異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「♪〜♪♪〜♪〜」
私は軽く鼻歌を歌いながら、青と白のチェックのエプロンを纏い手元のチョコレートをかき混ぜる。理由?そんなものは決まっている。何故かこっちの世界にも広まってるバレンタインだ。過去の勇者っていうのは、100%リア充だったんだろう。
「チョコなんて作るの久しぶりだな〜。でもやっぱりロイドには本命あげたいし…」
殆ど意識せず今いる異界の温度を魔法で調整、異世界とは思えないぽへーっとした空気で私は考える。オーソドックスにハート型もいいけど、フォンダンショコラとかブラウニーとかトリュフとか色々作ってみたい。いや、いっそあの世界に行って土下座してザッハトルテを教えてもらうのもありかも…?
「もうずっといるから状況はあんまり考えないでいいと思うから、後は包装かな? それならー…」
「やっと見つけた」
「わひゃあっ!?」
私が完全に気を抜いていた所に、なんの予兆もなく突然ティアが転移してきた。そのせいで変な声が出ちゃったし、持ってたボウルも落としそうになっちゃったけど、まあティアだからいっか。
「マスター、元男って面影がもうないね。完全に、ただの恋する女の子」
「蒼矢は死んだ、もういないんだよ! そ、それに、両家のパパママ公認で許嫁だしー」
お正月にあった一件で、ティアが私がロイドにベタ惚れしてて相思相愛な事実を両親に完璧に暴露したのは記憶に新しい。結果、なんだかんだあったけど、私とロイドはもうお家公認の仲だ。
バレた結果暫く弄られ続けたし、これは完全にメスの顔ですわぁとか言われたりもしたけど、一切否定はできないからね仕方ない。
後はまあ、初詣の時の写真が撮られてて、掲示板が出来てたりもしたかな。ほんといつ撮られたんだろう…まあ、この話はどうでも良いので放置する事にする。
「それで、ここに来たって事は私に用でもあるの? ティア」
「うん。ちょっと相談があって来た」
そう言うティアの雰囲気はちょっと気まずそうで、手には便箋が握られていた。まさかラブレター? いや、流石にないか。
「分かったー。でもちょっと待って、このチョコレートだけは作っちゃいたいな」
「了解。そこまで急ぎの要件でもない、ゆっくりやるといい」
「ありがとー」
そうお礼を言った後私は、暫くチョコレート作りに勤しむのだった。最近気が抜けすぎてる気がしないでもないなぁ。偶には本気のバト…もとい、ギルドのお仕事を受けなきゃダメだね。お金も稼がなきゃだし。
◇
「それで、相談って?」
とりあえず、トリュフへと姿を変えたチョコを食材を積んである所に置いて、それっぽいテーブルと椅子を呼び出しティアと向かい合って座る。チョコの方に、ちょっと期待して洋酒を使ってるのは秘密だ。
「お茶会の招待状が来た。だから、1ヶ月くらい暇が欲しい。いい?」
「うん、いいよ。ちょっと寂しくなっちゃうけどね。あ、はい紅茶」
ティアに紅茶を渡すと同時に、ケーキスタンドも呼び出してお菓子を配置する。きっと、結構様になってるんだろうなぁ…足が地面についてれば。このままじゃ、どう見てもお茶会(笑)で悲しい。ナーサリー呼ばなきゃ()
「それにしても、ティアがどこか行きたいなんて初めてじゃない? どこ行くの?」
「場所は地球。南緯47度9分、西経126度43分の海底。みんなが集まるらしい」
その言葉に、紅茶を飲もうとしていた私の手が止まる。え、ちょっと待ってその座標ってもしかしなくても…と言う事は、お誘いってもしかして。
「多分、マスターの想像通り。場所はルルイエで、来るのは大体神格。封印されてたから、久しぶりに行ける」
「えっと、そのみんなって?」
「主催者はクーちゃん。来るのは、ナクアちゃんにイっちゃん。シューちゃんに、ハスくん。後はニャルさんとか、ウタちゃんとかもが来るらしい。あと、創造主も」
「うわぁ…」
名前だけ聞くと可愛く思えるけど、察するにクトゥルフ、アトラク=ナチャ、イっちゃんは分からないけど…イタカ? シュブ=二グラスとハスターも来そう。最後のは間違いなく這い寄る混沌さんとクァチル=ウタウスだろう。創造主…アザトースかな? まあどう足掻いても、クトゥルフ神話勢がごっちゃごちゃだしSAN値がゼロになりますわ。
「マスターが心配するような事はない。みんな、私みたいに分体か触覚。ついでに、何故かほぼ全員ロリかショタ。マスターも来る?」
「謹んでお断り申し上げます」
多分偽物とはいえクトゥルフ消し飛ばしてるし。ニャル様には見事な出オチをさせちゃったし。あと、曲がりなりにもティアを1回死なせちゃってるし…マインドクラッシュ間違いなしな気がする。
「そんな事は無いと思うし、させない。寧ろ自慢する。でも、来ないって言うなら分かった。楽しんで来る」
「うん、いってらっしゃい!」
席を立ったティアが、本気の時の装備で出口に繋がる門へと歩いて行く。そして、そういえばと呟いてこの異界から出る直前、私の方を振り返る。
「滅多にない、本当のロイドとの2人きり。存分にイチャイチャするといい」
「え、うぁ、うん…」
確かに、一応世界線自体が変わるからティアの覗き見もなくなるだろう。そうなると、確かに誰にも見られず2人っきりになるわけで…えへへ…
「別に、私はいないからそれ以上の事をしてもいい。◼︎◼︎いとか、××××とか、△レとか」
「ひゃぅ…あぅぅぅぅ…」
気を抜いていた私の耳元で囁かれた言葉に、ボッと私は一瞬で赤くなってしまう。そしてそのままポカポカと、ロクに力の入ってない腕でティアを叩く。そ、そそそういうえちぃのはまだ早いの! ふしだらNGなの!!
「ふふふ、マスター可愛い。ああそうそう、この世界だと、バレンタイン当日には特別な魔物が出現する。デートがてら、倒してくるといい」
「ティアのばかぁ!」
麻婆を進呈してあげたくなるような笑顔のティアが去った後も、私は暫くその場に蹲り1人で悶々として過ごすのだった。
そして作者はインフルエンザにかかりました。学年末のテスト直前だから気合いと根性で治さねば。
ヴァルゼライド閣下なら出来る筈
追試不可とかうちの学校どうなってんだよ。