異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
「発動、《
この空間の力を使って、俺は1つの魔法を発動させる。傍目にはただ吹く風が強くなった様にしか見えないだろうけど、これでちゃんと完全に発動している。問題はない。
『何も変わらないじゃないか、もしかして虚仮威しなのかなぁ?』
「そんな訳、あるかっ!!」
そう言い切った瞬間、俺は二刀を振り上げた状態で魔神の背後に移動し終わっていた。限界速度を振り切った移動のせいで翼の結界が砕け散るけど、あいつが気付く頃にはもう何もかもが遅い。
「破ぁっ!!」
自分の制御出来る限界を超えた風で加速させ、勢い良く二刀を振り下ろす。まだこれは基本的な使い方、ただ加速しただけ。ザックリとX字に背中を斬られて距離を置く魔神を睨みつけながら、集中する。
風を操作、空気中にあるらしい水分を生活魔法で補いながら凝結。
『痛いよ…どうしてロイドはこんな事するの…?』
「もうその手には乗るか!」
パキパキと音を立てながら俺の周りに作られていた氷柱。圧縮した風でそれらを紛い物に発射する。イオリに撃っても一切意味のない攻撃だけど魔神にとってはそこそこの脅威だったらしく、薙刀で次々と氷柱を迎撃している。
勿論これで終わりなんかじゃない。なめぷ?ってヤツは嫌われるらしいから、迷う必要のない今はもう始まりから終わりまで全力を尽くす。
「《ストームブリンガー》!」
元々俺が父さん母さんと組んでいたパーティーの名前を借りて、二刀を挟み込む様に振る。発生するのは真空の刃を孕んだ2つの大竜巻。氷柱に手間取ってる魔神にそれを避ける何て事が出来るはずも無く…
『あぁぁぁぁぁっ!』
竜巻に巻き込まれ、切り刻まれボロ雑巾の様になっていく。幾ら割り切ろうとしたとは言え、あくまで見た目も声も自分の彼女とほぼ一緒。そんな魔神に攻撃していくのは、どうあっても最悪な気分になるし手を緩めてしまいそうになる。
「だからもう、これで終われよ!!」
合流し巨大化した竜巻の上に、この蒼穹を汚す様な真っ黒で放電を起こす雲が発生している。それは今の俺の心の内を表すかの様で、とっとと振り切ってしまいたい。だからほんの少し魔法で誘導した瞬間…
「《トニトルス》!」
俺の叫んだ魔法名も、魔神の叫び声も掻き消す爆音を轟かせ竜巻の中心に落下して行った。真っ黒に焦げた何かがパラパラと落下して行くのを見て、込み上げる吐き気を無理やり押さえ込んで発動中の魔法を解除する。
「くそっ、うぇっぷ…」
もうやってしまった事とはいえ、本当に最悪な気分だ。悲鳴とか苦痛の叫びとかが頭にこびりついて離れない。自分で自分の彼女を殺させるとか、魔神汚いマジ汚い。
『うふ、ふははは、あはははははははははは――!』
心の中で魔神を馬鹿にして落ち着こうとしている俺の周りに、どこからか黒い靄が滲み出てきた。そして反響しているような、爆発するような嘲笑を響かせる。
「
振り切れて逆に冷静になった頭で、擬似・理想送りを放つ。斬っても焼いても無駄なんだったら…そう思っての行為だったけど、一部分を削り取っただけであまり意味は無かったようだ。ああもうイライラする。
そう一度冷えた頭が沸騰しそうになった瞬間、風に吹かれて黒い靄は流されていった。倒せた感じは微塵もしないし、流れて行った方は…
「イオリが戦ってる方か」
そう言って見る先では、尋常じゃない大きさの火球に俺の使った魔法とは比べ物にならない程巨大な雷が発生している。いや、それだけじゃない。雲海からは極太の氷柱が発生しては砕け、何処からか発射され続けている光線を乱反射させ、その先では竜巻が荒れ狂っている。上空からは一定間隔で光の柱が堕ちて来て、俺の姿で逃げる魔神に殺到している。
集中して探すと、銃砲火器の飛び出した棺桶の後ろに、幾つもの黒い逆さの十字架を浮かべたイオリが、大鎌片手にとても楽しそうな笑みを浮かべながら何かをしている。飛んでくる破片やら何やらは結界とその周囲を回る黒い液体が全て弾いており、怪我はしてないように見える。
「まだ行かなくていいよな。うん」
不思議な事に一定の範囲を超えると何の影響も出していないが、あんな中に飛び込んだら10秒と経たずに死んでしまう未来しか見えない。
だからいつでも駆けつけられる様、ポーションで回復しながらしばらくは様子見に徹しようと思う。
◇
「さて。あなたには選択肢が3つある」
全身を拘束したマスターに化けた魔神。もう何も出来ないそれに杖を向けけながら、私は選択肢を突きつける。勇者?良い盾として使っていたら、フローの上でいつの間にか動かなくなっていた。酔ったらしい、使えない。
「1つ、素直に情報を吐いて本体に戻る。2つ、情報を吐かされて本体に戻る。3つ、記憶ごと全てを喰われる。さあ選べ」
『はっ、そんn』
「答えは聞いてない」
よくよく考えると時間をかけるのは得策じゃないので、頭に
「さて、洗いざらい吐いてもらう」
その前に、このレイ○目のマスターの顔を保存しないと。
イオリンが楽しそうでなによりです(白目)