異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「ガランッティィィンッ!!」
チャージしていた力が解き放たれ、振り下ろす剣から膨大な光が溢れ出す。その光が見えたのか、回避しようとしたオークを飲み込み消しとばした。
オークの装備していたものが地面に転がるのを見届けた俺は、あの銀髪の幼女の倒れている方へと向く。しかしそこには先客がいた。たしかストームブリンガーというパーティーの魔法使いの人だ。
「大丈夫なんですか!?」
俺が囮にしていたようなものだ。それが原因で死んでしまう事は、俺自身を許せない。そう考えながら、俺も近づいていき《ヒール》を連続して使用する。
「ええ、本当にギリギリだけどね。そんなレベルであいつを倒すなんてね……やるじゃない、あなた達」
銀髪の幼女の呼吸が安定してくる。どうやら問題は無さそうだ。
「え、どこ行くの? あなた」
「他のオークを殲滅してきます。その装備は、その子にあげてください。一番活躍したのは、間違いなくその子ですから」
そう言い残し僕はその場を立ち去る。そして暫く走っていき、オークの物と思われる小屋の陰で座り込む。
「はぁ……はぁ……もう、限界。無理……」
実は、魔力も体力ももうすっからかんだ。それを自覚してはいるが、あの場で倒れたらあの人の苦労が二倍になる。そうはならなくて良かった、目に柊さんの姿を捉え僕は気を失った。
意地だ、悪いか!
◇
「成る程ね、だからあんな戦線から離れた変な場所で倒れてたのか〜」
王都へと帰る馬車の中、話を聞いていた人達から代表して俺を回収した柊さんが言う。
「まあね。そういえばそっちも助けられたとか言ってたけど……」
「うん。オークキングに追われてる時にいきなり首を吹っ飛ばしていってたよ。確か、断殺 ジャバウォックとか言ってた」
「とんでもないな、あの幼女……。って何でシンフォギアの技名を!?」
そう俺は思い、それを見ていたらしい柊さんに聞く。
「柊さん、何で知ってるのか聞いてみた? もしかしたら……」
「えっと『すみません、お母さんが似たような攻撃をする時に言ってたことばで、意味は分かんないです』って言ってたから、お母さんが勇者とか転生者だったんじゃない? まあ、蒼矢くんって事はないわよ」
「そうか……」
残念だ。もしかしたら、そういう可能性もあると思っていたんだけど……手がかりなしか。
「けど、どっちにしろギルドには留まっているように話はしておいたから、本人から聞けば良いんじゃないかな?」
「それもそっか」
その後は、特に話す事は無くなったのか俺はいつの間にか眠ってしまっていた。王様に報告したら、早めに戻らないとな……
3日後、リフン
リフンの街のギルド長室。俺はそこで、問題に直面していた。
「あの子が出ていったあぁぁぁっ!?」
「おう、振られて残念だったな勇者様」
そう、話に来たのは良いが、当の本人が既にどこかに行ってしまった後だった。あれだけ人をまとめるのが上手かったヒッグスも、勢いのまま送り出してしまったらしい。
このまま収穫無しで帰るのはかなりまずいなぁ……そう思い、大きな溜息を吐くと今思い出したかのように言った。
「そうだそうだ。そういえば嬢ちゃんから手紙を預かってるぞ。俺には読めなかったが、勇者なら読めるっつう話だったからな。ほれ」
そういって机の上に置いてあった手紙を渡してくる。
「はあ……」
そう言って開いたメモには日本語でこんなことが書かれていた。
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ハロハロー、この手紙をあなたが読んでるって事は、私はもういなかったって事かな? まあ、一つだけ言っておきたい事があります。
そんな簡単に捕まるかよ! バーカバーカ!
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俺は持っていた手紙をほんのちょっと破いてしまった。悪くないよな? な!? まだまだ書いてあるので、気を取り直して読むことにする。
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さて、おふざけはここまでにして本題に移るよ。まずは、私が気を失った後あいつを倒してくれてありがとう。今回は本当に死ぬかと思ってた。流石勇者、やるじゃん。次に、回復魔法をかけてくれたんだって? 自分のMPも少なかった筈なのに、私に使ってくれて本当にありがとうね。
それと、ここまで読んだなら分かってると思うけど、私は転生者の関係者ではあるよ。まあ、これからも私は旅を続けるからいつかまた会えるかもね。それじゃあその時まで!
イオリ
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へぇ、本人から聞けなかったのは残念だけど、これで少しは来た意味があったかな?
そんなことを考えていると、ヒッグスさんが話しかけてくる。
「なんて書いてあったんだ?」
「いえ、大した事じゃないです。俺と同郷だって事が分かったのと、また会おうって書いてあっただけです」
そう言うと、ヒッグスさんはつまらなそうな顔をして言う。
「ちっ、嬢ちゃんとお前がそういう関係になれば楽しかったのによ……」
「俺はロリコンなんかじゃねぇぇぇぇぇ!!」
その日、ギルド長室から謎の叫び声が聞こえたと言う。