異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第13話 vs強欲

「女を寄越せぇぇぇぇっ!!」

幻想世界・戦乱の剣(Svartalfheimr Dainsleif)!」

 

 総てを沈静化させる私の世界が広がり、私とロイド以外の全てが傍目には遅くなったように感じる。これで少しは戦いやすくなる筈…

 

「しゃらくせえっ!!」

 

 動きはほんの少しだけ遅くなってはいるが、私の予想は大外れだった。創造を破られてないだけマシだけど、なんでこんなに動けるのさ…

 

「まずはテメェからだ!」

「こっちか!」

 

 そしてそのまま、その巨大な骨腕を振り上げ私に突進してきた。そんな一直線の殴りなんて、タイミングさえ合わせれば格好の的!

 そう思って大鎌で迎撃しようとした瞬間、言い知れぬ悪寒が全身に走った。コレはやっちゃいけない!

 

「《煙幕》!」

 

 大鎌を振り抜こうと構えた体勢のまま、足にはいた靴から生える羽を操作して無茶なバックステップを敢行する。少し腰が痛くなったけど、あいつの攻撃が当たった場所を見て考えが間違ってなかったことが分かった。

 

「嘘…だろ?」

「防御は不可って事か…面倒な」

 

 骨腕の当たった石畳は、砕けるでもなく斬り裂かれるでもなく、ただ静かに粉塵と化して空気に流れていった。時間稼ぎとして放った煙幕も、その四肢に段々と吸い込まれていき…今完全に消え去った。

 

「そうだ、この全てを奪う力が俺の授かった強欲の力。テメェら如きじゃどうする事も出来ねえんだよ!」

「だってさ、どう思う?ロイド」

 

 確かに私かロイドが1人だったらそうだったかもしれない。でも、今の私達は1人じゃない。そう思って隣を向くとロイドと目が合った、なんだか以心伝心みたいで嬉しい。

 

「決まってる」

「「そんなこと、2人でならありえない!!」」

「目障りなんだよリア充がぁぁっ!」

 

 無駄に大きな踏み込みの音がして、また腕を突き出し突進してくる。理性侵食のせいかワンパターンだね。そんな一回見せた単純な攻撃、2度は通じないよ!

 

「ロイド、適当に撒くからかき混ぜて」

「分かった」

 

 まだ確信は持てないから、突進をロイドとは逆方向に避けながらさっきの煙幕と同じナノゴーレムを散布する。さっきと違って魔法は使ってないけど、そこはロイドがカバーしてくれる。

  強欲さんを中心に濃く立ち込める煙幕、これで流れが見れれば…

 

「これでどうっ?」

「効くかぁぁぁっ!」

 

 そう言った強欲さんが煙幕を吸収していくのは、完全に露出している骨腕と流れから見てボロ切れになったズボンの内側だから、これまた骨と化している両脚。という事は、能力の起点は骨の部分!

 

「《風刃・5連!》」

「だから効かねぇんだよっ!」

「《ライトニング・ピアス》!」

 

 ロイドが放った魔法が吸収されているうちに、がら空きとなった肉体のありそうな胴体に速度最優先の雷撃を撃ち込んでみる。

 

「ぐ、がぁ、効くカァッ!」

 

 すぐにスキルで回復されたけど、ちゃんとダメージは入ったみたいだ。という事は腕と脚は攻撃しても意味がないけど、頭と胴体にはちゃんとダメージが通ると。

 

「その厄介で邪魔な手、落とさせて貰うよ」

 

 辺りにまだ漂うナノゴーレム、吸収された分は流石に機能してないみたいだけどかなり大量に強欲さんは吸い込んでいる。そう、今も散布し続けている私の指示通りに形を変えたり、色々できるナノゴーレムを。

 

「《解放(リリース)斬撃(スラッシュ)》!」

「なっ」

 

 攻撃も防御もやり辛くしていた例の両腕を、ナノゴーレムで肩口から斬り飛ばす。地面に骨腕が落下し、強欲さんから驚愕の声が漏れた。何が起こってるのか分からないって顔をしてるけど、説明してあげる義理なんてない。

 

「武技・神風!」

 

 動揺して動きが止まった強欲さんに対して、踏み出したロイドの姿が掻き消えた。技名からして私を助けてくれた時のかな。そう思いながら、私もロイドに合わせて突撃する。

 そんな事を考えていたせいで突撃のタイミングが少し遅れちゃったけど、そのおかげで気づいた。飛び込む私達を強欲さんがニヤつきながら待ってるという事に。

 

「ロイド避けてぇぇ!!」

「ハッ、もうオセェ」

 

 そんな嘲りを込めた言葉と私の悲鳴が交差し、切り落とした骨腕が大きく円を描いて薙ぎ払われる。

 

「くっ」

「お前の命は貰ったぞ!」

 

 私の頭上に、途中で無理に軌道を変えたのか回転しながら、まだ動きの止まっていないロイドが現れる。けど、強欲さんの言う通り私はロイドみたいに速くないし、突撃中だからこのままじゃ右前から来ている骨腕に当たっておしまいだ。

 

「《フラッシュ・ブリンク》」

 

 それでも、攻撃の回避方法なんて幾らでもある。

 例えばこうやって、相手の頭上に転移するとかね!本当はもっと離れたかったけど、実は急いで使ったからこれ位の移動距離が限界だったりする。

 

「《裂空刃》」

 

 幾ら大鎌が長物とは言っても、だいたい5mは空中にいるから普通は刃は届かない。だけど、高度な次元魔法を使えるなら話は別になる。

 今思い出したばっかりの技だけど上手く成功したみたいで、振り抜いた私の大鎌から刀身が消滅する。

 

「かはっ」

触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)、あと喰らい尽くせ暴食!」

 

 そしてその消滅した刀身は、喰らって発現した宝具もどきの効果で転倒している強欲さんの胸を貫く形で出現する。

 本当はあんまり使いたくないけど、血に濡れた刀身が《暴食》のスキルと本来の性能を組み合わせ発揮し、強欲さんの血も、魂も、ステータスをも喰らい吸収していく。

 

「ヴォァァァァァッ!!」

「きゃっ」

 

 ある程度喰らった所で、最早人の物では無くなった声に吹き飛ばされ、突き刺していた大鎌も抜けてしまう。

 

「ごめん、俺が不用意に突撃したせいで…」

「特に怪我はしてないし、大丈夫だよ…ゲホッ。へ?」

 

 体勢を立て直し、戻ってきたロイドの隣に浮かび息を整える。そうして話し始めた瞬間、私は口から血の塊を吐く事になった。

 暴食にはなんの異常も無し、そもそもアレで食べた物はエネルギーとステータスにしかならない。攻撃も毒ももらってないし…そう思った時、ピシリと微かな音が大鎌から響く。

 傍目には見えないけど内部で亀裂が入った事は明白で、聖遺物としての大鎌を使ってる以上あり得ることだけど、さっきも確認した通り私には異常は一切ない。つまり、他の要因で私の魂と直結してる大鎌が傷付いたという事になる。それが指し示すことは…

 

「嘘でしょ?ティア」

 

 ティアとのパスはしっかりと繋がっているし、私の杖があるけれど…それは、ティアが力尽きたという事に他ならなかった。

 




聖遺物を砕かれると魂が砕け散って死にます(元ネタの性質)
イオリの大鎌も壊されると瀕死になります。その分耐久性は、邪神が踏んでも大丈夫です。100柱乗ったら壊れます。

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