異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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第2話 なんで私ばっかり

「天上院、一つ質問。この街の近くに、龍脈が通っている場所はある?」

「は?龍脈…ですか?」

「そう。早く答えて」

 

 何度目になるかわからない護衛中に飛び出してきた魔物を斬り倒した後、見るからに疲れ切った様子のティアさんがそう聞いてくる。

 えっと、龍脈って所謂大地の気の流れってやつでしょ?確か似たような話をいつだったか聞いたような…

 

「確かここみたいな辺境の都市って、防衛都市も兼ねてるから王都と同じ仕組みの結界を張ってて、その動力源が地面の中を通る大いなる魔力の流れとか言ってた気はするけど…」

「それで十分。この避難が終わったら休ませてもらう」

「もしかして、魔力切れとか?」

 

 普通そんな所から魔力を回復しようなんて思わないだろうけど、もしかして俺もそういうのができたりするのか…?

 

「そう。元々私はMPが少ない状態で、避難の護衛に参加したから。マスターとロイド、あとマスターのペットはまだ保ってるけど」

「騎竜演舞、壱の舞ーー浄化の蜜雨(アムリタ)ぁ!」

 

 ティアさんがそこまで言い終わった時、ようやく慣れてきた蒼矢の声が響き、魔物の減った空に浮かぶ大きな紋章から光が降り注ぐ。

 その光を浴びた途端、少なからず追っていた怪我が消えて溜まっていた疲労も打ち消されていく。むしろ、心なしか身体が軽くなってるような…

 

「こう下を気にしてばっかりだと集中力が保たないし、魔力もじき底をつく。少しは休ませないと」

「確かに、ここで戦力が減るのは痛いしね」

 

 降ってきた魔物の骨を、俺は結界で防ぎティアさんは門の中にしまいながら会話を続ける。

 

「それと、龍脈から力を吸い上げるのはあなたじゃ無理。死ぬことになる。私とマスターが特別なだけ」

「それって、例の暴食…?」

 

 それなら、あんまり俺としては勧められない。制御はできてるみたいだけど、もし失敗とかをしたらとんでもない事態になるかもしれないし…

 

「確かにMPを貯めるのは暴食だけど、吸収はマスターが作った武器。だから問題ない」

「そうですか、それなら良いんですけど…」

「それじゃあ話は終わり。キリキリ働け」

 

 言葉の一つ一つが辛辣だなぁと思いながらも、今がまだ非常事態な事を思い出し、空から降ってくる肉塊や襲ってくる魔物の撃退に戻るのだった。

 

 

「せいやぁぁぁぁっ!!」

 

 自分に気合を入れ直すように叫び、目の前の魔物を両断する。そのおかげで少しMPが回復したから、自分の疲労の回復に当てる。そして身体が少しポカポカする感覚に足を止めた瞬間、さっきから私が戦ってる魔物の群れが私を攻撃する。

 

「ああもう鬱陶しいなぁ!」

 

 何匹も残る空飛ぶ蜘蛛の群れ。しかもその脚はファンネルみたいに飛び回るし、今みたいに捕まえた相手を白く粘ついた糸でぐるぐる巻きにして拘束しようとしてくるし…

 

「リジェクトッ!」

 

 背負った棺桶の効果で、今まで吸収した衝撃を全方位に解放する。さっきから何回か同じ事を繰り返してるけど、今回はMPがあるから一味違う。

 

「《(ファイアリー)・大文字一面獄炎色》!!」

 

 カウンターで放った私の魔法は空間を縦横無尽に燃え広がり、30秒ほど経った途端跡形もなく消え去った。建物への燃え広がり…なし、敵性魔物の影…なし。

 

「よし!あとはロイドとフローの援護に…ってあれ?」

 

 援護に向かうために空を飛ぼうとして中を蹴ったのにいつもの何かを踏みしめる感覚が無くて、なんとも情けないポーズで二階建ての民家の屋根に落下する。

 

「いてて」

 

 ゴンッと鈍い音を立てて落下した私は、さっきのカウンターで空を飛んでる分のMPも使い切っちゃった事を、靴から生える消えかけの羽根を見て察する。

 

「という事は…飛んでる敵もそんなにいないし、しばらくは地上戦かな?」

 

 大鎌を担いで空を見る限り、フローが相手をしてる敵は残り数体だしロイドは…今全滅させた。私?さっきの蜘蛛で最後かな。

 なんて事を思っていると、私の背負っていた棺桶が民家の屋根に鈍い音を立ててめり込んだ。完全な魔力切れ…やっぱり機能詰め込みすぎるとダメだね、要改善っと。

 

「とりあえず棺桶は全部仕舞って、回復しつつ後は屋根の上から探すのが良さそうだね!」

 

 合計350kgの棺桶なんて邪魔でしかないから門の中に放り込んで、少しずつ増えてきてるMPを怪我と疲労の回復に当て、隣の民家の屋根に飛び移ろうとして…

 

「きゃっ!?」

 

 下から伸びてきた生暖かい植物の蔓が右足に巻きつき、石畳の上に叩きつけられた。うぅ…いくらDEFが高くっても、痛いものは痛いんだよ!って、

 

「ちょっ、まっ、離して!動かすな!」

 

 左足にも蔓が巻きつき逆さまに釣り上げられ、何が楽しいのが足を広げられた状態の私をブンブン振り回してくる。大鎌は落としちゃったし、おかげで、この!適当な剣も届かないし、ナノゴーレム(切断)は自分を斬っちゃいそうで使えない。

 それに、なんだか媚薬を被った時と似たような気分に…しかも身体に力が入んないし。私は女騎士じゃないって!

 

「ひゃんっ!ちょっ、や、そっちはやめっ」

 

 暴れてた手にもなんかヌメッとした蔦が巻きついてきて、段々上に登ってくる。それのせいかすごく甘いにおいがしてきて、よくわかんないけどあたまがぼーっと…

 

「武技・神風!」

「アル・シャマク」

 

 ぼーっとした頭で、下から伸びていた何本もの蔦が輪切りになって、本体も黒に呑まれて消えるのが見えた。えっと、このままじゃ私落ちちゃうんだけど…

 

「よっと。やっぱり軽いな」

 

 そんな事を思っていたら、私は見事にロイドにキャッチされた。お姫様抱っこで。でもなんだろうこの、こう、ロイドを見てるとムズムズするっていうか…

 

「ん、ろいどぉ…」

 

 無意識に自分がそんな事を甘えたような声で言って手が伸びた瞬間、私はまだ正常を保ってた演算補助の一つを無理矢理動かし、毎度お決まりナノゴーレムで自分で自分の意識を落とした。あ、危なかった…

 




触手&媚薬ーズ「「つまり俺たちには、状態変化無効なんて効かないという事だったんだよ!」」
ΩΩΩ<な、ナンダッテー

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