ゴーレムとオーバーロード   作:NIKUYA

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なぞるだけってのはちょっとあれだけど、整合性のとれる程度の改変って結構難しい。整合性…とれてないのでは…?


石と骨と漆黒の剣

 

ンフィーレアさんの乗った馬車を、8人が囲んで護衛する。

前に漆黒の剣の4人、後ろに我々4人。

薬草採取にしては物々しい護衛だが、ナザリックとしても、ンフィーレアさんを護らなければいけない。

それというのも、この人、「全てのマジックアイテムが使用可能」とかいう、くっそやばい異能持ちだそうで。

それを聞いたアイリが多少警戒度を増したが、モモンの手振りで気を抑えた。

とにかく、ンフィーレアさんは、ナザリックにとって危険であり、同時に有益に成り得ると判断したわけだ。

…モモンさんが、ね。

そのうちいろんな異能持ちをコレクションしたいなぁと、頭がおかしい人みたいな事も言い出したが。いや、収集癖のアンデットだとこんな感じなのかも。

 

警戒もそこそこに、エ・ランテルから数時間。

漆黒の剣のレンジャー、ルクルットの手振りにより、全員が停止する。

 

「森の方から足音複数。お出ましみてぇだぜ。」

 

「種類は?」

 

「ゴブリン多数、オーガ少数だよ」

 

「ありがとう、アイリちゃん。そうだな…ルクルット、いつものでいけそうか?」

 

「余裕だぜ。亀の頭を引っ張り出すみてぇにな!」

 

どうやら、慣れた作戦があるようだ。

 

「我々は、ペテルさんの合図で前に出ます。…そうだな。4人で全滅させますから、後方の護衛と、万が一の抜けをお願いします。」

 

「4人で…はい、わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね。危なくなったらすぐに下がってきてください。」

 

さて、それじゃあ、前衛盾…ガチ脳筋タンクの実力、見せてやろうかね。

 

《あー、ニックさん。攻撃はちゃんと手加減してくださいね。》

 

《そうだったね、忘れてたわすまんすまん。モモンさんも、バフは程々にね。》

 

じゃあ、指一本分のパワーで…指一本でも、全力で突けばアダマンタイト凹ませられるんだよなぁ。今回は指の力だけでいこう。

 

《ティア、今回は魔法無し、飛行無しで槍を主体に、左側に回って敵を逃さないように立ち回って。》

 

《かしこま…わかりんした、パパ!》

 

《アイリ、ヘイト集めは俺がやるから、他の人へのヘイトをこっちへそらしてくれ。逃げそうなやつはティアのほうへ追い立てて、右側へ回りつつ牽制お願いね》

 

《わっかりました、ニックさん!》

 

《モモンさん、俺がヘイトを稼ぐから、3位階までで目立つやつ頼みます。》

 

《了解です、ニックさん。》

 

「みんな、用意はいいな。ルクルット、頼む。」

 

「任せい!よっと。」

 

ルクルットの放った矢は、へなへなと飛び、ゴブリンの群れと俺たちの間ほどに落ちる。それを見たゴブリンは大笑いし、余裕と見て全員で駆けてきた。

 

「そんじゃあ、あとは任せてくれ!」

 

ティアとアイリを横目で確認し、頷きあう。ゴブリンの手前15mほどでとまり、スキルを発動する。

 

「《挑発:lv1》!!かかってこんかいぃ!!!!」

 

ゴブリンの群れは、大声に苛立ったように俺に敵意を向けてくる。ああ、いいね。これが本物か…。

 

ゴブリンの突く槍を手刀…指刀ではたき落とし、細い腕を掴み、軽くぶん投げる。それにぶつかった後続のゴブリンが、またもや苛立ちを大きくさせ、意味のわからない言葉をわめき散らしながら突っ込んでくる。それらを数度投げると、ティアとアイリが、オーガを含む群れの後方に到着した。

 

「ヘイト集めが楽だな…プログラムより、本物の感情のほうが敵意を絞り出しやすいのか…?」

 

横を通るティアとアイリに敵意が向かないというのは少し不気味だが、まあいい。あとは手順通りだ。

 

俺が砂を掛けたり声を張ってヘイトを稼ぎつつ、次々とゴブリンをぶん投げる。

ぶん投げられたゴブリンはティアの槍に突かれ、行動不能になったり、死亡している。

ティアに向いたヘイトは、アイリの魔法で軽減され、俺の嫌がらせで俺に向く。

そして、モモンさんが…

 

「手始めに…《魔法の矢》」

 

 

ズドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォ…………………………

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

結局、ゴブリンとオーガの討伐部位は、2割ほど回収できた。残りはちょっと、というかほとんど原型を留めていなかった。人型で初めて吐いたよね。ニニャさんが普通な顔で耳剝ぎ取ってるのみて、なにこいつ、って思ったわ。

 

《で、言い訳は》

 

《い、1位階ならなにも問題ないだろうと…》

 

《いや、うん、1位階ならファイアとかもっといろいろあるでしょ、それを何故敢えて魔法系レベルによって弾数と威力の変わるような変則魔法にしたのかなって聞きたいんですよ。》

 

《あー、えっとですね…弾数多ければ、力の証明にわかりやすいかなと…》

 

《…さすがに漆黒の剣の皆さんに引かれますよこれ》

 

 

 

 

 

 

と、そんな事はなかった。

 

今は野営の準備を終え、簡単な食事を戴いている。

干し肉と芋と玉ねぎらしきものを鍋に入れ、塩となにかで味付け。それと固めのパンを戴く。

味は…素朴で、温まる味だ。ナザリックの料理とは比べるのも烏滸がましいが、これはこれでまた違う味わいがある。

それぞれがおかわりしたころに雑談が多くなってきて、先の討伐の話も出た。ゴブリンやオーガを前にして一歩も引かない剛胆なニックさんかっこいいとか、踊るように軽いステップのアイリちゃんは天使のようだったとか、片手間のようでありながら堅実な槍さばきのティアちゃんはすごいだとか。

 

「にしてもよお、モモンさんのあれ…すごかったよなぁ」

 

「いやほんとに、あんなに心躍った魔法は初めて見ましたよ。オリハルコン…いや、アダマンタイト級でもああはならないのでは…!?」

 

「同じ魔法詠唱者として…ほんっとに尊敬します。」

 

「大変良いものを見せてもらったのである。」

 

「あとは、ゴブリン共がもうちょい硬かったら文句なかったんだけどなっ」

 

「ルクルット、さすがにゴブリンにそれは酷だろう」

 

ルクルットのジョークにペテルのツッコミで笑う漆黒の剣。と俺。

ティアとティナは内心どうなのかしらんが微笑みを浮かべ、モモンさんは恥ずかしがって頭を掻いてる。

 

 

 

 

 

 

今日は、本当に。

心から、楽しいと言える1日だった。




アウラはテイマーだけど、アイリは鞭使い

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