異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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一周年で完結!!
そしてヒッソリと投稿してた活動報告はあんまり気付かれてなくて安心。


エピローグ 後

「んぅ…お腹すいた…」

 

 チュンチュンと鳥が鳴いてる声と空腹感で、私は目を覚ました。寝惚け眼に移るのは、お互いの息が届くくらいの至近距離にあるロイド(恋人)の顔。

 ステイ。思い出せ私。昨日は確かロイドの抱き枕になるのもいっかなって思って、私も私で眠くなったから離れないロイドと一緒に布団に入って寝た。うん、どっかの並行世界の私みたいにえちぃ事はしてない、自分の身体をスキャンしたから間違いない。

 

「よし、そうとなれば先ずは朝ごはんだよね」

 

 魂の世界みたいな場所で会った、トリコの食霊的ゴーストから教わった料理をしてみるのも良いかな。そう思ってベッドから降りたのと殆ど同時に、荒々しく部屋のドアが開け放たれた。

 

「あなたが白沢君で良いのよね!?」

「私達を地球に帰してくれるんでしょ!?」

 

 息も絶え絶えといった様子で部屋に飛び込んで来たのは、どこかで見た事ある気がする女子が4人。多分クラスメイトだったんだろうけど、正直覚えてない。まあ、気持ちは分からないでもないけど…

 

「あの…私昨日目を覚ましたばっかりだから、しばらく大きな魔法は使えないよ?今だって魔力で支えてないと立ってる事すら出来ないし」

「そんな…」

 

 女子が崩れ落ちるけど、そんなに地球に帰りたかったのかな?どうせ悪用する人が出るだろうし、タクとか先生とかの一部を除いてタダで返す訳なんてないのに。

 そう言えば誰にもこれは言ってなかったっけ。頭に?を浮かべながら首を傾げる私の前で、何か鬼気迫った表情になった女子がゆらりと立ち上がる。

 

「あ、コレって脅されるパターン?やだなぁ…」

 

 そもそもレベル差が150はあるんだけど…呆れてため息を吐いた瞬間、部屋に一陣の風が駆け抜け女子達を部屋の外に蹴り飛ばした。

 

「ふん、ご主人様の気分を不快にさせた罰よ。大丈夫でしたか?ご主人様」

「え、あ、うん」

 

 そう何かヤバイ(性癖)に目覚めちゃってるとしか思えない顔と表情の、エセニンジャ事柊なんとかさんだった。

 いきなり現れた真意が分からず、若干怯えた目で柊なんとかさんを見てるうちに気がついてしまう。なんだか頬を染めてモジモジしてる彼女のあそこが濡れてる様に見える事に。おい魔眼、そんなの分からなくて良いから。

 

「あぁ、私というものがご主人様を怖がらせてしまいました。この不甲斐ない私に、どうか罰をお与えくださいまし。はぁ…はぁ…」

「ひっ」

 

 完全に思い出した。あの時、後先考えず人格破壊R18コースをやって放置してたからだ。ジリジリと迫ってくる百合ニンジャから逃げようにも、そんなに部屋にスペースはない。多分ベッドなんて行ったらアウトコースでレイジビヨンドしちゃうから逃げ場はない。誰かたすてけ。

 

「ぐふっ」

「全く、なんで少し目を離しただけで、こんな大騒ぎになる?」

 

 どうしようもない悲劇が訪れる直前、フルスイングされた杖がドMニンジャの頭に直撃して意識を刈り取った。勿論そんな事をしたのは…

 

「おはよう、マスター。昨晩はお楽しみでしたね?」

「な、なんもやってないよ!」

 

 小脇に何枚もの紙を抱えたティアだった。ちゃっかりドMニンジャを部屋の外に捨ててくれてる辺り、言ってる事は茶化しててもちゃんとこっちを考えてくれているっぽい。

 

「恋人と、同じベッドで、抱き合って、寝てナニもしてない……不能?」

「いや違うから!そもそも私達の年齢アレだから!」

 

 普通に反応はあったし……ってそうじゃない!!さっきのニンジャとか、その手の凄く嫌な予感がする書類って何?というか私が起きたの昨日なのに、なんでこんなに情報が出回ってるの?

 

「ニンジャに関しては、マスターの予想通り。アレを放置したから、目覚めた。目覚めた話を振り撒いたのも、こいつ」

「と言うことは、さっきのは自作自演…?」

「おそらく」

 

 ティアの目は真剣だった。もうヤダ…なんで起きてすぐなのに、こんなに厄介事が舞い込んでくるのさ。

 

「そんなマスターに良い追い討ちがある」

 

 そう言ってティアが広げた書類に、泣きそうな頭で目を通していく。何枚かは感謝状で、表彰みたいなのからギルドから報酬金みたいなのも来ている。嫌な予感のする後半のヤツは…

 

「『貴殿を正式にセントシュタイン王国の貴族に』、『領地与えたい…』、『しかし身分が身分なので、どこかの貴族の養子に』。ねえティア、この大量にある紙ってもしかして…」

「予想通り。無能貴族どもからの、養子縁組しませんかって書類」

 

 それを聞いて私は倒れそうになる。そんな立場とか要らないし。1冒険者で私は十分だもん。よし、ちょっと名残惜しいけど決めた。

 

「もうヤダ逃げる。すぐ地球に帰す装置作って、獣人界行く」

「そう言うと思ってた。だから、丁度いい物も回収してきた」

 

 ティアの取り出したのは、今までの紙束と違って綺麗な紙に蝋印の押された物で…

 

「結婚式の、招待状?」

「大正解」

 

 おめでたい事だし、丁度良い口実にもなる切り札だった。多分結婚式があるのは2〜3ヶ月後。

 

「ティア、養子縁組とかの期限は?」

「特になし出来るだけ早く、とは言ってた」

「よし!それなら…あと1週間で最低限動かせるようにして、リフンあたりに転移。ロイドのご両親に挨拶して、ロイドも一緒に獣人界にエスケープすれば…」

「王都に戻らない限り、問題はなくなる」

 

 算段はついた。あとは私がどれくらい回復できるかなかかってるかど、回復魔法+おーばーうぁーくで頑張れば問題ないだろう。

 

「と、いう予定だけど…ロイドはそれでいい?」

 

 ベッドに座り直した私は、明らかに寝たふりをしているロイドに話しかける。

 

「バレてたのか…俺としてはそれでいいぞ?父さんにも母さんにも、まだ恋人関係になった事をちゃんとは言ってなかったろ?」

「だね。うぅ…でも、正直魔神と戦う時より緊張する」

 

 ラスボスはやっぱり両親か…そう思いながら、私もベッドに倒れこむのだった。あれ?結衣姉にバレたらこの状況って……ううん、今は忘れよう。

 身体を本調子に戻すのが最優先!!

 

 

「マズイよね?下手したら終わっちゃうよね?」

「イオリが、あのドラゴンと戦い始めたせいだろ?」

「だって明らかにシヤルフに直進ルートだったんだもん!!」

「言い合って無いで、速く」

 

 私が目覚めてから2ヶ月。私達3人はシヤルフの大通りを全力で駆けていた。リュートさんとレーナさんが結婚式を挙げるって言うから、色々用意したり頑張ったんだけど最後の最後にあったトラブルで良い場面を見逃しそうになってしまっている。山みたいな巨大のドラゴンが襲いかかってくるって、なんでさ…だよもう!

 

「確かそこの角を右!」

「「了解!」」

 

 礼服って言われても分からないから、私とティアは適当な白じゃないドレス、ロイドは私が僕として通っていた学校の制服を作ってみたものを来ている。そんな3人が揃って空中を蹴って走っているんだから、私の透明化を見破れる人がいたなら笑い者になると思う。

 

「「私は来た!私は見た!」」

 

 十字架があるわけじゃ無いけど教会と分かる建物が見え、外に待機する大勢の人がその扉が開かれるのを待っているのが見えた。

 ロイドだけ置いてけぼりのテンションだけど、ほんの30分前まで全力で戦ってたから仕方ないよね。

 

「「勝った!」」

 

 言っちゃったからには後で《黄の死(ケロケア・モース)》造らなきゃ。そんな事を考えながら静かに空中で静止、透明化の魔法を完全解除する。

 

「ロイド、ネクタイ曲がってる」

「ごめん。こういう服今まで着た事無くて…」

「そこのバカップル、出てくるよ」

 

 バカップルじゃないし、ネクタイ締めてただけだし…そう思いながらも教会の方を見た時、ゴーンゴーンと鐘が鳴り響きドアが開かれた。そして、そこから現れたのは……

 

「やっぱり、キレイだなぁ…」

「リュートさんも、かっこいい…」

 

 ウェディングドレスに身を包んだレーナさんと、その隣に立つタキシードを着たリュートさんだった。いつの間にかロイドと手を握りあってるけど、それよりもなんか、見惚れてしまう。

 

「ティア、録画は?」

「勿論してる。他愛なし」

 

 歓声や指笛のような音に包まれる中、それなら私がやる事はただ1つ。ご祝儀は…金欠だから後で別の白金貨5枚分くらいのものを渡すとして、森林と神聖の魔法を合わせて…

 

「《フラワーシャワー》」

 

 周りと合わせてとっておきの魔法を使う。不自然じゃないお花と、光系の魔法による禍津払い的な魔法。それに気付いたのか、こっちを向いた2人に手を振ってみる。

 

「後で、この大遅刻の理由ちゃんと説明しないとね」

「そうだな…」

「許してもらえればいいけど」

 

 そんなこんなで残り幾ばくもなかった結婚式は進んで行き、二次会にでも移行するのか分からないけど周りの人が移動し始めた。大勢の人の流れから脱出したところで、ふと思い出したようにロイドが聞いてきた。

 

「あの2人が貴族だって事で思い出したんだか、本当に良かったのか?」

「ふぇ、何が?」

「本当の貴族に成れるって話があったんだろ?領地とか諸々付いた大貴族に」

 

 2人を見て貴族って凄いなって気持ちもあった。反対に人間界で見てきた腐った貴族とか、いざって時に役に戦えない貴族も見てきた。全体的な印象の悪さは置いておいて、私があの話をスッパリ断って脱走したのにはちゃんと理由がある。

 

「まああったけど、私は自分の手に余る物なんて要らないもん。権力を握るなんて柄じゃないし」

 

 そう言ってティアとロイドの手を握り、満面の笑みを浮かべて言う。

 

「しばらくはこうやって、()()()()()の手を握って居られれば十分だよ」

 

 自分にとっての大切なものは、そういうお金とか名誉じゃなくて、この繋がりに他ならないと信じて。

 異世界に転移したと思ったら転生者で、鍛治師の幼女で。女神様を恨んだ事もあったけど、この幸せをくれた事にだけは感謝したいと思う。後で壊毒テロはするけどね!!

 

 〜Fin〜




最後の最後まで作者の意図を無視して暴走するイオリでした。
どうしよう、あとがき書きたくなってきた。

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