異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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お気に入りの数がユラユラ揺れている……


第17話 決着

「《ピット・四重奏(カルテット)》!!」

 

 私はそう叫び、ティラノを中心として魔法を起動した。半径10m、深さ10m程の円形の大穴が開き、ティラノが落下した。

 四重奏(カルテット)とは言ってるが、ただの重ね掛けだ。テンションだ、エアロブラストをする訳でもないので気にしないでほしい。

 

「《エレキフィールド》《エアプレッシャー》《カーボンランス》! リュートさん、水と結界!」

「全く、よくこんなの考え付くよね!」

 

 雷魔法は、私と相性が良かったらしくすぐにレベル1 は覚えることができた。今は無理やり魔力を流して運用してる状況ではあるが、問題無く使えている。

 大穴の中のティラノが、絶えず周りで光る電気と次々に降ってくる水を鬱陶しそうにし、飛び上がる! その大ジャンプは大穴を飛び越え……なかった。

 《エアプレッシャー》の魔法で、上から空気ごと押さえつけられ速度が減衰し、結界に完全に押し留められていた。なお、この《エアプレッシャー》で使っている空気は、下から発生したものを使用している。

 

「よかった……破られたらどうしようかと思ったよ」

「そもそもこの作戦自体が無茶だと思うのは僕だけなのかな?」

 

 そんな事を言っている間にも、投入されていた水は、炭素の槍から電気分解され続け減り続けていく。そしてそこには、酸素と水素のガス……うろ覚えだけど、確か爆鳴気と呼ばれる、爆発する危険性のとても高いガスが残った。水素と酸素が2 : 1だったはず……まあそんなことは置いといて。

 

「これならいけるだろ! ブッとべファイヤァァァァァ!!」

 

 私がそう叫びながら放った火種に爆鳴気が反応し、視界が純白に染まり爆音が轟く。幾ら物理防御が高くても、若干魔法も混ざったこれならば! 

 

「やったか!?」

「リュートさんそれフラグ!」

 

 私がそうツッコミを入れた瞬間、爆発の中から振るわれた金色の尾がリュートを薙ぎはらう。私と違って尻尾直撃したリュートさんは、岩壁にめり込んでいる。

 爆発の中から飛び出てきたオリハルコンティラノは、全身をボロボロにしながらも生きていた。その目はまっすぐ私を見据えている。

 私の後ろには自分で開けた大穴、逃げ場はない。

 

「確か、武技なら通るんだったよね……」

 

 今まで明確なイメージが無く、安定していなかった私の武技。今完成させないと、間違いなく私は負ける……そして美味しく頂かれてしまう。

 

「グルルァァァァァァァッ!!」

 

 そうティラノが叫び、遅くはなったが私に向かって突進してくる。ええい、背水の陣だ! 

 

「ははっ、やってやろうじゃないか!」

 

 頭に思い描くのは一人のアニメキャラ。爪のように銀色のオーラが展開されている大鎌を旋回させる。

 

「終虐! Ne破aァ乱怒(ネバーランド)ォォォォッ!!」

 

 すれ違いざまに一閃。

 

 ──《武技》アルジェントスラッシュを習得しました──

 ──《武技》はあと7つ登録可能です──

 ──称号 装備制限解除 の効果で、残りの7枠が消滅しました──

 

 そんなアナウンスと、確かな手応えを手に私は気を失った。

 名前……違うじゃん……

 

 ◇

 

「……きて、お……てイ…………さん!」

 

 体を揺すられる感覚と共に、どこからか名前を呼ばれた気がする。靄のかかったような頭でそんな事を考えていると、今度こそその名を呼ばれた。

 

「起きて! イオリさん! 寝てないで起きて!」

「リュートさん……?」

 

 口から出たのは、思っていたものと違い掠れた声だった。気絶する前確か私は、ティラノを鎌で斬りつけて……

 

「そうだっ!! ティラノは? ティラノはどうなった!?」

「見てみなよ」

 

 そう言ってリュートが指差した先には、私が作った大穴が広がっていた。私は握ったままだった大鎌を杖のようにして立ち上がり、まだハッキリとしない平衡感覚のまま歩いていく。

 穴を覗き込むと(因みに所々ガラス化していた)三枚に下ろされたようなオリハルコンティラノを発見した。

 

「勝った……の?」

「勝ったんだよ! ユニークモンスターに」

「「よっしゃぁぁぁぁ!」」

 

 二人して歓喜の声を上げる。穴の中に飛び降り、ティラノを回収していると大変な事に気づいた。

 

「リュートさん、《精霊術》ってその腕輪みたいな媒体が無いと使えなくて、魔法も一部の種族しか使えないんだよね?」

「ん? そうだけどそれがどうしたの?」

「リュートさんの力はあの人達は知ってる、私は《精霊術》が使えない。銀狼族が使える魔法は水と氷系統。この状況、どう説明すればいいんだろう?」

 

 空気が凍りつく。先程まで顔文字が踊り、小躍りでもしそうな雰囲気だったのが、今はまるで真冬のようだ。

 

「確かに、ヤバイ。イオリさんが人族ってバレたら冗談抜きで食べられるかも」

 

 頭にバイトさんの顔がよぎった。ダメだこれは早くなんとかしないと。

 

「リュートさん、銀狼族の特徴教えて! 今から言い訳捏造するから!」

「わ、分かった」

 

 程なくして言い訳を考えつき、私は大穴を《鉱石魔法》で塞いだ。焦りすぎてMPが切れ、気絶したのは予想外だったが。

 


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