異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第15話 偵察

「はぁぁぁ……」

 

 オリハルコンティラノが現れたという場所に向かっている最中、リュートが大きなため息を吐いた。二人とも勿論フル装備だ。

 

「いきなりどうしたのさ? そんな重い溜息吐いたりして」

「レーナも狼人の人達も連れてこられないのは分かってるけどさ、たった二人でユニークモンスターを討伐するとなるとなんか不安でね……」

 

 確かに、所々大きく抉られた跡のある大岩を見ていると、確かに不安になるところはある。

 だけど私からしたら……

 

「ん〜……ダメだ。ユニークモンスターって分かってるのに、どーにも素材にしか思えない」

「本当、そのお気楽さが羨ましいよ……」

 

 そう言ってしばらく歩いていると、獣人に変装してから強化されている聴覚と、《気配感知》と《予見》がそれぞれ危険を知らせ、私は足を止めた。

 

「ん? どうしたのイオリさん?」

「……いる。多分あそこの大岩の裏辺り」

 

 私は、いつになく真面目な顔をしてリュートに警告する。すると、地図らしき物を開いていたリュートが、

 

「そこの奥、少し広めの場所になってるみたい。多分間違ってないよ」

「偵察、してこようか?」

「う〜ん……じゃあお願いするよ。二人で勝てなさそうなレベルだったら撤退する。それでいい?」

 

 リュートがそう提案してくる。まあ、もしそうだったら名残惜しいが仕方ないだろう。

 

「じゃあ行ってくるよ。《遮音》《風密操作》

《気配隠蔽》」

 

 私達が二人で来たのは、遠慮なく魔法を使うためだ。私の周囲から音が消える。姿も見えなくなっていることだろう。

 私が抜き足差し足で岩場を抜けると、金色に輝く物体が目に映った。

 そこは確かに少し広けた場所だった。元々は休憩でもする場所だったのだろう、元はベンチであったのだろう木片が散らばっており、奥に道が続いている。

 しかし今、そこには我が物顔で金色に輝く5m程の生物が存在している。

 二本足で立ち、手は短く、異常に発達した顎。全身に纏う鱗は金色に輝いている。そして、禍々しい赤色の蛇のような眼。それは、例えるならティラノサウルスだろう。

 幸い、大岩を齧っている事から今は食事中だと推測できる。

 

(ふぅ……このプレッシャー、オークエンペラーの時よりもヤバイや……)

 

 そんな事を思いながら《超解析》を使用しする。

 ______________________________________________

 

 オリハルコンティラノ ランク S

 種族 獣竜

 性別 雄

 LV 92

 ______________________________________________

 

 と、その時オークエンペラーの時よりも凄まじく強い殺気が私を襲った。咄嗟に飛び退いたその反応は、もう反射と言っていいものだった。

 先程まで私が立っていた場所は、次の瞬間飛来した岩塊によって爆散した。

 岩塊が飛来してきた方向を見れば、大口を開けたオリハルコンティラノがしっかりとこちらを見据えていた。

 

(嘘でしょっ!? 気配も臭いも姿も消してるんだよ!?)

 

 そう驚いている私を余所に、ティラノの口元に黄色い光が集まっていく。《気配感知》《予見》が猛烈な警告を発してくる。

 

「くっ」

 

 横に大きく跳んだのとほぼ同時に、ティラノの口元から岩塊が発射される。土系統の魔法で造られたと思われる岩塊は、先程と違い地面に当たると大きな爆発を起こした。私は爆発によってできた砂埃に紛れ、近くの岩陰に身を隠す。

 

「ははっ、これでダメージ通りにくいとかなんてマゾゲー」

 

 ゴリゴリと何かを砕いているであろう音がする。恐る恐る確認してみると、こちらに興味を失ったのか食事を再開していた。

 

「あれより2つは上のランクがいるのか……

 ってことは、あれを乗り越えないと話にもならないってことだよなぁ……」

 

 冷静になって考えてみると、今回見破られたのは蛇などが持っているピット器官などを持っていたか、魔力を感知するスキルを持っていたのかもしれない。ただの野生の勘だったというのは、勘弁して欲しいな。

 

 そんな事を思いながら、私は細心の注意を払いながら、リュートの下へ戻っていった。

 

「あイオリさん、どうだった?」

 

 私が魔法を解除すると共に、リュートが駆け寄り私に尋ねてくるが、私の普段と打って変わった真面目な表情を見て、

 

「イオリさんがそんな表情してるって……そんなにヤバイ相手だったの?」

「……うん、ヤバイまじヤバイ。あれ一人だったら即死ねる。LV92とか、もう素材としてなんて見れないね」

 

 イオリの言葉にリュートがゴクリと唾を飲む。

 

「いつものイオリさんらしくないよ? 大丈夫なの?」

「正直言うと、少し怖い。ちょっとだけ時間が欲しいかな」

 

 いくらレベルが上がり強敵と戦ってきたと言っても、まだこの世界に来てから一月と少しな上に、体は幼女だ。やっぱり、自分より格上の魔物と戦うのは怖い。

 だがこのまま引き下がると、前とは違い犠牲になる人が出てきてしまう。それに、今後冒険を続けていけば、ああいうのも相手にすることになるだろう。

 ならばここで、約束を破り逃げ出すなんて出来ない!! 

 

(逃げるんなら、やれることを全部やりきってからだ!! そして何よりオリハルコンっ!!)

 

 そう心のなかで決意し、両手で頬をパシンとはたく。

 

「よっし、もう大丈夫。へいきへっちゃらデース!」

「まあ、そんなにふざけられるなら大丈夫か。ところでどう攻略するつもりなの?」

 

 私は肩当てと帽子を装備し、大鎌を肩に担ぎながら言う。

 

「とりあえず最初は【ガンガンいこうぜ】、駄目そうなら【いのちだいじに】でいい?」

「いいよ。元々僕は王の財宝以外の火力は高くはないしね。でも、あんまり期待はしないでね?」

「あははっ、大丈夫大丈夫。《筋力強化》《速度強化》《耐久強化》《リジェネレイト》!! じゃあ、行きますか」

 

 今回は時間があるので強化魔法のオンパレードだ。あ、そういえばまだ【雷の魔導書】を読んでなかったな。この戦いが終わったら、鍛冶よりも先に読もうっ!


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