異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
そう覚悟を決めて突撃しようとした瞬間、後ろから肩を掴まれる!
「ダメだよ! 君みたいな小さな子が行くなんて無茶だ!」
その地球では普通な考え方に、僕は頭を掻く。この世界はレベル制なんだよ? ちょっとイライラしてきたかも。
「あぁもう、そっちが必殺技溜めてる間は動けないんでしょ? この場には私達の他に誰も居ない、それじゃあ私が足止めするしかないじゃん! ゆーしゃならそれくらい解れよ!」
「それでも……君が助けを呼んできてくれれば……」
それもまあ天上院が強ければ大丈夫だけど……LV53か、僕の解析にも気づいてないし無理だろうな。いやそりゃあ僕だって怖いけど、僕が行くしかないでしょう?
「さっきから私の事見てニヤニヤしてるだけで済んでるけど、多分私達が動いたらすぐに攻撃してくるよ? レベル86相手に、私に解析使われたことにも気づいてないゆーしゃが戦って死なないって言える? それでゆーしゃが死んじゃったら責められるのは多分私だよ? はっ、だったら助かる見込みがある方に私は賭けるね! ていうか、私の覚悟が鈍らない内に行かせて欲しいんだけど」
「……」
そう僕がまくし立てて言うと、天上院は黙ってしまった。あ〜、あの僕を見てくる目気持ち悪いんだよ。さっさと決めてくれないかな?
「……死なないでね」
顔を上げ、不承不承といった様子で承知する天上院。今更その程度の心配とか……
「私は助かる方に賭けるって言ったんだよ? こんな所で死にたくはないし、安全第一で行くよっと!」
そう言って僕は、今度こそ足元を爆発させ加速しながら、とりあえず一当てしてみるためにオークエンペラーに突撃する。
「せいやぁぁぁぁっ!!」
ギンッ!!
僕が、裂帛の気合いと共に放った大鎌の一撃は、ニヤリと笑うオークエンペラーに難なく防がれてしまった。
「ちっ」
舌打ちをして、全力で下がっていく僕にオークエンペラーが斬りかかってくる。ゴウッ! と唸りを上げて襲いかかってくる大剣を、どうにか受け流そうとして打ち合っている内に、大鎌の刃の部分に大剣を引っ掛けられ吹き飛ばされてしまう。
「やっばっ!!」
先程と同じように、火力は高めに目の前で爆発を起こし一気に距離を取る。そしてシミターを取り出し、ハンマーを右手シミターを左手に持つ変則的な二刀流で構えたところに、いつの間にか接近してきていたオークエンペラーの大剣が振り下ろされる。
「なっ、めっ、るっ、なぁぁぁ!」
シミターの背で勢いを殺しながら、魔法を併用してハンマーで大剣の峰を叩く。大きな音をたて弾かれた大剣は、僕のすぐ近くの地面に叩きつけられ、反動で僕は浮かび上がる。
空中で、ハンマーをオークエンペラーの右足の人間だと小指に当たる部分に投げつけ、太ももに付けていた針をオークエンペラーの眼を狙って投げつける。
「ブモォォオォォォォォォッ!?」
突然の足の痛みと、針が刺さり視界が奪われたことでオークエンペラーが滅茶苦茶に大剣を振り回す。
迫ってくる大剣に対して、空中でまともに身動きの取れない僕に出来たことは、咄嗟に腕をクロスさせ身体を丸めることだけだった。
「ッッ、!! カハッ!」
そのまま吹き飛ばされた僕は、木に天上院以上の勢いで叩きつけられた。ミスリルの腕甲はひしゃげ、腕も変な方向に曲がっている。凄く痛い。ヤバイヤバイ真面目に痛い。
「あぁぁぁぁあぁぁあ!!」
あまりにも痛く、叫んでる僕に聞き慣れたアナウンスの声が聞こえてくる。
──スキル 痛覚耐性 LV 1を入手しました──
ありがたいけどまだかなり痛い。あだだだだだだだだ。どこぞの北斗神拳の継承者じゃないよ。
──スキル 痛覚耐性 のレベルが2に上昇しました──
──スキル 痛覚耐性 のレベルが3に上昇しました──
──スキル 痛覚耐性 のレベルが4に上昇しました──
──スキル 痛覚耐性 のレベルが5に上昇しました──
ここでようやく考えることができるくらいには痛みが引いてきた。
持っていたシミターは、飛んでいった大鎌の近くに刺さっており、ハンマーはオークエンペラーの足元でひしゃげていた。動こうとしたら、全身を脱力感が襲った。これは……魔力切れだな。
そして、そんな僕を見て、天上院が駆け寄ってこようとする。天上院のチャージは……終わってるように見えるのにだ。そんなことしたら、僕が稼いだ時間が無駄になっちゃうでしょうが!!
「私は、良いから! 早く撃って!!」
僕は、 残った魔力を総動員し声を増幅し叫ぶ。それが僕の限界だったようで、段々と視界が狭まっていく。そんな中、天上院がコクリと頷き叫ぶ!
「ガランッティィィンッ!!」
振り下ろされた聖剣から極大の光がオークエンペラーに向かって放たれ、オークエンペラーが消えていくのが見える。
ニフラムかよ……なんてことを考えていると、頭にレベルアップのファンファーレが聞こえた。どうやら問題無く倒せたようだ。
(あぁ……よかっ……た)
視界の端に、シンディさんのような人影が見えたところで、僕の意識は闇に包まれていった。あとは、任せましたよ……
僕のHPヤバイデース……ガクッ