異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
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「ふぇ……ぐす……ひっく……もうずこし早く助けてよぉ……。ほんとに、ほんとに怖かったんだからね!」
「あーよしよし。僕が悪かったって」
本当に、リュートさんが助けに入ってきたタイミングはギリギリだった。血走った目のクラネルさんが私を押し倒し、怪しげな薬品(解析によると媚薬)を私に嗅がせる寸前だった。無駄に高い五感のせいで若干吸っちゃったけど。身体がムズムズするし火照ってるのは、多分そのせいだろう。
因みに決め手は、『これ以上やると! クラネルおねえちゃんとなんて、一生口きかないもんね!!』だった。
まあ、それは置いておいて。今の私はリュートさんにおんぶされている格好だ。そんな私達を、大半の人は微笑ましいものを見るような眼で見ているが、一部の人はリュートさんに奇異の眼を向けている。
「気に入らないんだよなぁ……」
「え? 何が?」
ヴォダンでえーと……ベートじゃなくて、バイトさんか。そう、バイトさんが気にしていたみたいに、獣人にとって耳がないのはやっぱりおかしいようだ。最近は、ミーニャちゃんにそのお姉さんとか、
思い返せば、いつも私かレーナさんがくっついていたおかげか優しい目線の人が多かったが、リュートさんに嫌な目線を向けている人も少なからずいた。なんで気づかなかったんだよ、私。
「周りの人のリュートさんを見る目。今は私を背負ってるからこうだけど、一人だと相当じゃないの?」
「あー……なるほどね。まあ、レーナを助けた時にこうなるのは覚悟してたから」
そうリュートさんが苦笑を浮かべる。確かにそう覚悟してたならいいのかもしれないけどさ、だけどさ!!
「曲がりなりにも自分の命の恩人が、こんな眼で見られてるとか許せないんだよぉ……リュートさんが嫌じゃないなら、コレと同じ原理で耳くらいなら生やせる物作るけどどうする?」
そう言って私は自分の銀狼の腕輪を指差す。今こそ変身のEXスキルを使っているが、かなりお世話になった腕輪だ。魔法とかの隠しスキルは無理だけど、獣耳を生やすくらいの機能なら再現できるはず。勿論、本人の同意があればだけど。
「治すっていう話なら断ってたけど、それならお願いしようかな?」
「よし来た! って言いたいところだけど、治すなら断ってたんだ。なんで?」
「この無くなった耳は、僕が未熟だった証だからね。慢心王の能力なんてものを持ってる今、慢心は敵、実際二人とも無事では逃げ切れなかった訳だし。まあ、格好良く言うと自分に対する戒めだよ」
「ほへぇ……あ、そろそろ降ろして、自分で歩く」
そんなにかっこいい感じのことを考えてたのかと思いながら、私は背中から降ろしてもらう。もしかしたら、クラネルさんが治さないのもそういう理由が……いや、幼女じゃないからか。うん、間違いない。
「かっこ良く締めたのにスルー……まあ、いいよ。けど、そろそろどこに向かってるのかは教えて欲しいな」
「言ってなかったっけ? 鍛冶屋だよ鍛冶屋」
「イオリさんが、鍛冶屋……だって?」
リュートさんが心底驚いたような顔をしている。そんなに私が鍛冶屋によるのが信じられないの? あ、8歳がそんな物騒なとかは今更なしね。
「まあ、武器防具を売りに来たんだよ。今の私の全財産がそれだよ?」
私はそう言ってリュートさんに取り出したギルドカードを渡す。それにはこう書かれているはずだ。
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名前 イオリ・キリノ
性別 女
年齢 7
生まれ 不明
ランク B
ゴールド 54,350
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「大銀貨5枚と銀貨4枚、それに大銅貨と銅貨が少ししかないって……何があったのさ」
「えー……心当たりないんだ。じゃあヒント①シヤルフに来るまでの間、料理をしてたのはだ〜れだ?」
「いきなりクイズか。まあそりゃあ、イオリさんでしょ?」
そう言うリュートさんに頷く。まずは正解だね。
「じゃあヒント②普通の旅の食事は?」
「干し肉とか、固く焼き固められたパンとからしいよね。まあ、僕とかイオリさんみたいに収納できるスキルとかアイテムがある人は違いみたいだけど。でも、その日狩った魔物とかを食べてた筈だし、食材費じゃないよね?」
「そうだよ。ラストヒント、料理の味付けはどうだった?」
「懐かしい日本食みたいな味付けで、スパイスとかも効いてて……もしかして、香辛料とか調味料?」
「正解! 特に胡椒が高いのなんの……」
私は大きくため息を吐き頭を押さえる。地球の歴史だと中世くらいでは胡椒が金と同じくらいの価値で取り引きされてたって話だったけど、こっちの世界でもかなり高い。元々持っていた分を買い足してたらあっという間に金欠になった。
「オリハルコンティラノの報酬も三等分だったしね。最終手段に出た訳」
「でも、それなら僕はいらなかったんじゃないの?」
リュートさんがそんなことを言ってきた。むぅ……少し考えれば分かるだろうに。
「ねえリュートさん、私の年齢は知ってるよね?」
「身体は8歳精神的には15歳だよね?」
「うん、だからね。保護者同伴じゃないとせいぜいが盗品扱いだよ、どうせ。だからお願いね、おにーちゃん!」
「いや、まあ、うん。分かったよ……」
そんなことを話しながら、私達は鍛冶屋に入っていった。
……うん、この最終手段はかなり使えるかもしれない。というか緊急時以外は止めとこう。しめて265万と8790ゴールド也。
アイスソードしゅごい……