異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
※人によって不快な表現になっているかもです
「23、29、31、37、41、43…えと、えと…」
「大丈夫か?イオリ。顔真っ赤だぞ?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
素数を数えてたらいつの間にか、不思議そうな顔をしたロイドの顔がすぐ目の前にあった。しかも真っ赤に茹で上がった私の顔の、おデコに手を当てている。
多分顔真っ赤だし熱があるか確かめてくれるアレなんだろうけど、思考が色々女子っぽくなっちゃってる今の私にとっては逆効果で…
「凄く熱いんだが……本当に大丈夫なのか?昨日の怪我が響いてるとか…」
「気にすんな坊主。しばらくすりゃあ治るさ」
陸に打ち上げられた魚みたいに口をパクパクしてるだけの私の代わりに、ニヤニヤしたシイラさんがそう言ってくれた。本当にありがとうシイラさん、ちょっとまだ頭がぐるぐるでしゃべれんとです。
「でも、昨日の…」
「大丈夫だ大丈夫だ。年の功ってやつを信じろ」
「はぁ…」
よーし大丈夫だ落ち着いてきた。深呼吸すればいける。はい落ち着いてー、すーはーすーはー。
「嬢ちゃんは腹空かしてるみたいだし、ついては手でも引いて飯屋にでも連れてってやればいいんじゃねえのか?」
「わかりまs「手は引かれなくても歩けます!!」
ロイドの言葉を塗り潰すようにして真っ赤な顔で叫ぶ。ふぅ…こんな状態で手なんて繋がれたら、一体どうなるかわかったもんじゃない!
お、おうってシイラさんが引いてるけど、そんなの知らないったら知らないもん!
「えっと…とりあえず、どっかに食べに行くか?」
「えぅ、あぅ……うん」
改めて面と向かって話しかけられると、私が絞りだせたのはそんな言葉だけだった。うぅ、これじゃまるで本当に女の子みたい…いや今の私は女の子だけどぉ!
そしてそのまま、私は向こうも若干赤くなってるロイドの後に付いてお店を出ていくのだった。ずいぶんとしおらしい態度じゃねえか、脈アリか? なんてシイラさんが言ってたけど聞かないことにする。
「そういえばあの店で何を買ってたんだ?」
真っ赤な顔のまま、二、三歩後を俯いて進む私にロイドがそんな事を聞いてくる。ねえ、そんな事聞くなら私もロイドが買った髪飾り誰にあげるか気になるだけど。
「薬」
「なんの?」
「魔力回路の治りを早めるやつ」
「そうか」
………気まずい。沈黙が凄く気まずい。
髪飾りの事は確かに聞きたいけど聞きにいける雰囲気じゃないし、かといって向こうが言ってくれる訳でもないし…
そんな風に悶々としながら道の端を歩き、ちょっと暗めの路地裏に続く道に差し掛かった時、突然私はそちらの方向に凄い勢いで引っ張り込まれた。
ろくに頭の働いてない状態の私は、そのままなす術もなく地面に足のつかない宙ぶらりんの状態で壁に押し付けられる。全身が押し付けられてるこの感じ、人の手じゃない……魔法?
「よう、久しぶりだなぁクソ幼女」
そんな疑問の中、暗がりの中現れたのは左手を突き出し血走った目をした大柄な男。ちょっとしたホラーだ。
「えっと…誰です?あなた」
「お前に全てを奪われた、モーブだよ!!」
そんな怒鳴り声と共に、右手で思いっきり顔を殴られる。ちょっ、いきなり何するのこの人!?
今ので頭が完全に戦闘モードに変わったけど、魔法が完全に使えない上に踏ん張れない空中じゃ、この全身を拘束してくる魔法を振り解けない。空を飛ぶための靴じゃないし、どうしよう…
「お前を攫う機会を待ってたんだよ、お前が魔法を使えないって聞いてなぁっ!!」
「いや、そんなこと言われても知らないですよ」
魔法さえ使えればこのくらいの魔法程度……念話もなぜか飛ばせないし、口の中が少し切れたのか血の味がする。
「ああそうかよ、トントン拍子でランクアップしてったお前にとっては、俺なんか覚える価値もなかったか。お前がギルドに入った直後のことなんてなぁ!」
「ぐぅっ」
今度はお腹に右の拳が突き刺さる。あんまり痛くはないけど、胃袋に直撃したのか吐き気がこみ上げてくる。ちくせう、思い出したし色々言いたいことはあるけど気持ち悪くて言えない。
「お前に負けてからの俺の苦労が手前にわかるか?あぁっ!?」
「うぐっ」
裏拳が顔に入る。さっき出した大鎌をそのままにしておけば良かったなぁ…と落ち着いた思考で考える。こんな状況でも落ち着いてるって、私もだいぶ頭がおかしいな。うえぇ…鉄の味がする。
「お前に金も武器も奪われて、ギルドのランクも降格させられて!」
「うっ」
ひざ蹴りが鳩尾に突き刺さる。うわぁミシッていったしジンジンする。けどまあ、クトゥルフと戦った時に比べればなんてことない。でも骨にヒビでも入ったんじゃないかな? 思った以上にこいつは強いらしい。
「挙句の果てに、ついたあだ名が【雑魚ロリコン】だ!どこまでのし上がってもそのあだ名が付いてくる気持ちがわかるかぁ?【流星群】さんよぉ!!」
魔眼の情報通り、私の顔面に拳が打ち込まれる。目は閉じたけど、流石に顔は痛い。鼻血でてきた…泣きそうになるけど、それを押し殺して血混じりの唾をペッと吐き捨てて言い返す。
「知らないよそんな事。そもそも酔っ払って勝負仕掛けてきて、負けたあなたが悪いんじゃ…」
「その態度が気に入らねえんだよ!!」
そう言ったモーブが磔にされたままの私の胸ぐらを掴み、そのまま引きちぎる。え、は…?服、2着目…
「な…に……を?」
「散々言われてる通り、俺は所謂幼子児性愛者ってやつでなぁ…」
その後も何か言ってるみたいだったけど、一切耳に入ってこない。
え、何ちょっと待って?なに、インガオホー?ロリコン?エロ同人?そんな言葉が頭の中を駆け巡る。まだスポーツタイプ的な下着こそあるもののそれって…
「え、嫌!放して!誰か!」
「ははっ!もっと泣き喚け!誰にも聞こえねえだろうがなぁ!アヒャヒャヒャヒャ!!」
全力で魔法から脱出しようともがくけど、若干魔法が軋む感じがするだけで脱出はできない。ちょっ、これはシャレにならないって!ロリコン(悪)とかバカじゃないの!?
そんな事を思ってる間にも、私の身体にモーブの手が伸びてくる。流石に初めてがこんなのはやだ、絶対やだ。本当に、誰でもいいから助け…
「イオリに何してんだお前っ!」
私に手が届く寸前、一陣の緑風が通り抜けた。
モーブが裏路地の奥に吹き飛ぶ。それにより謎の拘束から解放され、どしゃりと落ちた私が見たのは、この寒い中汗だくで右手を振り切った体勢で息を切らしている…
「へ、あ…ロイ、ド?」
「はぁ…はぁ…、間に合った」
ついさっきまで隣を歩いていた、仲間だった。
どうしよう。何か、ロイドが凄くカッコよく見える…
イオリちゃん、落ち着いてるように見えるけど焦りまくりでした。
-疑問があったので追記-
Q.血出てるけどDEFのステータスって意味あるの?
A.防御系のステータスが上がると身体が硬くなるとか恐怖でしかないので、ダメージ計算的サムシングにしか反応しない事になりました。衝撃はある程度通ります。
-追追記-
Q.急に主人公が弱くなってキモい
A.主人公の状況
・普段五感と同様に使っていた機能の一時的に喪失
▷対抗手段の激減
・疲労困憊
▷集中力の低下
▷注意力の低下
・極度の緊張(男女の仲的な)
・極度の動揺
・不意打ち
・自分より身長のデカイ、キチッてるおっさんの怒鳴り声
・「死」とは別系統の、始めて体験する恐怖
ここまで重なってるのに、普段と同様にぶちのめせって流石に無理があると思うんだ…。多少振り切れてるとはいえ、感性は(生死感)を除き一般人のままですし…