異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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思ったより長めになった。


第9話 強襲!!

 花の前に座り鉛筆で絵を描いていた私は、ふと近くで魔力がいきなり現れて、じっとりと観察されているような気配を感じ顔を上げた。そこには、カラスのような鳥が旋回していた。

 

「どうしたの?」

 

 そのことを不思議に思ったのかミーニャが聞いてくる。

 

「ちょっと嫌な感じがして……なんだろうなって思って」

 

 そう言いながら魔眼を使い、そのカラスに向かって《超解析》をかけると、眼にこんな情報が浮かんできた。

 

 ===《式神/音速烏/状態 魔法付加》===

 ===《ユニーク魔法/威力 不明/範囲 不明/視覚転送/脅威度 無し》===

 

「え?」

 

 ちゃんとそれが見えたのは良いのだが……それを見た時、不覚にも固まってしまった。なにせそういう能力は、小説だと基本的には召喚された勇者などが持っているスキルだからだ。そんなものを飛ばしてくるのは、監視かそれとも……なので鎌をかけてみることにした。

 私は手に持っていた紙と鉛筆(仮)を傍らに置き、魔力の見える場所に指をさし言う。

 

「そこの勇者! 貴様! 見ているなっ!」

「イオリちゃん、いきなり何言ってるの?」

 

 そんなミーニャちゃんの声を聞き流しながら反応を見る。私がそう言って指をさした途端カラスがポフンと消え、魔力の塊っぽい何かが残った。そして、眼に赤い線が走る。

 ………………ミーニャちゃんの方に向かって。

 

 ===《ユニーク魔法/威力 不明/範囲 不明/転送・剣/脅威度 大》===

 

(嫌な予感の方が当たった!)

「ミーニャちゃん、私の後ろに!」

 

 そう言い放ち私は、異次元収納から鎌剣とBraid of ……長いからマイク剣でいいや……を取り出し構える。それとほぼ同時に多数の武器が目の前に現れた。これが転送ってやつなんだろう、どこのバビロンだ! 遠隔っぽいけど。

 

「きゃぁぁぁぁっ!!」

「ちっ!」

 

 未来予測が映す赤い線の内、私とミーニャちゃんに当たりそうなものだけを、両手に持った鎌剣とマイク剣で叩き落としていく。

 だかいかんせん数が一人で守るには多すぎ、私にチラホラとかする。1日で2つも服が駄目になりそうだ。

 

「緊急事態! ミーニャちゃん、それ着けといて!」

「え、え!?」

「早く!」

 

 異次元収納から何時もの私の防具一式を、ミーニャちゃんの前に放り出す。まともな鎧とかの着かたなんて分からない私が作ったやつだ、どれも簡単に着れるだろう。スキルてんこ盛りの私より、ミーニャちゃんの方が優先だ。

 さっきの解析の時、私はうっかりミーニャちゃんにまで《超解析》のスキルを使ってしまっていた。その時にうっかり見てしまったステータス、そこにはハッキリと【王族】という文字があった。守らないと私、極刑だね。首ポーン。折角できた同年代の友達を、怪我させたりなんてしたくないっていうのもあるけどね。

 

「《大樹の守り》!」

 

 剣や槍、斧などを弾き飛ばしながら私は魔法を発動させる。私の後ろにいるミーニャが緑色のオーラに包まれ、周りに木が球形に集まる。大樹の守り、中に居る人を回復しながら攻撃も防御するという便利魔法だ。木のある場所でしか使えない上に、その木に能力は依存するっていう欠点はあるが。そこらへんの雑草だとゴミだった。

 

「これでっ!!」

 

 降り注ぐ武器達の量と勢いが増す。流石にこの量の武器が一気に当たったら《大樹の守り》が壊れてしまうので、全力で弾いていく。

 弾いた武器が近くの地面(枝)に刺さり、どこぞの固有結界の中のようだ。

 

(まずいね……全く終わりが見えない。早くどうにかしないと私のスタミナ切れで終わりか……)

 

 武器を弾きながら周りを解析し打開策を探す。そちらに意識を割き始めたため、私の被弾率が上昇していく。

 思考加速 LV 4 のスキルをフル活用していてもなおそれなので、前に採取していた《加速茸》を食べる。私の見ている世界の動きが、更に一段階遅くなった。

 

(さっきの解析結果には転移じゃなくて転送って出ていた……ならこの場に出現させてる訳じゃなくて、ゲート的な何を開いてこの場に送り届けているはず! というか誰か来いよ!)

 

 ──スキル 思考加速 のレベルが5になりました──

 ──スキル 並列思考 のレベルが4になりました──

 ──スキル 情報処理 のレベルが4になりました──

 

 自分の身体の動きがとても遅く感じる。私のMPが無くなる前に誰かが来ると信じて、私は魔法を発動させる。

《風纏》

 どこかのエアリアルのように私に風が纏わりつき、身体が羽根のように軽くなる。マイク剣は、マイクというだけあって音……風系魔法の強さを上昇させてくれる。私が纏うのは、いつもと違ってもはや暴風だ。

《雷纏》

 ティラノ戦の倍以上のMPを込めて発動させたそれで、今度は私にバチバチと電気が走り無理矢理に身体能力を上昇させる。鼻血が垂れてくるのを感じるし、体の所々から出血するのが分かるが、これでようやくいつもと手足の動きが一致する。

《リジェネレイト》

 私が今幾つも受けている切り傷、自爆して血が出ていた部分がゆっくりと治っていく。いつもより回復が遅いが、武器に塗られていた毒の所為だろう。

 

「ハァァァァァッ!!」

 

 次々と飛来してくる武器を鎌剣で弾き、マイク剣で受け流し、蹴りを入れて逸らす。短剣のような小型の武器群が来れば電気の壁で軌道を歪ませ、中型の武器の雨は爆発で吹き飛ばす。

 自分の持つスキルをフル活用し周りの解析と迎撃を続け、飴を嚙み砕きながら反撃の策を練っていると、ピシリ と嫌な音が背後から聞こえた。

 焦って振り返ると《大樹の守り》に弾き損ねた多数の武器が突き刺さり、ひびが入っていた。そして、今までとは何かが違う赤黒いオーラを纏った刀が頭を覗かせている。

 

「ミーニャ!」

 

 あれには耐えられない、何故かそう私にはハッキリとわかった。私はそう叫び、残りのMPを無視する勢いで魔法も使い全力で移動する。そして、《大樹の守り》を一部解除し中に突入し、ミーニャを抱きかかえる。

 そのままその場を離脱しようと足に力を込めるが、ガチャンッ! と音が鳴って、つんのめり倒れてしまう。

 

「きゃあっ!」

(何!?)

 

 足元を見ると、無骨な足枷のような物が空間から飛び出し私の足に付いている。この時をチャンスと見てか、刀が発射される。私もろとも、串刺しにする腹づもりなのだろう。

 

「そんなのっ、させない!!」

 

 私は左手に纏っていた風を集め突風を発生させ、ミーニャを吹き飛ばす。右手では《エクスプロージョン》の周りに小さな金属を精製した物に雷を使い加速させ、今しがた刀が飛び出してきた穴へと打ち込む。

 

「《リリース》!」

 

 私が放った魔法が炸裂するのと、私に刀が突き刺さるのは、ほとんど同じタイミングだった。 穴の向こうから爆音が届き、こちらを見ていた魔力が揺らめき……そして消えた。

 

「へへっ、ざまあみやが ゴホッ」

 

 決めようとした言葉は最後まで喋ることが出来なかった。最後の悪足掻きなのか、打ち損ねていた小型〜中型の武器が動けず倒れている私に降り注いだからた。口から血が溢れる、どこか食道に繋がる場所か呼吸器系が傷ついたのだろう。

 

(死体撃ちとか……マナー守れし。あと失血ヤバイ……)

「《水……て……ん》」

 

 傷口が割っておいたポーションに包まれる。これで失血死はないはず……敵っぽい魔力も消えた。

 頭に響く無数の怨嗟や呪う声、それは明らかに最後の刀から響いてきていた。

 

(罪歌かよっ!! ちょっと違うけど!)

 

 そんなツッコミのせいで力尽きた私が最後に見たのは、何かに祈っているようなミーニャの顔だった。

 犯人は、ゆうし……


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