「…サービス終了日ですし、よかったら最後まで残って…いきませんか…」
なにも居ない、居なくなった空間に手を伸ばし、届かない言葉を連ねるのは、豪華なローブに身を包んだ、肉体を持たざる死の超越者、オーバーロード。…をこのゲームにおける種族に選んだ、モモンガという男だ。
伸ばした骨の手は虚空を掴み、引き戻される。
「ま、まぁ、モモンガさん、最後に来てくれただけでも…」
「そうですよね、NIKUYAさん。忙しいのに来てくれただけでもありがたいですよね。…しかし」
モモンガを慰めるように声をかけるソレは、隕石を磨いて組み立てたような人形、いわゆるゴーレムを種族に選択した、NIKUYAという男。
「モモンガさんの思ってることも、思い直す先も、ちゃんとわかってますよ。仕方ないんです。…やっぱり、さみしいですけどね」
41席ある円卓のうち、上座に位置する場所にモモンガが座り、そこからみて左手前のほうにNIKUYAが座り…残りの39席を眺める。
ここはこのゲーム、ユグドラシルにおけるギルドのひとつ、アインズ・ウール・ゴウンの拠点であるナザリック地下大墳墓の第九階層の施設のひとつ、円卓の間。全盛期は、41席に空欄がでることすら珍しいほど賑わい、度々、様々な計画や雑談が行われる場所であった。
それがいまや、ここにいるのは二人である。
「みんなリアルがあるんですよね。仕方ないですよね…みんな、ここを忘れたわけでもない、みんな、仕方なく離れていったんですよね」
表情のない骸骨の顔が、明らかに落ち込んでいる。少しばかり怒りもあるのだろうが、それも仕方のないことだろう。
「モモンガさんがここを、ナザリックを管理維持してくださってたからこそ、最後に来れた人がいるんですよ。みんな、感謝してるんですよ?ヘロヘロさんも、自分のフル装備が残ってるの聞いて嬉しそうでしたし。」
「そうですかね、私としては、自分のためでしかなかったのですが」
「優しいんですよ、モモンガさんは。貴方だからこそ、アインズ・ウール・ゴウンのギルマスが務まるんですよ。今までギルマスで居てくれて、ありがとうございました。」
最後だからこそ、ハッキリと感謝を伝える。最後だと実感したのか、互いに鼻声になり、嗚咽を我慢するのがわかる。
「湿っぽく終わるのも私達っぽくないですね。そうだモモンガさん、あのスタッフですけど」
「スタッフオブアインズウールゴウンですか?…そういえば一回も使ってないなぁ」
スタッフオブアインズウールゴウン。名前の通り、ギルドの象徴たるスタッフだ。
これはギルド武器といわれ、強力すぎる性能と引き換えに、破壊されればギルドが崩壊するという最悪のデメリットが存在する。
故に、今まで一度も使われることなく、円卓の間の装飾に成り下がっていた。
「それもって玉座の間に行きましょうよ。悪の最期は相応しい場所で。ウルベルトさんが言いそうじゃないですか。」
悪のRPをこよなく追求したギルドメンバーの名を借り、モモンガの行動を促す。
「しかし、いや、うん、そうですね、行きましょう。」
死の超越者が象徴たるスタッフに手を伸ばし、掴む。
禍々しいエフェクトが複数発生し、モモンガに絡みつく。
スタッフの効果で、モモンガのステータスが上がったのが見て感じ取れる。
円卓の間を出、第十階層の玉座の間に向けて歩く。
途中、とあるNPCの前で足を止めた。
「執事とメイド…えっと、名前は」
「セバス・チャンと、プレアデス達ですね。そうだ、この子らも連れて行きましょうよ」
「そうですね使われずに終わるのも、かわいそうですし。えっと、コマンドは…『付き従え』」
セバスと呼ばれる執事NPCと、それの元命令を遂行する戦闘メイドNPC、プレアデス達は、モモンガのコマンドに従い、二人の後ろに一糸乱れず従属する。
「いやぁ、たっちさんの造った執事なだけありますね、貫禄というか、なんというか」
「そうですね、こんな男になりたいっていう気持ちになりますねぇ。そういえばこの子は、ナザリックでも珍しい極善キャラでしたっけ」
アインズウールゴウン率いるナザリック地下大墳墓には、人間が居ない。
後ろに居る執事は竜人だし、メイド達も人間に似たカタチをしてるのも居るが皆異形種である。
というのも、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』における入団条件のひとつに、異形種であることというのがある。
故に異形種の元には異形種が集い、異形種によってのみ成り立つべきだという思考があるのだ。
異形種であるという時点で、人間に対しての感情はほぼ良くない。
人間とモンスターだ、考えれば当たり前である。
さらにこのギルドの活動の主体であった、PKも人間に対する感情の悪化に拍車をかけた…という設定で、ほぼ全てのNPCは設定上、人間に対する性格が悪い。
それゆえ、人間に対して善の感情を向けるNPCは珍しいのだ。
「たっちさんらしいですね、あの人は善意の塊みたいな人でしたね。私もあの人に助けられましたし。」
「モモンガさんの恩人ですよね、何百回も聞きましたよ。」
昔話に華を咲かせ、第十階層にある玉座の間の扉の前に到着する。
豪華で大きく分厚い扉は、両隣にいる非戦闘メイドによって開けられる。
目に飛び込むのは、紅い絨毯、煌びやかすぎるシャンデリア、それに照らされる41の紋章旗。
そして、奥に聳える、玉座である。
「こんな綺麗だったんですね…改めて見るとすごい造り込み。ここほんとにゲームか…?」
NIKUYAは感嘆を抑えられずに気持ちを吐露する。
モモンガは同じく豪華さに気圧されながらも、NIKUYAの言葉に喜んでいる。
「みんなの努力と課金の結晶ですからね、結局、ギルメン以外に見られることはありませんでしたけど。」
誇らしくもすこし悔しいことだ。
その昔、昔というか数年ほど前だが、1500の軍勢を率いてナザリック陥落を目論んだ大規模な攻略が行われたことがある。
各階層守護者が敗れ去り、第七回層すら突破されたことがあるが、切り札ともいえる第八階層にて勝利を収めた。
故に、第九、第十階層は、ギルメン以外の目に触れることはなかったのだ。そしてサービス終了日、今日になっても、侵攻してくる人は居なかった。
またも過去の記憶を懐かしみながら、玉座の前に歩みを進めた。
玉座の隣には、NPCが立っている。
「アルベドだったか…タブラさんの子だったよな。」
一瞥し、モモンガは玉座に腰掛ける。NIKUYAはその隣、アルベドの居る場所の反対側に立つ。
「モモンガさん、ほんとにサマになってますよ。まさに死の王、かっこいいですよ」
「NIKUYAさんこそ、最後の砦見たいですね。なにが攻めて来ても、二人ならなんとかなる気がします。」
互いを褒め合うのは社会人のクセだろうか。
「さあ、あと5分ですか」
アインズウールゴウンの、ユグドラシルの、私の青春の最期が、あと2分で訪れる。
「えっと…『跪け』だっけ」
NPC達が膝を折り、モモンガに頭を垂れる。
「そうだ、思い出した!アルベドの設定!変えないと!」
「え、えっ?はい、えっと、スタッフを使って…」
NIKUYAは慌ててモモンガに指示する。
「タブラさんが最後の行を変更してくれって言ってたの思い出しました!」
「待ってください、設定、ああここか…「長っ!!」」
設定魔のタブラさんらしい…ありえないほどの長文設定。
文字数ギリギリまで詰められているということは、どこか妥協すらしたのだろう。
読まずに、したに素早くスクロールする。
「…ちなみにビッチである。」
「えっと、その文を変えてほしいと…」
「とりあえず削除っと…なに書いたら良いんです?」
「あー、えっと…『モモンガを愛している』って書いてと頼まれましたよ」
「…いやいやいやいや、おかしい!おかしいでしょ!なんでそうなる!……じゃあこうしましょう」
激しい動揺の末、モモンガはキーボードに手を伸ばし、文字を入力する。
『ギルメンを愛している。』
「ギルメンて…私もです?」
「もちろん、NIKUYAさんも含めて皆ですよ。タブラさんも、最後にこんな羞恥を仕込むなんて…」
「私はなんでも構いませんが、とりあえず、ビッチ設定を変えられたのでよかったです。」
まさにタブラさんらしい、といえば納得する設定である。
タブラさんはギャップ萌えなのだ。
最後に変更を頼んだのは、どういう心境だったのかはわからないが。
「さて、ヤボ用も済んだ事ですし…そろそろですか。」
時刻は23時59分。
「もう一分切ってますね。…マスター、今までありがとうございました。お疲れ様でした。また、どこかで。」
「NIKUYAさんこそ、最後までありがとうございます。またいつか、お元気で。」
最後の最後にまた半泣きになりながら、二人は目を閉じ、再び開ければそこは自室であった。
…はずだった。
「んん?」
モモンガが声を出す。
「モモンガさん、恥ずかしい事いった後になんですが、これって…」
「サーバーダウンの延期ですかね?えっと、コンソール…あれ?」
モモンガがなにもない空間を指で突つく。
本来ならそこにプレイヤーコンソールが表示される筈だが、なにも表示されない。
「モモンガさん、GMコールも無理そうです。ログアウトできません。」
「どういうことだ!」
モモンガが勢い良く立ち上がる。その姿に強烈に違和感を感じる。
いや、逆である、違和感を感じなかった。
おかしい。
コンソールがでないだけならまだ不具合なのだと諦めがつく。だが今のはなんだ?なぜ違和感を感じなかった?
そこに、さらに追い打ちのように状況が襲ってくる。
「モモンガ様、NIKUYA様、どうかなさいましたか?」
モモンガが口を愕然と開いている。
「なにか問題がございましたか?」
再度問いかけるその存在に驚愕する。NPCであるアルベドが、コマンド無しにこちらを向き、表情を変えて話しかけて来ている。
「表情…表情?顔が動いている、瞬き!?」
モモンガが驚愕のあまり騒ぎたてる。が、途端に動きがとまり、賢者タイムのように落ち着いた雰囲気で玉座に座り直す。
「モモンガさん、これは…」
「NIKUYAさん、ちょっと試したいことがあるので、いいですか?」
モモンガがNIKUYAに耳打ちをする。
「コンソールやアルベドの違和感、それから察するに…笑わずに聞いてくださいね。私達は、えっと…ゲームではなく、現実としてこの世界に来てるのではないかと…その…」
モモンガが大層自信がなさそうに自論を話す。
それもそうだ、普通に、常識的に、常人が考えて、そんなことはありえない。ありえないのだ、絶対に。だが、それは納得できてしまう。
「私もそう思います…モモンガさんの口の動き、アルベドの表情、動き、空気の流れ…自然すぎます。少なくとも、ゲームではない…ですよ」
ふたりでこそこそ話す姿に、NPCであるはずのアルベドが首を傾げる。
「私共になにか粗相がございましたでしょうか…?」
恐れをもった声色でこちらに伺う。前方に控えている執事やメイドも、今の質問に身体を強張らせたのがつたわってくる。
「モモンガさん、とにかく、異世界に飛んだとしてロールプレイしましょう。それが今のところ一番正しい気がします。」
「ですね、真偽はともかく、とりあえずはそれで…よし。」
覚悟を決めたように、モモンガが耳打ちをやめ、アルベドに向き合う。
「アルベドよ、GMコール、メッセージ、ログアウトと言うのは知っているか?」
メッセージはユグドラシルの魔法である。
NPCが生を受けているとして、どこまでの知識があるのかを判断するための質問だ。
「申し訳ございません、モモンガ様。じーえむこーる、ろぐあうとに関してはお答えする知識がございません。メッセージに関しては、私も使用できる魔法についてであると考えます。」
なるほど、ユグドラシルの魔法については解るらしい。
ただし、プレイヤーのための仕様などは知識として存在しないようだ。
「よいのだ、アルベド。我々は今、異世界に飛ばされたのではないかと想定して思案している。…セバス」
「はっ」
頭を下げるアルベドを手で制し、右前方に跪き控える執事を呼ぶ。
「プレアデス一名を連れてナザリック地下大墳墓を出、周辺一キロの捜索をせよ。知的生命体がいれば交渉し連れてこい、できるだけ危害は加えるな。残りのプレアデスは第九階層の見回りをし、侵入者の警戒に当たれ。」
「承知いたしました。」
おお、モモンガさんかっけぇ。王の素質を垣間見た気がする。
そんなことを考えながら、口を挟む。
「連れて行くのはエントマ以外にしてね。もし異業種を知らない、もしくは敵対している人間種の世界なら、なにされるか分からないし。」
「承知いたしました。では、ナーベラルを連れて、探索に赴きます。」
セバスの後ろの6人のメイドが立ち上がり、一礼する。そして、セバスと共に玉座の間を後にする。
「私はどういたしましょうか?」
アルベドが笑顔で2人に問う。なにかを期待しているような顔だ。
「そうだな、アルベド…モモンガさんに抱きついてみてよ。」
満面の笑みを-表情筋は無いが-浮かべながら、NIKUYAはアルベドに命じる。モモンガの顎が外れそうなのを横目に見ながら。
「仰せの通りにぃ〜!!」
目にも止まらぬ速さでモモンガの首に手を伸ばし、胸を押し付け、顔を近づける。
「なるほど、18禁に抵触するような行為も大丈夫と…いよいよゲームじゃないですね。」
冷静に分析するNIKUYAに、怒声のようなモモンガの悲鳴が聞こえる。
「NIKUYAさん、な、なにをさせるんですか!アルベド、離れて、離れてくれ!アルベド!」
「モモンガ様、私もモモンガ様の命令を遂行したいのは山々なのですが、NIKUYA様より命じられた身、どちらを優先すべきであるか理解しかねます!なので!この場合、先に命じられた事を遂行するのが正しいのではないかと愚考します!モモンガ様!お許しください!これも命令でございます故!」
とんでもないサキュバスだこれは。モモンガさんも骨じゃなかったら即堕ちだろう。
だがこれも実験であり、結果も想定したものである。
「アルベド、そこまででいいよ、一旦離れて。」
「…畏まりました…。」
ものすごく残念そうな顔でモモンガから離れる。それを見、モモンガにメッセージを飛ばしてみる。
《ーーあ、モモンガさん、聞こえますか?》
《あ、NIKUYAさん…メッセージですよねこれ。》
《そうですよ。声を出さずに、脳内でやりとりできるようですね、これならNPCの前でも計画をたてられます。》
《なるほど、それで、さっきのはどういうつもりですか?》
脳内で軽い怒声が響く。目の前の死の王がこちらを睨む。と言っても、瞼も眼球も無いのだが。
《実験ですよ、18禁に抵触する行為が行えるか、NPCに忠誠心はあるか、変えた設定は適応されているか、です。アルベドとセバスに関しては、忠誠心があることが分かりましたね。》
《もっとほかの方法、抱きつかせる以外になかったんですか?》
《そうですね…モモンガさんがアルベドの胸を揉むとか。それでも確認できますけど?》
《…いや、いいです。それで、これからどうしましょう?》
《外はセバスに任せたので、アルベドを使ってほかの守護者を集めましょう。みんなの忠誠心を確かめるのも大事ですし。》
《そうですね。じゃあ…》
メッセージが切れた感覚がする。モモンガがアルベドに向き合い、咳払いをする。
「ごほん、アルベドよ、第六階層の闘技場に、第四、第八階層を除く各階層の守護者達を集めよ。時間はいまから一時間後だ。よいな?」
「はっ、畏まりました。」
「私達は皆が集まる前に闘技場にてやることがある。では、頼んだぞ。」
アルベドに命じ、2人は第六階層に転移する。
ここは、ギルドメンバーのブループラネットさんが主に手がけた自然豊かな階層だ。その階層の一角、闘技場に歩み進む。
「NIKUYAさん、私はアウラに頼んでこのスタッフの力を試しますが、NIKUYAさんはどうしますか?」
「そうですね、私はアウラとマーレと手合わせしたいですね。防御力やスキルの確認がしたいですし。」
NIKUYAの提案にモモンガが少し嫌な顔をする。
「危険じゃないですか?」
「防御力が無ければどのみち危ないですし、防御力やスキルがあるなら、アウラやマーレの攻撃ではまったく傷付きませんよ、大丈夫です。」
「一応、後ろからみてますね。何かあればすぐに救出します。」
互いの案を話しあい、闘技場に到達する。それと同時に、元気な女の子の声が響く。
「とーう!」
15メートルはあろう司会席の上から、小柄で黄金色の髪をした女の子が飛び降りる。
そして見事な着地をみせ、脱兎のごとく此方に駆けてくる。
砂ぼこりが我々に届かないギリギリでブレーキをかけ、2人の前に立ち止まる。
「モモンガ様、NIKUYA様、私達の守護階層へようこそ!」
優雅で元気な礼をみせ、少女が歓迎してくれる。
この子はアウラ。この第六階層の守護者の一人だ。
「アウラよ、少し用があって来た。邪魔をさせてもらうぞ。」
「邪魔だなんてとんでもない!このナザリックは全土に置いて至高の御方々のものでございます!その御方々を邪魔者扱いする輩なんてこの地には居ませんよ!」
「そうか、それで…」
モモンガが辺りを見渡す。
「あっ、少々お待ちください! こーら、マーレ!はやく来なさい!」
アウラが司会席上にいる可愛い子に声をかける。
「おねぇちゃん…と、飛び降りるの…?」
「モモンガ様たちが来てるんだよ!?はやく飛び降りちゃいなさいよっ!」
「わ、わかったよぉー…えぇい!」
翻りそうなスカートを抑え、姉と同じように飛び降りる。もちろん無傷だ。
そして恥ずかしそうに此方に駆けてくる。
「マーレ、おそい!」
「ごめんなさいおねぇちゃん…えっと、マーレ・ベロ・フィオーレ、只今参りました…!」
姉と同じ黄金色の髪をパッツンにし、姉よりも女の子らしく振る舞う女の子のような服装の男の子、所謂男の娘であるマーレが2人の前に姿をみせる。
「二人とも元気そうだな。良いことだ。」
「お陰様で元気にやらせてもらってます!…ところで今日はどういった御用で?」
アウラが興味を込めた声で尋ねる。
「うむ、今日はコレの実験をしにきた。」
モモンガが左手に持つスタッフを揺らす。
「そ、それは!モモンガ様しか持つことが許されないという、あの伝説の…!」
「うむ!これがその伝説の!スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンである!この七匹の蛇は………」
モモンガがコレクター特有のレア自慢モードに入ってしまった。
アウラとマーレはものすごく興味深くモモンガの自慢を聞いている。
「……なのだ!!…こほん、つまりだな、これの起動実験をしたい。的をふたつほど用意してくれないか。」
「畏まりました!シモベに用意させますね!」
暫くして、闘技場の奥から的を抱えたアウラのシモベが出てくる。
闘技場の真ん中あたりに的を立て、アウラとシモベが闘技場の端に寄る。
「モモンガ様、準備完了です!いつでもどうぞ!」
「うむ、では…」
モモンガが杖を掲げ、精霊召喚を試す。
無事プライマリファイアーエレメンタルが召喚され、的は支柱ごと灰になった。
「スタッフの力は使えますね?詠唱も問題無しですか。」
「そうですね、とりあえずは一安心です。さて、あれは消して…次はNIKUYAさんですね。」
NIKUYAはアウラとマーレに向き合う。
アウラは期待と疑問を持った目で、マーレは緊張と疑問を持った目でNIKUYAを見る。
「2人には俺と手合わせしてもらうよ。いいよね?」
ごくごく普通に、軽く遊び程度に手合わせするつもりで言ったのだが、アウラは武者震いのように体を震わせ喜悦の表情を見せ、マーレは悪寒に見舞われたように体を震わせ、しかしどことなく嬉しそうな表情をみせる。
「最近あんまり体を動かせて無かったからね、…そもそもこの体が完全に俺の意思で持ってるってのがよくわからないけど…とにかく、肩慣らしだよ、そんなに気負わないで、気軽にね?」
はじめての小説でした
次回は手合わせ後のシャルティア登場から書きたい、書きたい。