異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第11話 そう、リュートの師匠は

 空から見下ろすシヤルフは、とても綺麗な光景だ。木造建築が並ぶそれは日本を思い出させ、そこを沢山の獣人達が動き回っている。この光景をいつか二人にも見せてみたいなと思いながら、シヤルフ郊外に建つ真っ白な建物に向かっていく。

 しかし、他の場所に比べると、かなりの年季が感じられる……悪く言えば、とてもボロっちい建物だった。それこそ、まるで廃墟のように。

 

「師匠! いますか!? リュートです!」

 

 僕はバンバンとそのドアを叩く。しかし予想通り返事は無かった。いつもならもう少し待ったりするのだが、今は時間が無い。

 

「入りますよ!」

 

 そう声を出し、鍵のかかっていない扉を開けて家に入っていく。五感超化のお陰でいるのは分かっている。

 

(相変わらず無用心だな……何か盗まれたらどうするつもり……あ、消されるのか。まあ、そもそもここに盗みに入っても師匠には勝てないだろうからいいのか……)

 

 そんな事を思いながら病院の匂い漂うその中を掻き分け、記憶の中にある地下への階段へ向かって歩いていく。そして、閉まっている地下へと通じる扉を見つけた。

 

「よっこらせっ! と」

 

 そう言って実験室に繋がる扉を開けると、中から途轍もないアルコールの匂いが漂ってくる。

 

「あー……またか」

 

 そう言って僕は地下へと梯子を使って降りていく。あの人、偶にヤケ酒するからなぁ……地球で言うスピリタスか日本酒で。1回付き合わされたのは嫌な思い出だ。

 

「うえっ、臭……」

「悪かったな! 臭くて」

 

 地下への階段を降りていると、不意に前方からそんな声が聞こえてきた。

 現れた人物は、水色の髪を長く伸ばし額に大きな紅い宝石のようなものが付いている白衣の女性……まあ師匠だった。

 カーバンクル。それがこの人の獣人としての種族だ。確か進化というものをしたらしい。

 

「全く……呼ばれたから出てきてみりゃあ、お前かよリュート」

「お久しぶりです、クラネル師匠」

「私の言う事無視して出ていったやつに師匠呼ばわりされたくなんかないね。で、何の用だ? まさか修行をやり直すとか言うのか?」

「いや、そんなワクワクした顔で言われても……」

 

 因みに師匠は医者で戦闘狂だったりする。この世界では地球とは違って回復魔法を使える人がなるものだけど、この人が医者になったのは合法的にロリショタと触れ合えるからだったりする。

 最近急患以外の対応は無いと聞いていたが、腕自体は凄いのでこうして頼みに来たのだ。

 

「今、現在進行形で一緒に旅をしてた仲間が死にかけてるんです。治療、お願いします!」

「ヤダね」

「師匠の好きだった狼人族のかりんとうとお酒持って来たんですが……ダメですか?」

「お前、昔もそうやって酒を持ってきて私に治させたじゃねえか。しかも男を。もう物には釣られねえよ」

 

 昔の事を覚えていた僕は、なんとなく断られるだろうとは思っていた。だから僕には被害は出ないが、最悪の最後の切り札を切る。

 

「師匠、治すのが男じゃなければいいんですよね?」

「へっ、それでもまだ足んねぇよ!」

「それが8歳の幼女でも?」

 

 僕はニヤリと笑い言う。内心は罪悪感でいっぱいだが。

 

「あ?」

「それに僕は結構な間旅を一緒にしています。師匠の言う事に、なんでも一つ……とまではいかないけれど、本人の許容する範囲内までなら言う事を聞いてもらえると思いますよ? 何せ命の恩人になるんですから」

 

 そこまで言い切ると、師匠がいきなり僕の腕を掴み走り出した。

 

「その事を早く言いやがれこのバカ弟子が!! そんでもってとっととお前のヴィマーナだせ! 行くぞ!」

 

 そう言ってあっという間に玄関に停めてあったヴィマーナに飛び乗り、バンバンと叩く。そして続いて僕も乗り込む。うわ、ヴィマーナヒビ入ってる。

 そう、この師匠は、僕がロリコンになった原因のどうしようも無いロリコンだった。YesロリータGoタッチなタイプの。

 

(イオリさん……ごめんなさい)

 

 そんな事を思いながら、勢いよくヴィマーナを出発させる。そして短い飛行時間の中、師匠が聞いてくる。

 

「で、容態は?」

「はい。最後に見たときには、HPが残り38で多数の状態異常にかかっていて、呪いの武器が突き刺さってました。今は僕の妹とミーニャ様、それとラファー様が治療に当たっていて、本人の回復系のスキルも多いので死んではいません」

「はぁっ!? 今向かってる場所は王城だろ? なんでそんな戦場でも見ねぇような状態になってんだよ!?」

 

 師匠が驚いた顔をする。まあ、僕も初めて見た時はビックリしたしね。王女様二人掛かりで治ってなかったからね。

 

「それが……全く分からないんです。ミーニャ様は知ってると思うんですが、その子……イオリさんって言うんですけど、治療にかかりっきりになっていて。とりあえず僕は師匠を急いで呼びに出たので事情は全く知らないです」

「……確かにそりゃあ、この国で確実に治せるのは私しかいねえだろうな。ナイスだリュート、よく私のところに来た」

 

 ヴィマーナを飛ばしながら、この時ばかりはこのロリコンな師匠がいて良かったと思うリュートであった。

 

 いやほんと、何を師匠に要求されることになるのやら……

 




本編では話せない部分
クラネルの家がシヤルフ郊外にあるのは、昔学校の近くにクラネルの家があった時、ありえない程白衣の変質者が出没したから。保護者からのクレームで、強制的に郊外に家を移された。

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