異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「ハッ! い、いやな夢を見た……」
私は翌日の朝、日も昇り切らないような頃、嫌な夢を見て飛び起きた。全く、三人ずつのクラネルさんとリュートさんにかごめかごめされるとか……。
私の隣にはレーナさんがいるし、リュートさんは隣のベッドで寝ている。完全に夢だ……よかった。
「こんな朝っぱらから……また鍛冶?」
「怖い夢見て起きただけだよ……しに行こうとは思ってるけど」
地味に大きな独り言で、リュートさんを起こしてしまったようだ。私の趣味嗜好を把握してる上に、寝起きで言い当てるとか……なんてロリコンだ。
「ふわぁ……いってらっしゃい。けど、五月蝿くしたら迷惑だから、しないように」
「はぁい! 行ってきます!」
私はそう返事をしながら部屋を出た。なんだろう、一瞬リュートさんがお父さんみたいな雰囲気が……うーん、なんて言えばいいのか分からない。
「まあ、そんな事はどーでもいいか!」
そんな事を言いながら、いつ入れたか分からない串焼きを取り出して食べながら私は訓練場へ向かった。一応、異次元収納の中は時間が止まってた筈だから大丈夫だと思う。
「はむ、
ストレス解消には、趣味に没頭するのが一番だよね!
「♪ 〜♪♪ 〜」
訓練場についた私は、隅の方でいつも通り炉を鼻歌混じりで作り火を入れる。火種は勿論神様からの手紙だ、だってよく燃えるんだもん。
(今までの事を考えると、問題には絡まれやすいけど一回大きな問題があった後はしばらく安全だもんね……)
実際オークや、オリハルコンティラノの事件があった後はしばらく平和な日々が続いていた。今回もミーニャちゃんの事があったから、しばらくは安全にやりたい事が出来ると私は考えてる。
「準備完了ー! やりますか!」
目の前にはすぐにでも鍛冶が出来る温度の火が燃えている炉、金床、私はワンピース姿でランドセルを背負い、右手には最近めっきり武器として使うことのなくなったハンマーを握っている。
因みにこのランドセルは、カリヨンを作っていた時に余りにもすぐ私のMPがなくなり気絶しそうになったのでついでに作った物だ。中にはクリスタライトメタルがMPを込めた状態でギッシリ詰まっている。かなり重いが、私の最大値の何倍ものMPが込められているので鍛冶作業中に気絶なんて事は起きない。
「まずは結構破損してるマイク剣の修復と強化を──」
そう言って私が剣を取り出した瞬間、大きな鐘の音と物凄い焦りの色を含んだ声が聞こえてきた。
『緊急警報! 緊急警報! 突如出現した大量の魔物が東西南北からシヤルフに接近しています! クラネル様、並びに冒険者の皆様! 準備が完了次第、直ちに迎撃して下さい!』
急速に鍛冶を目の前にしてワクワクしていた気分が消えていく。何? あんなフラグ染みた事を言ったからこうなったの? というかこんな朝早くに起きてる人なんているの?
「それよりも、誰だよ
先ほどのワクワクの裏返しのように込み上げてきた怒りに釣られて、私の周りの空間に小さなスパークが走り、風が渦巻き始めた。そんな事は無視して私は考える。
「クラネルさんの家は街の東、ギルドは西で、ここは北。南には何があるかわからないけどまあいいや、とりあえず私は、ここの魔物を殲滅してやる。ふふふ……ふふふふ……」
私はそのまま幽鬼のような足取りでお城の裏手へと歩いていった。後で聞いた話だけど、ギルドと城門は24時間体制なんだって。
◇
「えっと、お嬢ちゃん? 今からここは凄く危なくなるから、早くお家に帰った方がいいよ? お母さん達も心配してるだろうからね? そんな格好していても、凄く危ないんだぞ」
お城の裏手から出発し北側の城門に着いた時、そこは少ない衛兵さん達が集まり警戒していた。そしてそれを見ながら城門を越えようとしたら、久し振りに着る冒険者スタイルで来たのに全身鎧の隊長っぽい人に止められた。今ここ。
むぅ、イラッときたからちょっと暗いこと言ってやる。
「私、家族なんて居ませんし、これといって家って呼べる場所も無いです。それに私、こんな見た目でもランクBの冒険者なので、戦力にはなれると思います。今はどんな状況ですか?」
少なくともこの世界ではね。まあ、保護者ならリュートさん達になると思う。それよりも、今は
「あ、あぁ、すまんな、こんな事を聞いてしまって」
「いえ、別に気にしてないです。それよりも状況は?」
「まだ猶予こそあるが、数十種類の魔物からなる大集団がシヤルフに四方から進行中だ。もう城門の上からは土煙が見える程近くだ。主要な実力者は戦争へ行っているし、こんな早朝だ、ほとんど人も集まらない。俺達の役目は、クラネル様が来るまでここを絶対に死守する事だと思っているよ」
どう八つ当たりしてやろうかという事ばかり考えていたが、若干諦めたように笑いながら言う隊長さんや、それにつられて笑うこの場に集まっている人達を見ていたら、そうもいかなくなる。ん、ちょっと待て、クラネルさんが来るだと?
「自分達でどうにか出来るとは思わないんですか? 皆さん強そうですし」
「はは、それは無理って話だよ嬢ちゃん。侵攻してきている魔物にはSランクの
「そう……ですか」
そうか……このままもたもたしていたらあのロリコンさんが来るのか……早くなんとか……絶対になんとかしないと、また色々される。あれ? なんかもっとシリアスな事を考えてた筈だけど……そんな事よりこっちの方が大事だ!
「
「待て! 嬢ちゃんの言ってる竜と俺の言ってる龍は──」
なにやら引き止められるような言葉が聞こえた気がしたけど、クラネルさんが来ると分かっている以上ゆっくりなんてしてられない。主に私の個人的安全の為に、とっとと退場してもらわないとね。
そんな事を思い城門を駆け上がりながら、私はカリヨンの時にランドセルのおまけで作った、小さな可愛らしい色の杖状のペンダントを取り出す。
「闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ、契約の下、イオリが命じる、レリイィィズ!」
落とすとヤバイテストが控えている為、あと1話投稿したら1週間ほど投稿停止予定です。流石に留年はしたく無いので。