異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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そろそろ戦争編もとい勇者編を書かないとなぁ…
諸々のイベントはその後になりそう。


第27話 鍛冶キチ

「で、イオリちゃんは今どこにいるんですか? リュートくん」

「そうそう、それを教えてくれないと」

「確か、訓練場で何かをしてるって言ってたよ」

 

 イオリさんが鍛冶をしてるなら、不自然過ぎるほど静かな場内を歩きながら二人に僕はそう答える。さっきの事を思い出すと鼻の奥がツンとするがまあ、大丈夫だろう。というかこれ以上鼻血なんて出したら貧血で倒れると思う。

 

「そうなんだ、じゃあ迷う心配もないね!」

「そういえばリュートくん、『おりしゅ』とか『踏み台てんせいしゃ』って何? イオリちゃんに聞いても、リュートさんに聞いてってしか言ってくれなかったんだけど……」

「えっ」

 

 いや、確かに僕はどっちにも当てはまりそうなんだけど……ほんとイオリさん何教えてる訳!? 

 

「リュートさんでも分からないんですか?」

「いや、説明は出来るけど……」

「私も聞きたいな、お兄ちゃん」

「あ、いや、はぁ……うん、まあいいか。えっと、まずはオリ主っていうのは──」

 

 二人にひとしきりテンプレな事を教えている内に、訓練場の入り口に着いたが、相も変わらず何の音もしない。確実に何かがおかしい、もしかしたらイオリさんは移動してたり? それは二人も思っていたらしく……

 

「ねえお兄ちゃん、本当にイオリさんはここに居るの?」

「イオリちゃんならこんなに静かにしてる訳ないと思います」

「そうだよね。まあ、とりあえず入ってみれば分かると思うから、行ってみるよ」

 

 そう言って僕は訓練場の扉を開けた。が、一切の音がせずイオリさんの姿もないので、とりあえず確認だけでもと思い一歩踏み出した途端、視界に映っていた世界が一変した。

 

「ふふ、ふはは、ふハははは! あははははハははははは! 私は今、生きている!!」

 

 轟々と燃え盛る炉、その前で狂ったように笑いながら、ちょっとヤバメの眼で、ランドセルを背負いながらハンマーを振るっているイオリさんの姿が僕の目に映った。おまけに防具も全部着ている、若干色が違うけどまあ、なんというか……そう、関わり合いたくない類の光景だった。

 

(うん、とりあえず一旦撤退)

 

 だから、そう思ってレーナ達の所に僕が戻っても悪くはないと思うんだ。そういえば騒音対策はしておいてって朝頼んでおいたなぁ……と現実から逃げていると、レーナが話しかけてきた。

 

「リュートくん、イオリちゃんはいたんですか?」

「一応……ね。うん、元気そうだったよ」

「それじゃあ行ってきなよ、お兄ちゃん。それとも、私達かどっちかが居ないと不安?」

「いや、そうじゃないよ。これに関しては、見てきてもらった方が早いと思う」

 

 そう言って二人を訓練場の中へ、背中を押して踏み入らさせてみる。すると、さっき入った時にイオリさんがいた方向を見て本当に一瞬で帰ってきた。

 

「「リュートくん(お兄ちゃん)! 何アレ!」」

「1週間くらい鍛冶が出来てなかったから……リバウンド?」

 

 それにしても、二人とも凄く仲良くなったよね。最初は修羅場だったのに……おっと、話がずれちゃったか。

 

「とりあえず、あの状態のイオリさんには話しかけたくないんだけど……どうすればいいと思う?」

「私はイオリちゃんの気が済むまでやらせてあげた方がいいと思うよ!」

「あ、私もそれに賛成!」

「それじゃあ、それで決定ってことで」

 

 とりあえず僕達は、一旦この場から撤退する事にした。

 

 ◇

 

「はぁ……はぁ……もー汗でびちゃびちゃになってるや」

 

 自分でもどれくらいやっていたか分からないが、この身体にピッタリワンピースがくっつくくらいの汗の量からして、かなりの時間鍛冶をしてたのだろう。

 

「まーその分、色々出来たからいいんだけどね!」

 

 記憶にあんまりないけど。って、私は誰に喋ってるんだろう? まあ、ランナーズハイ? 的な何かだろう。

 そんな事を思いながら、自分にかけていた魔法や消音の為に使っていた魔法を切り、装備類を外して《クリーン》の魔法をかけて収納する。きちゃないのはきちんと洗わないとね、簡易的にでも。

 

「とりあえず、お風呂入ってこよう……」

 

 と、装備類はそれてもいいが私自身はそうもいかないため、腕で汗を拭いながらお風呂場へ向かう。気配はある程度なら察知できるから、男の人が来てたら隠れよう。それぐらいのMPは残ってる。

 

「あー……ちょっと髪切ったし、きちんと洗いたいなぁ……」

 

 どこかの漫画で髪の毛を使ってたから、もしかしたらって思って散髪(毛先を整えるくらい)の髪の毛を使ってみたりした。ちょっと長すぎたんだよね〜この髪型は変える気はないけど。

 そんな事を思って、城の入り口辺りを歩いている時だった。

 

「「あっ」」

「あれ? イオリちゃん?」

「それよりもイオリちゃん! 格好どうにかしてください格好!」

 

 そんなレーナさんの声で自分の格好を改めて見てみる。多分汗で顔には髪の毛が多少張り付いてて、ワンピースは汗で濡れ透けな状態だから……上は何も着けてないから、色々見えちゃいそうな訳で……

 

「kyっ!?」

 

 流れでそう女の子らしく叫んでみようとして声を出しかけた時、城門の方から知らない気配の人が。これは……馬? に乗ってこのお城に向けて走ってくる音が聞こえた。

 

「リュートさん、とりあえずよく分かんないけど警戒」

「了解。て言うか、今のイオリさんの格好かなり目に毒なんだけど……」

「このロリコンめ。《炎纏》」

 

 改修して、全体的に緋色になり刀型になったマイク剣改を取り出して正眼に構えながら、全身に炎を走らせて汗を一気に吹き飛ばす。リュートさんも気づいたのか、金色の波紋を多数展開させた。

 

「えっと、お兄ちゃんとイオリちゃん、いきなり何を?」

「馬に乗った不審者。私が前衛、リュートさんが援護射撃でお願い。二人は下がって」

 

 門が開かれ、軽装だが騎士っぽい格好の人が馬に乗ってこちらへ駆けてくる。とりあえず本当に不審者だったら一刀両断してやろうと力を込めてると、その人は目の前で急停止して、アンナさんに話しかけてきた。

 

「アンナ様ですね! 緊急でお伝えしたいことがあります!」

「その剣の紋章、なりすましという訳ではなさそうですね。用件は何ですか?」

 

 アンナさんがそういうので剣を見てみると、確かになんか紋章がある。多分それが軍の紋章なんだろう。っていうか、アンナさんが大人な対応をしてる!? 

 とりあえず、リュートさんが王の財宝の展開を止めたので、私も剣を下す。腰に構えて抜刀術擬きをできる体勢で、だが。

 

「今回の戦争の結果です!」

「もう勝敗が決したんですか!? 何が何でも早すぎます!」

 

 えーと、移動の時間を考えるとして……2、3日で決着か。いくら魔法があったりしても、確かに早すぎるね。

 

「今回の戦争は──」

 

 ゴクリと、この場の誰も唾を呑む。私も実はかなり気になる。

 

「人族が橋の大部分を斬り飛ばして撤退! 追撃が不可能な為帰還する事となりました!」

 

 えっと、それって勝ち? 負け? 

 


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