異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第9話 黒い悪魔

 視界に入るのは黒、黒、黒、黒。そんな状況で私は大鎌を振り回していた。

 

「うわあぁぁぁぁぁ、くるなくるなくるなぁぁぁ!!」

 

 簡単に言うと、絶賛G(の魔物)にたかられ、戦闘(錯乱)中だった。なぜこんなことになったのかは、少し前に遡る。

 

 ◇

 

「うおおお! 最大噴射ぁぁぁぁ!」

 

 私はそう叫びながら、必死に魔法を行使する。しかし無情にも森はぐんぐんと迫っていき……

 

「この速度じゃ、やっぱり減速が間に合わなんばっ!!」

 

 結局、バキバキと木をへし折り地面にズドンッ! と私は着陸(着弾)する事となった。

 

「イタタ……《ヒール》《クリーン》。あ、魔法は使うとバレるからダメなんだったっけ」

 

『獣人で魔法を使えるのは、特定の種族だけなんだよ。いくら銀狼族が魔法を使えるって言っても、属性が違うから調べられたらすぐにばれちゃうから、少なくとも王国に着くまで目立つように使っちゃダメだからね!』

 そんなリュート達からの忠告を思い出しながら、今回だけはと思い魔法を使いそそくさとその場から移動を始めようとする。と、その時一匹の蝶が目に映った。それは不自然に目に止まり、私はフラフラとその蝶を追いかけ、森の奥に迷い込んで行ってしまった。

 

 …………

 

「私は一体何をっ!?」

 

 気がつくと、森の中……しかも結構深い所にいた。そして目の前にはヒラヒラと漂う、変な色をした15cm程の蝶が一匹。こいつが原因か!? 

 

「うおりゃっ!! って うわっ!」

 

 腰に差しておいたハンマーを抜き叩き潰すと、蝶の体液のようなものが全身にべっちょりとかかった。

 

「ぺっぺっ、白くないからまだいいけど……これって……なん……の」

 

 なんとなく使った解析にはこう出ていた。

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 幻誘蝶の体液

 

(状態・効果発動中)

 周囲に幻を見せる幻誘蝶の体液。幻誘蝶が死ぬ

 時に撒き散らされ、周囲の虫系魔物を引き寄せ

 る。無色透明だが、多少臭う。

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 最後の文はそれはそれで気になるのだが、一番大変なのはその効果だ。

 そこまで考えた時、周りがザワザワとなりだし危機感知と予見が警鐘をならしだす。

 

「あはは……これは真面目にヤバイかも。そしてデジャブ」

 

 そう言って私が取り出した大鎌を構えるのと、虫達の第一陣が飛び出すのは殆ど同時だった。因みに一番手はテカテカと黒光りする、Gっぽいなにかだった。

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 レギオンコックローチ ランク C

 種族 昆虫

 LV 38

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 ──スキル 解析 がEXスキル 超解析 に進化しました──

 

 そんなメッセージが流れたが、目の前に現れた黒い軍団に、私は硬直し、次の瞬間には悲鳴をあげた。そして冒頭に戻る。

 

 ◇

 ──スキル 混乱耐性 LV 1を入手しました──

 ──スキル 恐怖耐性 LV 1を入手しました──

 

「ひゃぁぁぃぁぁぁぃぁぁぁあ!?!?」

 

 見える範囲の中をカサカサカサカサカサカサカサカサと動き回り、時にはあの短い距離しか飛ばないジャンプをする、私とほぼ同じ大きさの台所の黒い悪魔に、私は無茶苦茶に大鎌を振り回す。

 

 ──スキル 混乱耐性 のレベルが2に上昇しました──

 ──スキル 恐怖耐性 のレベルが2に上昇しました──

 ──スキル 混乱耐性 のレベルが3に上昇しました──

 ──スキル 恐怖耐性 のレベルが3に上昇しました──

 ──スキル 恐怖耐性 のレベルが4に上昇しました──

 

「よし、あんなのはただの虫、虫ったら虫!」

 

 スキルをゲットしたお陰か、普段よりも圧倒的に早く冷静になれた。

 大鎌を振り回して、向かってくる魔物を斬り続ける。イオリの全身は、切り捨てた魔物で汚れて色々と大変な事になっていた。《クリーン》ではそういう汚れは落ちづらいので、放置することになってしまっている。

 

「燃え移っちゃうから、爆炎魔法は使えないしっ! こんなのもう嫌だぁぁぁぁぁ!!」

 

 若干魔物の勢いが衰えた時、それに気付いた。先程から振り回している大鎌の刀身の部分が、本当に少しだけMPが抜けている感と共に、三振りに分裂しているのだ。ノイズが走るようにブレブレで、きちんとした形に定まって無かったりするものの、謎の銀色のオーラで三振りに分裂していた。

 

「何このオーラ!? 斬れてるからいいけどさ! いいけどさ!! あ、大事なことなので二回言いました」

 

 当然のことながら周りには虫しかいないので、ギチギチという音以外なにも返ってはこない。

 

「ちきしょー!!」

 

 まだまだ気が抜けるような状況ではないので、気を取り直して戦闘を再開する。

 

 ◇

 

 戦闘はさらに30分は続いた。MPもMPの回復薬も尽き、大鎌を持つ手がプルプル震えてきた頃、ようやく目の前から魔物が消え去り終了した。

 

「終わったぁあああああああ!!!!!」

 

 私はそう叫んでドデンと大の字に転がる。うえぇ、なんか色々潰れた感触がした。

 大鎌の刃は欠け、根元がグラついている。また整備をしないといけないのはやむを得まい。因みに、イオリのレベルとスキルのレベルも全体的に2つ程上がった。

 

「それにしてもひっどいなーこれ。オークの時よりも死ぬかと思ったよ」

 

 周りには2つに分かれたGの死骸が大量に転がっている。本当にバラバラなので、素材にはできなさそうだ。いや、残っててもしたくはないが。

 

「よいしょっと。うわぁ……これはしばらく着たくはないなぁ……」

 

 そう言って、色々なもので酷く汚れたワンピースを脱ぎ捨てた時、背後の茂みがガサガサと揺れた。

 魔物の生き残りかと思い大鎌を持ち振り返ると、そこに居たのは…………

 

「…………(・□・;)」

 

 ポカンとしているリュートだった。その視線の先にはもちろん下着(下のみ)しか身につけてない私がいる訳で……

 

「……いつから見てた?」

「お、終わったぁぁぁぁ!! 辺りから」

「…………」

 

 その言葉を聞いて、私の中の何かがプツンと音を立てて切れた。

 

「ま、待って、話せば分かるっ!」

「記憶を無くせぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 最後にリュートの視界に入った物は、飛んできたイオリの足の裏だった。

 


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