異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
知らない天井だ。
よし、テンプレ完了。え〜と、たしか私はオークエンペラーに吹き飛ばされて……あ〜、魔力切れで気絶したんだったな。
…………よし、五体満足。とりあえず起きないと現状確認も何もできない。そう思って身体をベッド(仮)から起こすと、足元の所でシンディさんが寝ていた。起きるまで待つか。
◇
起きたシンディさんの話によると、どうやらオークエンペラーは討伐成功。その後は特に強敵もおらず順調に終わったらしい。その報告に安心する。
そして、私の鎌とシミターは壁に立てかけてあり、ボロボロの装備はその下に畳まれて置いてあった。あ、因みに外はお祭りをやってるのかと思いきややっていなかったよ。
「起きてそうそう色々ありがとうございます。私ってどのくらい寝てました?」
「2日よ。このまま起きないんじゃないかって随分と心配したんだから!」
「あはは……すみません」
「全く……。意識が戻ってそうそう悪いんだけど、そういえばヒッグスが呼んでいたわ。ギルド長室にいると思うから行ったほうがいいわよ」
その言葉を聞いて、私は取り出した串焼きを食べながらギルドに向かって歩いていった。
ギルドに入ると、何やらいつもより視線が集中しているような感じがした。そして何人かがヒソヒソと話している。《集音》発動! なになに……
「おいお前ら! 《首刈り》が帰ってきたぞ!」「はっ、嘘だろ……ってマジじゃねえか!」「久しぶりに見たけど、やっぱり可愛いな」「「あぁ、やっぱりそうだよな」」「お前ら……この変態共め」「変態紳士と呼んでくれ」「俺が……」「俺たちが……」「「「変態紳士だぁぁぁぁぁ!!」」」
(よし、聞かなかった事にしよう)
私は魔法を切り、あだ名というか、通り名みたいなものだけを記憶に留め、レナさんに話しかけた。
「ギルド長が呼んでるって聞いたんですけど、どうすればいいですかね?」
「えっと、二階にギルド長室があるのでそこに行ってください。場所は突き当たりなのですぐ分かると思います」
「ありがとうございます。じゃあ行ってきますねー」
◇
キングクリムゾン! 普通の話の時間は吹き飛ぶ。
「という訳で、勇者の奴からお前にプレゼントが来てるぞ」
そう言ってヒッグスさんは、恐らくアイテムボックスの中から燻んだ緑色の大剣を取り出した。あれってエンペラーの持ってた奴だよね?
「誰も使える奴がいないんでな。お前が鍛冶師って聞いたら喜んで置いていったぞ」
「まあ、それならありがたく受け取っておきます」
「それと勇者から伝言だ。『一週間経ったら戻ってくるから色々と詳しく話を聞かせてね』だとさ。何したんだ?」
勇者が戻ってくる→話でボロを出す→バレる→王国辺りに繋がれる→自由が減少!!
この伝言を聞いた時の私の頭の中にはこんな構図が出来上がっていた。 なので、僕としては苦笑いをすることしかできなかった。
「それとは別に、オークエンペラーを倒して今回の依頼に多大に貢献したからな。特別報酬がある。できる限り要望には応えるぞ?」
「それじゃあ、この大陸の詳しい地図を貰えませんか? あと見逃してください」
早めにこの大陸から逃げた方が良さそうだ。勇者の仲間入りとか御免被る。それに、折角だから旅をしてみたいと思う。なんてったって異世界なのだから。
「それだけで良いのか? もう少しなら出せるぞ?」
なぬっ? それならもう少しなら欲を出しても良いのかな?
「それじゃあ、鉱石とかインゴットを貰えませんか? 今回の戦いで随分ボロボロになっちゃったので」
「これでギルドの面子も保たれるし、嬢ちゃんも物が貰えて満足だな。ガハハハッ。ちょっと待ってな、すぐに持ってきてやる」
やっぱりそういうことだったのか……と思いながら私が欲しがる物が一部予想されてたからこんなに対応が速いのかな? と思いながら、元々自分が付けていた防具類の確認を始める。
肩当てはほぼ砕けてるし、腕甲はひしゃげている。ワンピースは際どい感じで破れてるし、運動靴は無茶な行動をし続けてたせいか擦り切れている。帽子は……そもそも無かった。どうやら武器類は少しの整備で済みそうだか……よく私こんな状態になって生きてられたな。流石魔法ということなのか?
そんなことをしている間にヒッグスさんが戻ってきた。
「ほらよ、これが報酬だ。そういえばこれから嬢ちゃんはどうするんだ?」
「いや〜……私の秘密が勇者にバレちゃったかも知れないので、すぐにでも旅に出ようと思ってます」
思い切って、約束をすっぽかすことを告白してみる。
「振られたな……勇者。伝言はあるか?」
「いえ、伝言はないですね。けど、勇者が来たらこのメモを渡してくれると有難いです」
そう言って私は
「これは……見たことのない文字だが、良いのか?」
「勇者には読めますんで大丈夫です。それじゃあ私は旅支度をしないといけないので、ここら辺で!」
そんなことを言いながら、ギルドを飛び出していったイオリであった。
翌日の朝
「この街には一月も居なかったのに、随分と色々な事があったよなぁ……」
早朝、私はリフンの街の門を見上げながら言う。テンプレにテンプレを重ねた感じだったけど、日本で生きていた時よりも随分と充実した日々だったように思える。
「えっと、《獣人界》に行くには……うへぇ、山越えないとダメなのかぁ……」
私は地図を眺めながら、一人そんなことを言う。まあ、そんな冒険をしてみるのも一興だろう。
「さて、勇者に見つかっても良くないし、とっとと行っちゃいますか!」
そう言って私は一路次の街へと向かって歩き出した。
第一章 完