異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第6話 獣王国・シヤルフ

 私達は【ギムレー】で一泊した後、予定通り【獣王国・シヤルフ】へと向かった。

 

「ねーリュートさーん。シヤルフまで後どれくらいー?」

「えーと、あの大きな木……まあ世界樹・ユグドラシルって言うんだけど。あの真下がシヤルフだよ。だから、あと数十分ってところかな?」

「ありー」

 

 リュートさんが指差す先には、先程から見えていた巨大な木がある。ふと、左眼の魔眼に千里眼のスキルがあったのを思い出したので、使ってみる。

 ん……んん? おお!? 

 

「見えた!」

「水の一雫?」

「違うわ! シヤルフだよ!」

 

 いつぞやの【リフン】の色々な建物混じっていた街とは違い、全て木造建築のように見える。瓦に当たる部分も木製に見える……不思議だ。それに川も流れていることが見え、自然をとても大切にしてる感じがする。

 

「へぇー。それも魔眼?」

「そうそう。凄い綺麗な街だね」

「やっぱりそう思う? 現代のコンクリートジャングルばっかり見慣れてるとね……」

 

 そうリュートさんが言い、その後ユグドラシルの説明を始めた。その内容をザッと纏めるとこんな感じだ。

 

 ・ユグドラシルは意思を持っています、貶すと養分にされます。

 ・人や魔族の状態で触ると、怒りを買って養分にされます。

 ・ただし、基本的には温厚? な性格で、獣王国を守ってくれています。

 

 その後の殆ど関係の無い愚痴を聞き流しながら、魔力操作の練習を始める。うん、正直面倒だから違う事に逃げた。

 魔力は私のイメージだと、理科の実験とかで作ったスライムだ。これを色々な感じで動かすのだが……これが予想以上に難しい。なんて言えばいいんだろう、指の第一関節だけを動かすような感じだろうか? どこぞのケイネスさんの銀色のアレをイメージすればいいのかな? 

 

 そんな事を《並列思考》で試しながら、私はさらに水の魔導書を読み始める。

 

 ──変装道具・銀狼族タイプの隠しスキルが発動します──

 ──水・氷属性適正極大化が発動しました──

 

 そんなメッセージが頭の中に流れ、私は魔導書を読み進めていく。

 

(木魔法の時とは、比べ物にならないほどよく分かる……凄いな、これ)

 

 感覚的には、木魔法の魔導書をオールドイツ語の小説と言ったが、水魔法の魔導書はひらがなカタカナのみで書かれた小説みたいな感じだ。

 

 ──スキル《水魔法》を習得しました──

 ──変装道具・銀狼族タイプの隠しスキルが発動します──

 ──スキル《水魔法》がスキル《蒼海魔法》へと進化しました──

 

 お、おう。マジですごいなこのチョーカー型変装道具。これを売ってくれたシイラさんに感謝だけど……なんでこれが売れ残ってたんだろ? 

 そんなことを考えながら走っていると次第に城門が近づいてきた。

 

「あれが、シヤルフの城門?」

「そうだよ。あれが【獣王国・シヤルフ】の入り口だよ」

 

 ◇

 

 街に入ると様々な獣人が溢れていた。その中には私と同じ銀狼族もいる……ように見える。初対面の人に《解析》は使っちゃダメって言われたしね! 

 

「ほへー……」

「イオリさん、見とれてないで行くよ」

 

 そう言って手を引かれる。これ、見ようによっちゃ完全に親子な感じだよなぁ……身長的に。

 

「そういえばその会いに行くって人、前に言ってた師匠? それとも違う人?」

「まあ、違う人の方だね。一年は会ってないから、お菓子持って機嫌を取らないと何されるやら……」

 

 リュートさんは若干嫌そうに言っているけど、何か懐かしい物を思い出すような目をしている。うーん、婚約者とかじゃないだろうし……まあ、会えばわかるか。

 

「そういえば何処に向かって歩いてるの? さっきから」

「あれだよ」

 

 そう言ってリュートが指差す先には、何というか……木製の城から枝と葉っぱが生えているとしか言いようのない、奇妙な造形の建物があった。

 

「見てわかる通り王城。因みに、ウッドメタルっていう木の手触りのする金属で出来てるんだよ?」

「へぇ……その金属プリーズ!」

「そこら辺の鍛冶屋さんにでも行ってきたら? 多分売ってるよ」

「あー……じゃあ、その用事が終わったら買いにくるかな」

 

 何てことを話している内に、王城が段々と近づいていき何か問題に巻き込まれることもなく到着した。王城の入り口には兵士らしき人物が二人立っている。おそらく門番だろう。

 

「すみません」

 

 リュートさんがそう声を掛けると、二人の門番が手に持った槍を構え、彼を鋭い目つきで見つた。どういうわけか若干緩んだが、その後最初の厳しい視線が私達に向く。

 

「失礼ですがリュートさん。そのお二方は?」

「こっちの黒猫族の子は僕の彼女で、銀狼族の子は人間界からの帰りに拾った身寄りの無い子です」

 

 急にそんなことを言われたレーナさんは、顔を赤くして口をパクパクしている。まあ、私はそうするのが無難だろうね。ていうか敬語って、何してたのさリュートさん。

 

「ふむ、それではどうぞお入りください。ただし、その二人が入城出来るのは特例という事をお忘れないように」

「分かりました。それじゃあ行くよ、二人共」

 

 なんだかトントン拍子に話が進んでいったのでまだ理解が追いついていないが、とりあえず返事をして進んでいく。

 

「リュートさんって、一体何者? 普通王城にこんなに簡単には入れないだろうし……」

「昔、王女様の家庭教師みたいな事をしててね……」

 

 そんな風にリュートさんが過去話をしていると、遠くの方からダダダダダダダダという足音が物凄い勢いでこちらに向かってくる音と、叫び声のような物が聞こえてきた。

 

「お兄ちゃん?」

 

 私がそう聞き取り目を開けると、白と黒の物体がリュートさんの上半身に飛びついているところだった。

 

「グホッ」

「もう! 心配したんだからね! お兄ちゃん!」

 

 ゴロゴロと転がった後、リュートさんと同じ黒髪で白い白衣っぽい服を着た、レーナさんより少し小さいくらいの身長の少女がそう馬乗りの状態で宣言した。

 

「あ、お兄ちゃん! 起きて! 起きてよ!」

 

 あのぅ、気絶してる人にそれは酷だと思うんだけど……

 


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