異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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やっぱり、1日休むとダメですね。
毎日書かねば(夏風邪気味)


第16話 清算

 屋根の上を飛び移る。一歩一歩、確実に目的地に近づいて行き、開いていた窓からクトゥルフらしく進入する。あぁ!窓に!窓に! なんて言う暇は与えさせない。タクはまあ起きてたし別にいいでしょ。

 

「戦ってる最中に後ろから撃たれたくないから仲直りに来たよタク! ついでに先生に挨拶してきたいから場所教えて?」

「なんで窓から!? それになんで朝っぱらからこんなにテンション高いのさ…あとどことなく2人ともボロボロだし」

「少し、戦ってた」

 

 あの後落ち着くために、私はティアと組手をし始めたんだけど結局途中から熱が入ってきてガチバトルに変わり、アドレナリンがドバドバ出てこうなった。だけど元々の予定を崩す気はないし、徹夜テンションのままタクのいた部屋に突入したのだった。

 

「とりあえず柊さんは大っ嫌いだけど、まだタクは信頼できるしね。主戦力っぽいから戦うんなら仲直りしておかないと」

「後ろから撃たれたら、堪ったもんじゃない」

「と言うわけで、はい握手ー!」

「あ、え、あ、うん」

 

 若干タクが引いてるけど、有無を言わせずその手を握ってブンブンと振る。咄嗟に思いついたのがこれくらいしか無かったけど、抜けきらない徹夜テンションのせいでそんなに気にならない。

 

「それで、先生って今どこにいるのか知ってる?」

「えぇ…まあいっか。第3の街…って言っても分からないか。でも街の中央に転移のための門があるから、そこから行けるよ」

「ん、分からないけど分かった! じゃあね!」

「バイバイ」

 

 そう言って私達は、特にこれ以外の用もないので押しかけた部屋から出て行った。帰り際に「まるで、タイヘイヨウノアラシ…いや違う」なんて聞こえたけどまあいいや…けど、絶対にそれは違う。ヤマトダマシィー!(米国製)

 

 

 

 

 

 なんて事を思って、本当に街の中央にあったゲートを潜って転移したんだけど…

 

「うーん、詳しい場所を聞いてなかった…」

「マスターの、バカ」

 

 あれから1時間弱、どの街にいるかしか聞いてなかった私達は、タク曰く第3の街を放浪していた。うーん、ギルドに行っても知り合いがいないから聞けないし…

 

「私とティアが次元魔法使うのは…」

「無し、無駄に混乱を招く」

「だよねぇ…」

 

 はぁ…と2人揃ってため息を吐く。特に何かいい考えもないし、さっきからお腹空いてきたし…一旦休憩にする?

 

「そうする。マスターとガチバトルしたせいで、オナカスイタ」

「ん、了解! 私もお腹ペコペコだよ…ってむむむ、主菜のストックがない」

 

 ちょっと行儀は悪いけど食べ歩きでもって思ってストックを漁ってみるけど、深夜帯に食べてたせいか1つもなくなっていた。…最近二の腕がプニプニしてきたから、ちょっとは運動しないと。

 

「という事は、お店か自炊?」

「なんだけど、お店も自炊出来る場所も分からないんだよなぁ…」

 

 そう言ってリフンと比べて緑の多い街をぐるりと見渡す。獣人モードに成れれば、匂いで色々判別できるんだけどここじゃ無理だし…

 

「大丈夫? あなた達。この街に来たのは初めて?」

「あ、はい、そうなんですよ先生。私達先生を探してて……って、先生?」

 

 項垂れていた顔を上げると、そこには懐かしい先生の姿があった。あるぇ? なんで結構探したのに見つからなかったせんせーが?

 

「確認する。あなたが勇者達の先生?」

「そうだけど、私に何か用かな?」

「はい! 色々と聞きたいことがあったのと、挨拶をと思って」

 

 話を聞いてみた限り街をダンジョン化させたって話だから、何をどうやったらそんな事が出来るのかとか、柊さんの評判がどんなものなのかとか。そこら辺の事を考えて言おうと思った瞬間、ひときわ大きくお腹がぐぅと鳴った。

 

「それよりも前に、まずはご飯を食べましょう?それとも、そんなに急ぎの話なのかしら?」

「はい…お言葉に甘えさせていただきます」

「まずはご飯」

 

 今の私と先生は他人。それを改めて意識するけど、正体を明かさないままじゃ話聞けないよなぁ…まあ、ご飯食べてから考えるか!

 

 

「こほん。これで、私に聞きたかった事は全部でいいのかな?」

 

 私たちの反対の席に座った先生が、そう咳払いをしてから言う。いやー聞きたい事は聞けたし満足満足。柊何某は、色んな人から調子乗ってるとかウザいみたいな印象が強いっぽいしやったぜ!

 

「はい! ありがとうございました」

「感謝」

 

  正体を明かさないようにしようと思っていたけど、普通に伝わってたんだよね…いや、その分話はしやすかったからいいんだけども。あと、やっぱりダンジョンマスターっているんだね…

 

「それじゃあこっちからも質問していいかな? 白沢君」

「え、はい。答えたくない事以外なら」

「白沢君って、地球に戻れるでしょ」

 

 そう真剣な目で先生が言った瞬間、空気が凍った。うーん、これ言っていいのかな? どっちにしろ戦いが終わったら言わなきゃだけど…

 

「……情報を広めないなら答える」

「そう言ってる時点で、もう出来るって言ってる様なものね。でもいいわ、広めたりしないから話してくれる?」

 

 確かに今のティアの答え方じゃ、出来るって言ってる様なものだよね…まあいっか、どうせ広められても出来やしないんだし。

 そう覚悟して、小声で私は言う。

 

「一応できますよ。制限だらけですけど」

「その制限って言うのは?」

「最大人数5人、消費MP片道最低10万、安全性を確保するならインターバルに2日程」

 

 ここ最近で魔力回路なんて物を知っちゃったから、ティアの言う通りそれくらいにはなるよね。それで40人割る5人で8グループだから、全員生きてると仮定して終わるまで約2週間か…

 

「凄い事だけど微妙ね」

「仕方ないじゃないですか、元々団体での移動なんて考えてなかったんですから」

「頼まれても、すぐには出来ないとだけ覚えておいて欲しい」

 

 そう、私だって神様殴ったりみんなを帰したりしたいけど、完全にMPが足りない。貯めてはいるけど、アルさんとの戦いでかなり削れちゃったから片道分しかない。せめて往復分は集めないと。

 

「ダンジョンコアから魔力を供給すればできそうだけど、今やったら街が敵に落ちるわね」

「ですよねー」

「今の状況で、戦力は減らすべきじゃない」

 

 私にだって情も愛着もあるから、人間界を見捨ててーって選択はしたくない。このまま放置しておくと、他の大陸にも飛び火しそうだし。

 

「それね…なら転移はこの戦いが終わってからという事で、最後に1つ質問。白沢君、あなたはどうするの?」

「こっちに私は残りますよ。地球の戸籍もないし、姉ちゃんに時々あいに来てくれれば良いって言われましたし」

 

 それに…

 

「ロイドもいるし?」

「ファ!? ちちち違うよティアなに言ってるの!! それにロイドなら一緒に転移すればいいだけってちーがーうー!!」

 

 心を読まれた訳じゃないけどこれ深層心理とかそういうのかもしれなくてつまり私はロイドが嫌いじゃないからイコール好きかもって事になってつまりはそういうことになってイコールあれなにこのループ?

 

「元々女の子みたいだったけど、もう完全に女の子になってるのね…好きな男の子、絶対に逃しちゃダメよ?」

「せんせーまでなんでコレに乗ってくるんですかーー!!」

 

 昼間のお店屋さんに、私のそんな声が虚しく響くのだった。

 


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