子が変だ。姉として、原因を知らなければならない。だが回りくどいのは面倒だ。本人に直接きこう。無理矢理にでも)
「マーレ、昨日なにかあったの?」
「お、おねえちゃ…いや、なにもないよ……?」
「嘘だッッッ!! 誰にも言わないから、おねえちゃんに言ってみなさい?」
「う、うん……かくかくしかじかで……」
「そ、そうなんだ…光栄じゃない……じ、じゃああたしは用事ができたからこれで……」
(NIKUYA様の裸アインズ様の裸NIKUYA様の裸アインズ様の裸ああああああ……………羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい)
「あたしもご一緒…………なに考えてんだろあたし。はぁ……」
「箱のなかに猫がいるかどうかは、箱の中を見るまではわからない。確認するまでは、猫のいる世界線と、いない世界線が『にゃーご』」
「マーレは肩周りとか腰回りに男らしさがあるんですよ。あくまで骨格は男の子ですから。幼いながらも指も男の指ですし。だから隠してるんですけどね。男らしく創りつつ、男らしい部分を隠してしまって曖昧に感じさせる。よくできてると思いますよ。まさに神の造形。いやあ、ぶくぶく茶釜さんにはほんとに頭が上がらないです。足向けてねれませんね。それでですね、男でありながら女の子に見える理由としてですね、あえて一人称をボクにするっていうのもですよ、茶釜さん、謀ったなぁと思うわけですよ。いやー、演出家だなぁ。とことんまで男の娘を追求していらっしゃる。もうね、他に余計なことしちゃうとバランスがとれないんですよ。一人称を私にしたりだとか、髪を伸ばしたりだとか、スカートの長さもね、これ以上長くても短くてもダメで。ええ。ほんとに、神がかったバランスで。造形担当が何人も泣かされてますからね。頬ボネをあと0.何ミリ上にだとか、スカートをあと何ミリ下にだとか、ほんとに、執念というか、マーレを創ること以外なにも考えてないかのような、マーレを創る為に生きてるかのような執着心でしたからね。ええ、……あ、もう時間ですか?とにかく、茶釜さんのマーレへの愛は造形として発露しているということです。まさに男の娘、ということで。アウラについては、また次回…え、もういいって?いや語らせてよ。アウラはね、女の子でありながら…………」