異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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ここには なにも なかった !!



第2話 勇者側の鍛冶師

「確かここで下着とか色々服類を買ったんだっけ?懐かしいなぁ…」

 

 久々に私1人だけで街を歩いていると、この世界に来てからすぐの頃を思い出す。なんだか懐かしくなって、髪の毛を最近はしていなかった長めのリボンでポニーテールにしたり、例のピンク色の鍛冶用ハンマーを腰に佩いたり?してみているせいか、色々懐かしい思い出が蘇る。

 因みに青いリボンだけど例のヒモとか言っちゃいけない。ヘスティア様は敵。うしゃー。

 

「あとは…そうそう、ここでナイフ作ったんだよね。もう原形なんてないけど、あの時作ったやつを今でも使ってるし」

 

 私はギルド近くの武器屋さんの前で足を止めてそんな事を呟く。結構お世話になったし、挨拶がてら入ってみようかなぁ。そう思った私は、入り口のドアを開け放つ。

 

「お久しぶりでー…って、あれ?お店間違えた?」

 

 扉を開けた先に広がっていたのは私の記憶にあるいかにもファンタジーな装備屋さんではなく、現代のショッピングモール風な雰囲気の店内だった。置いてある武器防具類も、前までは+2〜5だったのに+10〜13と比べ物にならないくらい上質になってる。

 

「いらっしゃいませー」

 

 カランカランと鳴った音を聞いてお店の奥から出てきた人も、気配の無いあのおじさんではなく高校生くらいの黒髪女子で…って、

 

「なるほど、ここが勇者の1人がやってるって鍛冶屋さんになったんだ」

「えっと、私がそうだけどどうかしたの?お薬とかは隣のお店だよ?」

 

 私をお使いかと思ったのか、隣の雑貨屋さんを教えてくれる多分元クラスメイトの人。覚えてない顔の同級生とはいえあくまで元同級生。そんな人に子ども扱いされるのは、なんかムズムズする。

 

「久しぶりにこの街にきたから、前にここで武器屋をやってた人に挨拶しようと思ってたんです! けどお姉さんに店長さんが代わっちゃってたみたいだから、挨拶はできないなって」

「そうだったのね。ごめんなさい、私も前ここでお店をやっていた人がどこに行ったから分からないわ」

「そうですか。それじゃあ、またいつか…」

「ちょっと待って!」

 

 うーん、あんまり気晴らしにはならなかったなーって思ってお店を出ようとした時、なぜか呼び止められた。

 

「最近来た銀髪の小さい女の子…あなたって、鍛冶師のSランク冒険者の人よね!?」

「鍛冶師のSランクなんて、多分私しかいないと思うけど…」

「私が作ったこの武器、どうかなっ?」

 

 頭の上に?マークを浮かべ首を傾げていた私に、自信満々でアイテムボックスから取り出した一本の鞘に入った剣を見せてくる。とりあえず両手で持って、鞘から抜いて見てみる。

 刃の部分が両刃で長くて細め、結構重めだし柄は長いから、分類はバスタードソード…でいいのかな?使われるのがミスリルとアダマンタイトの合金だから、硬いし魔力は通しやすいけど…

 

「+が13、特別な効果が乗ってる訳でもない。重心は分からないけど、合金に不純物が混ざってるし…うーん、普通?多分私が少し前までいた魔界だと、下手な戦い方したらすぐ折れちゃうんじゃないかな?」

 

 なんかガッカリだなぁと思いながら、私は思った事をそのまま口にする。私がリュートさんにあげた30分くらいで作ったやつの方がマシだった気がするし、今仕舞ってる剣の中にはこれ以上の奴がゴロゴロあったはず。

 

「け、結構自信作だったのに…」

「とりあえず、何か魔法陣でも彫ってみたらいいと思うよ! そうしないと、せっかくミスリル使ってるから魔力を通しやすいのに無駄になっちゃうもん」

 

 若干錬金術師とかの仕事になっちゃうかもしれないけど、ここにあったお店で溶かしたミスリル製のモブの剣ですら、スピードが上がる魔法がかかってたし。

 そんな事を思いながら、左手の親指で先っちょから中間くらいまでの場所の刃をなぞってみる。

 

「ちょっと何してるの!?血が出てるじゃない!?」

「え、斬れ味の確認ですけど…」

「とりあえず絆創膏って異世界だからないじゃん!」

「だ、大丈夫ですよ治りましたから」

 

 魔力が使えなくてもどうせスキルで傷は治ってるから、出ていた分の血を舐めとってから私は言う。まあ、西洋剣ならいいんだろうけども…

 

「あと、もうちょっと斬れ味はあってよかったかもです。多分粘液とかを纏った相手だと、この斬れ味じゃ突くくらいしかできないだろうし」

 

 モンハンで言うなら、まだ緑ゲージだから青ゲージくらいにはなってた方がいいんじゃないかなって感じ。私の大鎌?最高だと多分紫ゲージだと思う。

 

「こんな小さな子に言われるのは嫌だろうけど、頑張れ!だよ」

 

 笑顔でサムズアップしながら私は言う。多分魔力が使えない今の私でも、これくらいならすぐに作れるしね!

 下を向いてプルプルしてる元クラスメイトちゃんだけど、私から見た事実はそうだし…

 

「うぅ、そんな事いうならあなたの作った1番凄い物を見せてよ!」

「い、1番凄い物ですか?」

「そんなに言うくらいなら、よっぽど凄い物なんでしょうね!?」

 

 顔を上げて、ズイっと詰め寄ってくる。えっと、私の最高傑作って言ったらティアの杖と私の大鎌だけど…

 

「私の主武器ですし別にいいですけど…食べられちゃいますから、絶対に触らないで下さいね?」

「え、食べられ?」

 

 さっきより速いペースで元クラスメイトちゃんが後退する。実際食べられちゃうし…って、そういえばあんまり見せない方がいいんだっけ?でも一回見せるって言っちゃった手前ダメっても言えないし…

 

「見せる前にこれあげます。魔法陣とか色々刻んでるから、これからの参考にでもどうぞ!」

「えっと、ありがとう?」

 

 大鎌を見せる前に、仕舞い込んでいた大量の武具から剣を一本取り出して渡す。あれだけ言っておいて、何もしないなんてただの嫌なやつになっちゃうしね。

 いや、今でも十分嫌な子どもだろうけど、売ったら金貨1枚くらいにはなるやつを無料でプレゼントしたしいいよね!

 

「それで私の最高傑作の方は…」

 

 ごくりと唾を飲む音が聞こえる。えーと、銃形態のまま出したら面倒くさい事になるだろうから中で大鎌に変形させて…

 

「えいやっ!」

 

 そんな掛け声とともに一気に引っ張り出す。うん、この謎の威圧感、ひび割れた刀身、メカメカしいデザインの柄部分。偶に変な光が洩れてたりするけど、それもなんか呪われてる感じでいいよね!

 

「うん、これが私の最高傑作の大鎌ですけ…ど……」

「きゅう…」

 

 満を持して取り出した大鎌を見たのか雰囲気に当てられたのか、明らかに目が回って気絶してしまっており…

 

「わわっ!せ、セーフ」

 

 魔法無しの身体能力だけで回りこみ、全力でどうにか支える。

 とりあえず、奥の方に寝かせてくるとして…うん、フルーツの盛り合わせと『ごめんなさい』って書き置しておけばいいよね!




※作者の低テンションによりイオリちゃんのテンションも低めです
-追記-
昨日一瞬日刊ランキング11位でまた笑ってた作者


ここにも 何も なかった!

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