「あんなのだったっけ…」
「どうしました、ンフィーレアさん?」
「いや、あんな壁とか…櫓とか…なかったんですけど。」
一晩あけて移動再開し、エ・ランテルを出てから2日目の昼前にはカルネ村に着くことができた。
が、様子がおかしいらしい。
ともかく近付くと、櫓や壁の上からゴブリン…ゴブリンウォーリア、ゴブリンファイターなどが顔をだした。
「おっとォ、動かんでくださいよ。人を呼んできますんで暫く待っててくだせぇ。武器には手をかけないで。特に後ろの4人はヤベェ雰囲気がプンプンしやがる」
「襲ってくることもなさそうだし、警戒にとどめよう。人を呼んでくると言った。」
「…後方と左右にさらに15だ。これはさすがにきついぜ」
しばらくし、門にある小窓を開いて少女が顔をだした。
「どうしたのゴブリンさんたち…ん?あ!ンフィーレア!」
「エンリ!大丈夫かい!」
「え?ああ…ゴブリンさんたち、彼は薬師の方よ。通してあげて。」
エンリに言われ、武器を下ろし一礼するゴブリンたち。門は開かれ、中に誘われる。
俺とモモン、そしてティアはこの村に来たことがあるが、今は変装…というか変形やら幻術で見た目を変えてるので村人には気づかれなかった。
が、とある問題が発生した。
「モモンさんは、アインズ・ウール・ゴウンさん、なのですよね!」
「…その名に覚えは、ないのだが。」
ンフィーレアに、正体がバレた。
ティアやアイリに隠蔽の為の誘拐を示唆されたが、首を横に振る。
「名を隠していらっしゃるのは、わかってます。もちろん、他言はしません。ただ、この村を…エンリを助けていただいて、本当に、本当に嬉しいんです。ありがとう、ございました!!」
良い子だ。たまに見える目は、信念を宿した綺麗な目をしている。
「ふむ…他言はしないと、誓えるか?」
「ええ。この命と…バレアレの名にかけて。」
「そうか。ならば信じよう。」
「それ、と…」
なにやらいい辛そうに、言葉を詰まらせながら、懺悔のように訥々と話を繰り出す。
「謝らなければ、ならないことが、あるんです。」
「ほう?」
「僕は薬師で、ポーションをつくっています。エ・ランテルで、とある冒険者にポーションの鑑定を頼まれ、そして、僕は、ホンモノのポーションを見たんです。完成された、ポーションを。」
「ふむ…」
「そのポーションの色は、赤。劣化しない、神のみに造ることを許された、ポーション。」
それを、手に入れ、造るのが、薬師の悲願。
其れの為なら何を犠牲にしようとも。
「ンフィーレアさん」
「…僕は、貴方がたの持つポーションの秘密を知りたかった。探りを入れ、あわよくば1本、どれだけ積んでも手に入れようと…恩人に、こんな事を考えてしまっていたなんて」
「ンフィーレアさん。」
モモンさんが、再度、青年の名を呼ぶ。
「貴方は、なにも悪くない。知らない事を知りたい、それは当たり前で、目標に関することなら余計にそうです。私も、この世界を、人を、自然を、全て知りたい。」
「モモンさん…」
「それに、貴方の場合、ただ知りたいだけでしょう?それを悪用したりとかは…」
「悪用…ポーションを悪用って…ごめんなさい、思いつかないです…」
…正真正銘の研究馬鹿で正真正銘のお人好しだな、この子は。
「つまり、なにも疚しい事はないんですよ。」
「疚しいといえば、エンリちゃんといる時の態度のほうが疚しいぞンフィーレアさん。もっと堂々としないと!」
「んえぇっ!?いや、エンリはいま、その、関係なかったような…?」
おじさん、応援してるからね!
「とにかく、モモンさんの事などは、一切、他言はしません。では、僕は採取の道具の点検をしてきます。ありがとうございました!」
「さて。アイリ、どうみる。」
「あれほど純粋なら、操られない限りは問題ないと思います、お父さん。」
「ティアはどう思った?」
「弄りがいがありそうな…でも、壊れて欲しくないと思いんしたわ、パパ。」
《アイリは、ちゃんと見る目がありそうですね、モモンさん。》
《ティアも、そこそこは情があるようで。安心しましたよ。》
「では、我々もそろそろ仕事に戻るとするか。」
短くてすみません