異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「そういえばさ、リュートさん。ミーニャちゃんとかレーナさんがやってる勉強って、どんなもんなの?」
元男とリュートは知っているので、多少荒っぽい……とまではいかなくても、いつもと違う口調で話しかける。気を抜けるっていい事だよね。
「ん〜? 確か今は足し算引き算……まあ、加減法をやってるって昨日聞いたかな。『やっと4桁の計算が出来るようになった』ってレーナが嬉しそうに言ってたからね。なんでそんな事を?」
「いや、まだ私は安静にしてろって言われてるじゃん? だから歴史とかなら混ざろうかなって思ってね。この見た目だし」
獣人の国の歴史、実はそこそこ気になっていたんだよね。カンザキ家とかモロ日本の苗字だし。色金あったりしないかな?
「へぇ、イオリさんが鍛冶と戦闘以外に興味を持つなんて……今日は槍でも降るの?」
「や、槍が降ってくるのはもう勘弁かなぁ……」
「そういえば、槍の雨で死にかけてたよね……ゴメン。えっと……ある程度の歴史なら説明するけど? ただ見張ってるなんて暇だし」
「マジで? ありがとう!」
私は、対ロリコン奥義・にぱー☆を繰り出しながら言う。不謹慎な事言ったお返しだ!
「う、うん……中身が男って分かっててもこれは……」
何か返事をした後に言ってたようだが、私にはよく聞こえなかった。でもリュートさん、鼻血出てるよ鼻血。
そんな事を話してるうちに、どうやら訓練場に着いたようだった。
「それで、何するつもりなの? 訓練場に来たのはいいけど、運動はしないんでしょ?」
「んー、ちょっと作りたいものがあるんだけど、部屋じゃ作れなさそうだったからね」
「何作ろうとしてるの?」
「えーと、なんて名前だったかな? カリヨン……だったはず」
「何それ?」
前世? でいいのかな? ともかくこっちの世界にくるほんの少し前に読んでた本に出てきたなんか凄い剣だったんだよね。
たしか23個以上の何かの効果を持った護符だったか金属片だったかを纏めて出来ている剣で、変な効果を持ったのが化学反応を起こして凄いことになってて、相手の力を利用するんだとか何とか……特殊能力みたいなのも有るのはあったけど、『コンディションを最善に保つ』くらいだったからエクスカリバーみたいなのはないはずで、問題は自己学習して特徴が出てくるとこみたいなのがあった(気がする)とこだけど、それは女神様が叩き込んでくれた情報に出来そうなのがある。
「うーん、なんか小説に出てきた凄い剣! 宝具なんて作れないけど、量産型ってのもあったしこっちなら出来るかもしれないなって」
「よく分からないけど、そんな曖昧なのに作れるの?」
「多分頑張れば作れるはず! まあ、結局手当たり次第になるからついでに歴史も聞けたらいいなって。とりあえず金属バンバン出していくから、部屋じゃ出来なそうだしさ!」
流石に話を聞きながら魔法陣を刻み続けるとか出来っこない。ただ、魔法で金属を作って積んでいくだけなら話を聞きながらでも出来るっぽいし、そんなに失礼じゃないと思うんだ。
「まあそれならいいんだけど、立ったまま話すの?」
「それはやだから、はいベンチ」
「毎回思うけど、イオリさんはアイテムボックスに何入れてるのさ……」
そんなリュートさんの呟きを無視して取り出したベンチに私はドシっと座る。足はつかないからブラブラさせるしかない。
「まあとりあえず座ってよ。歴史、聞かせてくれるんでしょ?」
「うん、じゃあ何が知りたいのか質問どうぞ?」
背後で《鉱石精製》から進化した《金属精製》で頭に叩き込まれた金属を積みながら、若干得意げな表情をしているリュートさんに尋ねる。
「じゃあさ、なんであのユグドラシル? の下にこの国が作られたのか。誰が建国したのかだね。所謂国の成り立ち」
「この国を作った人は初代獣王・ライオンズって人だね。で、その人がユグドラシルをシンボルとして街を作り上げていったらしいよ。まあ予想は出来てるだろうけど、ユグドラシルの葉や枝にはかなりの回復の力が宿っていてるからね、それをライオンズは利用したんじゃないかな?」
「成る程ね……確かにそんな木があるんなら建国もし易いか。ライオンズって、ひょっとしたら転生者だったりして」
「それは直接ミーニャ様とかに聞けばいいと思うよ」
それは、暗に認めてるって事でいいのかな? まあ、直接聞けって言ってたし後で聞きに行けばいいか。
「えっと、それじゃあ次ね。なんで時々獣人でも100%そうですって感じの人と、私とかリュートさんみたいに獣耳と尻尾だけって人がいるの? 遺伝?」
「多分そうだとは思うよ。偶に代々僕達みたいな方のタイプの人達から、バイトさんみたいな人が生まれてくる事も有るらしいから、若干分からないけど……」
「う〜ん、先祖返りとか? 因みにそんな風に生まれてきた子はどうなるの? まさか捨てられたり?」
「それは滅多に無いかなぁ。周りにもそういう人は居る訳だし、男女の差くらいにしか意識されて無いかな」
「ほへぇ〜……そこはならではって感じか、安心だね。あ、はい飲み物」
私はリュートさんにリンゴっぽい果物を絞ったジュースを渡しながら、そう納得する。私はMP回復ポーションを飲んでいるが、青汁みたいな味だからあんまり美味しくない。
「知りたい歴史はこれぐらいだし……あ、そうだ!」
「概要だけで終わっちゃったよ……で、何?」
「リュートさんの苗字ってカンザキだったよね?」
「そうだけど、何かあるの?」
そこで気づけないとは、ぬかったなリュートさん!
「リュートさんの家に、ヒヒイロカネとかあったりする!? 色金の方の!!」
「無いよ」
「そんな死んだ魚みたいな目で見ないでよぉ……」
リュートさんに、色金の方の話は禁句だったみたいだ。あ、ヒヒイロカネって金属自体はあるみたいだよ。アリアみたいな能力は無いみたいだけど。