異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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テストが終わった!(英語を除いて)平均7割弱は取れたし、まあいい方かな?
赤点もないぜヒャッホー


第26話 セーフ

「やっぱり、誰もいないんだなぁ……」

 

 訓練場に戻ってきて、私が発した第一声はそれだった。戦争中で使う人がいないのか、私が朝出て行ったそのままの状態だった。まあ、その方が色々と都合がいいんだけどね。

 ここ数日ハンマーを振るような鍛冶が出来てなかったので、禁断症状みたいなものが出てきそうだが、鍛冶をする前に確認しておかないといけないことがある。

 

「これだけは、後日とか後回しにしちゃあマズイよね」

 

 そう呟きながら、ペンダント状だった杖を伸長させて異次元収納からドラゴンを封印したと思しきカードを取り出す。やっぱり、使ってみるしかないよね! 

 

「えっと、確か詠唱は……『クロウ』の創りしカードよ、我が鍵に力を貸せ! えっと……カードに宿りし魔力をこの鍵に移し、我に力を! 『(ドラグーン)』!!」

 

 魔力を纏い中に浮かんでいるカードに、両手で握っている杖の先端をかざしながら詠唱してみたが、何も起こらなかった。うん、何も起こらなかった。

 ああ……まずい、すっごい恥ずかしい。周りには誰もいないが、段々顔が赤くなっていくのを感じる。うぅぅ……でも折角ゲットしたからこのカードは使いたいし……

 

「『私』の創りしカードよ、創造主たる私が鍵に力を貸せ! カードに宿りし魔力をこの鍵に移し、私に力を! 『(ドラグーン)』」

 

 若干アレンジした詠唱をして杖をかざすと、今度はちゃんと変化があった。カードから銀色の魔力が湧き上がり、その中から赤い強靭そうな腕が、立派な翼が、カッコいい尻尾が、猛々しい牙が現れた。

 

「きゅるあっ!」

 

 そんな可愛らしい鳴き声と共に私を見つめるつぶらな瞳。そう、カードから出てきたドラゴンは封印? した時の大きさじゃなく、私の半分程度の大きさの幼龍? になっていた。心なしか全体的に丸みを帯びているような気もする。

 バッサバッサじゃなく、パタパタと翼を動かしてホバリングし私と目線を合わせている。

 

「えっと……何コレ?」

「くあ?」

「雄?」

「きゅぅぅ……」

「雌?」

「きゅあ!」

「……」

「きゅるう!」

 

 私が首を傾げると一緒に首を傾け、なんとなく頭を撫でてみたら目を細めて嬉しそうな声を出している。雌らしいね。とりあえず可愛い、超可愛い。何この生き物。

 

「って、いやいや、そうじゃなくって。ブレスとかやってもらえる? 的は……とりあえずこの剣で」

 

 言葉が通じる前提で、いつだったか作った片手剣+4くらいを少し離れた場所に投げて刺す。一応ミスリル製だし、そうそう簡単には壊れたりしないと思うけど……

 

「きゅるあぁぁぁっ!」

「わーお……」

 

 単発のタイプじゃなく、継続的な感じで放たれたブレスは柄の部分とその近くのミスリルを溶かしつくし、パンチで刀身が真っ二つになり尻尾の叩きつけで完全に粉々になった。

 ふぇ……結構頑張って作ったのに……いや、泣いてない。泣いてないもんね。強さが確認出来た分プラスだもんね! 

 

「グスッ……とりあえずもどって」

「きゅあっ!」

 

 私の声に応えて、そう一鳴きして幼龍は銀色の魔力に包まれカードに戻った。とりあえずドラゴンは超可愛い、強さは変わらない、魔力もあんまり使わない。いわゆる、強い(確信)ってやつになると思う。けど今はそんなことよりも。

 

「ふえぇ……いいもん、新しく作るもん」

 

 もうどうしようもなくなった元剣を朝作った炉の中に投げ入れ、私は久しぶりに鍛冶を始めた。鋳潰して、新しく……

 

 ◇

 

「お兄ちゃん、流石の私もそれはどうかと思うよ……」

「……」

 

 僕は今、レーナとアンナの目の前で正座で座らされている。今回のことの顛末を話したら、イオリさんが恐れてたような事態にはならなかっなけど、説教タイムが始まった。はっきり言って何も言い返せない。

 

「リュートくん、ここに来るまでイオリちゃんに一回でも謝りましたか?」

「謝ってない……です」

 

 改めて考えると、僕がやってた事は本当に事案というか通報ものだった。安心しきって寝ている幼女に近づいて、抱っこして匂いを嗅ぐとか……どこの変態だよ。いや、余裕で実行に移しそうな人が結構近くに居るけど、僕はあそこまでの変態にはなりたくない。

 

「今からでも遅くはないです、すぐに謝りに行きましょうリュートくん!」

「はい」

 

 レーナがカンカンに怒っているのは殆ど初めて見るけど、可愛い……じゃなくて!! 思い出すと、確かに僕は一回も謝ってはなかった。問答無用の尋問があったのもあるけど、確かに謝っておくべきだった。

 そんなことを思っていると、目の前でアンナとレーナが目配せをしてから僕に話しかけてくる。

 

「「リュートくん(お兄ちゃん)、そんなに匂いを嗅いだりしたいなら、私達でもいいんじゃない?」」

「いや、確かにそ……じゃなくて今は謝りに行かないとダメなんだなよね?」

 

 見事に重ねられたその言葉にちょっと恐怖が顔を出した。いや、それは気のせいのはずだ。

 

「イオリちゃんも、これくらいの時間なら待ってくれる筈だよ!」

「そうですね、なんたってイオリちゃんですし」

 

 イオリさんに謎の信頼が置かれているせいで、若干僕がピンチだ。あや、ご褒美なのか? いや、やっぱり謝りに行く方が先だ。

 

「いやいや、流石にこれ以上時間をかけちゃわるいし、今すぐ謝りに行ってくるよ! それじゃあ!」

 

 正座から立ち上がり、そのまま部屋を出て訓練場へ……そう思っていた僕に声がかけられた。

 

「ちょっと待ってお兄ちゃん、お兄ちゃんだけじゃ心配だから私も付いていくよ。レーナさんは?」

「リュートくんが、イオリさんが言ってた『らっきーすけべ』っていうのをしないか心配なのて、ついていきます!」

 

 なんか断ったらヤバイ。そんな勘にしぶしぶ従って、僕は3人で訓練場へ向かっていった。

 

 っていうかイオリさん、レーナに何教えてるんだよ。

 


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