異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
くっ、これも全部テストと白猫とDies iraeが悪いんだっっ←完全に自分のせい
「はい、これで緊急クエスト完了です。あの、本当に何も無かったんですか? 魔物の移動の跡とか痕跡とか……」
「数匹魔物が残っているだけで、本当に何もありませんでした。それこそ突然現れたみたいに……」
僕はギルドカードを返してもらいながらそんな事を言う。起きたイオリさんかキレたりしてたせいで最後は若干グダグダになっちゃったけど、僕はきちんと今回の異変の調査のクエストを受けていた。
それにしても、今回の魔物は本当にどこから来たんだろう? どこにも穴とか転移の魔法陣とかも無かったし……そんな事を考えていると、ギルドの受付嬢(城門に出張中)の人が話しかけてきた。
「了解しました。えっと……その女の子が例の同行者の子でいいんですよね? 随分と安心して眠っているようで何よりです」
先程までの事務的な雰囲気と違って、柔らかい雰囲気で受付嬢の人が言ってくるので、改めて自分の背中でスヤスヤと寝息を立てている
「確かに、本当に気持ちよさそうに寝てますね。無防備過ぎるとは思いますけど、魔力も体力も使い切っちゃったみたいなんでしょうがないんでしょうね」
「ちゃんと守ってあげるのが貴方の役目だと私は思いますよ。そんな小さな子じゃあ、攻撃魔法1〜2発で魔力が切れちゃいますもんね」
ふふふ、と小さく笑ってる受付嬢の人を見て、改めてイオリさん……というか転生者は規格外なんだなぁと思った。あとロリは絶対に守る、そんな事は当たり前じゃないか。
「とりあえず、この子を早く寝かせてあげたいのでこれで失礼しますね。あ、因みに明け方の流星を降らせたのがこの子の魔法ですから」
なんとなくイオリさんが凡人扱いされてるのが嫌だったので、去り際にそんな事を言ってみた。
イオリさんからする謎のいい匂いと、背負っている感触を感じながら城に向かって歩いている最中、後ろの城門の方から叫び声が聞こえてきた。
◇
「イオリさん、着いたよ〜お城」
「んぁ……ふぁ……ふぇ?」
私は、リュートさんのそんな声で目を覚ました。って、なんか最近同じ事を言った気がするけど、まあいいか。
「おはよぉ……リュートしゃん」
まだ半分寝ぼけながらそんな事を言い、リュートさんにおんぶされた状態のまま首をブンブンと振って眠気を飛ばす。リュートさんが鼻血を垂らしていたが気にすることではないだろう。
「リュートさん、運んでくれてありがとう。降ろして」
「ん、了解」
私がそう言うと、リュートさんはしゃがんで私が降りやすいようにしてくれた。……手馴れてるな。
とりあえずそのまま降りると、リュートさんが心配そうな顔で私に聞いてくる。
「えっと、あのヴィマーナの上での事は許してくれたって事でいいの?」
「まあ、レーナさんとアンナさんくらいにしか言わないでおくよ」
「それじゃあ約束が違」
「考えてもみてよリュートさん」
リュートさんの反論に覆い被せるように、私はついさっき気づいた大変な事を言う。
「完全にブラコンなアンナさんと、リュートさんスキーなレーナさんに今回の事を知らせなかったら多分私達両方……」
なんだろう、般若が見える二人が地の果てまででも追いかけてきそうな感じがするんだよ。私の第六感が黙ってちゃいけないって言ってる。リュートさんも私の言いたいことに気がついたのか、ゴクリと唾を飲んでいる。
「確かに……そうだね。はぁ……うん、僕が怒られてくるよ」
リュートさんが何か諦めたような表情をして、お城の中へ入っていこうとする。うーん、なんかこっちが悪いような気になってきた。等価交換じゃないと言うかなんというか……
「あ、そうだ。リュートさん、こっち向いてちょっとしゃがんで欲しいな」
「ん? 別にいいけど……」
「ていっ!」
丁度いい高さまでしゃがんでくれたリュートさんに、正面から抱きついてみた。 んー……別にドキドキとかはしないから、まだ本格的に女の子にはなってないんだなぁ、私。
「え、何? いや、嬉しいけどっていうかなんか柔らかいしいい匂いががががが」
「なんかリュートさんに迷惑ばっかりかけてたからやったんだけど……」
鼻血が私にかかりそうなくらいドバドバ出てるし、ガクガクとした振動が伝わってくる。お礼には……なったよね?
「それじゃあ私は訓練場で色々やってるから、用があったら呼んでね〜!」
5秒くらい抱きついた後、ピシリと固まってしまっているリュートさんから離れ、そのまま私はパタパタと訓練場に走っていく。
「さて、まだ時間的にはお昼頃だし、装備類の強化にドラゴンのカードも試してみたいし、今日中で終わるかなぁ?」
というかリュートさん本当に頑張ってよ? 私般若に追い回されるなんていやだからね?