異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
投稿しないとか言ってなんで私は投稿してるんだ…
ガヤガヤと色んな言葉が飛び交い、所々にある屋台からは何やらいい匂いが漂ってくる。お年玉が意味を成さなくなった私は今、姉ちゃんと私とロイドで初詣に来ていた。勿論私と姉ちゃんは着物である。
ティアがいない? 何かよく分からないけど、家でパパとママと話しをしてるらしい。
「凄い人混みだな…本当に行くのか? イオリ」
「うん、お正月だもん!」
近所…というほど近くはないけれど、毎年来ている神社。そこのいつもと変わらない人混みを見て、ロイドはうんざりしている。まあ、あっちだとこんな人混みは見ないしね。でも行くのだ。
「それじゃあ行ってくるね結衣姉」
「蒼矢を頼んだわよ、ロイド君」
「はい! 行ってきます」
軽く姉ちゃんに手を振って、ロイドの手を握って私は人混みに突貫する。とは言っても全力を出したら人死が出るから、人の流れに乗る程度だけど。
「そういえばなんだが…髪、隠さなくていいのか?」
一緒に歩くロイドが、ふと私にそんな事を聞いてきた。まあそれも不思議じゃない、だって私は今銀髪を一切隠してないのだから。そのせいでさっきから注目されてるのも分かってるけど、今は隠したくない理由がちゃんとある。
「うん。黒髪にしてたらこの着物も、ロイドがくれた髪飾りも似合わないでしょ? 折角2人きりになれたのに、そんなのは嫌だから」
「っ!」
繋いでる手をギュッと握り、笑顔で私は言う。実は地球に帰ってくる少し前から、全然2人っきりになる事が出来てなかったのだ。私は昼夜問わず病気の人を魔法で治してたし、ロイドはロイドで原因を狩りに…って、今考える事じゃないか。
何が言いたいのかというと、結局私は言い逃れようのない程に興奮…じゃ言い方がおかしいし、ワクワクドキドキしてるのだ。誰がなんと言おうとも、好きな人と一緒にいるのは楽しいのだ!
「それで結局、俺たちは何をする為に並んでるんだ?」
「んーとね、ティアとか駄女神じゃない神様にお祈りする為…かな? 新年の無事と平穏を祈ったり、1年間の感謝を捧げたりって意味だった筈だよ」
そういう文化のない人に説明するのが、凄く難しい事を今実感した。日本人ならなんとなくで分かるだろうけど、改めて説明してって言われるとどう言えばいいのか分からない。でも、駄女神に祈っても意味がない事だけはなんとなく分かる。
「後は、個人的なお願い事とかもだね。実際に叶うかどうかは分からないけど」
「へぇ、向こうの世界まで効果があればいいな」
言われてみればそうだと思って、クスクスと笑ってしまう。それと私も半分神様らしいし、神様が神様に願い事って何それ。多分お正月の空気が、こんな感じでポワポワとさせるのだろう。
「お願いは今のうちに決めておいた方がいいかもね」
「イオリは何かあるのか?」
「うん。今年1年、誰も死なずに元気でいられます様にってお願いするかな」
多分今年も私は、色々な問題に巻き込まれて死にかけたり無茶をする事になる。主に駄女神の嫌がらせとかで。
そんなつまらないししょうもない事で、今の幸せが崩れるなんて断固反対だからね。願わくば駄女神の上司の神様な通じる事を祈る。
「ロイドは?」
「秘密だ」
「ぶー、けちー」
私はほっぺを膨らまして抗議する。いいじゃん教えてくれたって…って、確かお願い事って他人に言っちゃ駄目なんだったっけ?
そんな事を思い出しながら、久しぶりの他愛もない話しを続けている間に私達の番になった。
「二礼二拍手一礼」
お賽銭を入れ、鈴を鳴らしてから二礼。パンパンと手を叩き、最後に一礼。出雲大社だと四礼とか聞いたけど、ここは普通にこれでオッケーの筈。
(今年1年リィンネートの無駄な邪魔に遭わず、家族みんなが元気で過ごせますように)
目を閉じ、少し変えた願い事を心の中で言う。向こうに帰る私達だけじゃなくって、パパとママ、姉ちゃんにも元気でいてほしいって思うのは欲張りだろうか?
(その願い、聞き届けた)
そう思った時、頭の中に直接声が響いた。男か女か、若いのか高齢なのかも分からないけど、不思議と神様と思える声だった。
「ねえロイド、今の聞こえた?」
「何がだ?」
「ううん、それじゃあ気の所為だったみたい」
「そうか?」
後ろが閊えるのはマズイので、詳しく話すことはせず退却する。でも、聞き届けたって言ってくれたし今年は少しマシになるかもしれない。
「偶には、こう言う風にゆっくりするのもいいな」
「そうだねー」
また人の波に乗って、さっきとは逆方向に歩いていく。いつまで続くか分からない平和だけど、殺伐としてる毎日よりは圧倒的に良いのは確かだ。
「えいっ」
姉ちゃんの所に戻るまで後少し、つまり2人きりでいられる最後の時間になったところで、私はロイドの腕を抱える。パパママには見せたくない、ちょっと本気の甘えだ。
「歩き辛くないのか?」
「うん、今はこうしてたいんだもん」
「はぁ…まあ、それなら良いか」
ロイドも許してくれたし、姉ちゃんと合流するまで私はそうやって歩いていくのだった。後やりたい事は、おみくじと絵馬とー。
家に帰ってから、ティアがこれをいつも通り見ていて、しかもパパママにまで見られていたなんて知らずに。散々弄られ、根掘り葉掘り色んな事を聞かれるだなんて知らずに。
あ、明けましておめでとうございます。