異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜 作:銀鈴
ルールを守って、楽しくポケモンゲットだぜ!です。
完全に気持ちは不完全燃焼ではあるんだけど、今更タクを無視して戦闘を続ける気にもなれないから、大鎌を背負って散布していたナノゴーレムを回収する。創造も一応解いておく。
「アルディートさんも、彼女達は敵じゃないです!」
タクは既に少し錯乱してるみたいだ(すっとぼけ)というか、そっちが最初に攻撃してきたんでしょうが。そのせいで私達全員少なからず怪我した訳だし。特にロイドは……って、ロイドは?
「ん、連れてきたよマスター」
「えっと、これは何がどうなったんだ?」
「私もよくわかんない」
そんなことを思った途端、私のすぐ隣にティアとロイドが転移してきた、流石ティア。なんて思っていると、シュバッという音が似合う感じでティアが戦っていた筈の女子がタクの隣に現れる。むぅ……
「でもあの子達が、海堂達と同じようなスキルを持ってるのは間違いないんでしょう?」
「それでもだよ。海堂の洗脳には誰もかかってないみたいだし!」
「まあ私にも洗脳関連はされてないって分かるけど! なんで委員長はあの子をそんなに簡単に白沢君だって信じられるの? あの写真だって本物っては言えないんだよ?」
「最初から蒼矢かもって疑ってたじゃん!」
物凄くイライラが溜まっていく中、一つだけ気になるワードが聞こえてきた。あの写真?
「マスター(女)がマスター(男)って分かるように、この前地球で撮ってきた写真を見せた」
「あ、あのみんなで撮ったやつ?」
「そうそれ」
まあさっきの話ぶりだと、元々私が僕って疑われてたみたいだしそれなら簡単に納得出来たのかな? というかなんなの、確か柊とかいうあの女子。タクの隣でたらたらたらたらと……
「そういえばロイド、あのすごく強いおっさんって誰だか分かる? 獣王様と同じくらい強かったんだけど……」
「え、知らないのか?」
「うん」
ロイドが凄く驚いた目で私を見てきてるけど、知らないものは知らないもん。そもそも私が人間界にいたのって、一ヶ月あるか無いかだし。
「人間界最強って言われてる、王都のギルドマスターだよ。確か名前は、アルディートだった筈」
「……私、あの人の剣木っ端微塵にしちゃったんだけど」
若干冷や汗が流れる。どうりで異様に強いし、剣も使い込まれてると思ったよ。獣王様の装備とクラネルさんの家に置いてあった物を除いて、初めて見た+19っていう超高品質だったし。
今も柄だけになった剣を見てるし、怒りに任せて凄くマズイ事をやっちゃった気がする。
「えっと、剣、壊してしまってごめんなさい」
「うちのマスターが、迷惑をかけました」
まだ結論が出るのは先そうなので、言い争ってるタクと柊は無視してアルディートさんに頭をさげる。まあ、人間界最強って言うんなら、あの化け物見たいな技の火力と、鎮静下でのあの動きにも納得だね。
「まあ気にすんな嬢ちゃん。ここで壊れるっつー事は、いつか駄目になる運命だったんだよ」
頭をわしゃわしゃと撫でられるけど、そんなことより大切な事が今は一つある。いや、だってこの人ギルマスなんでしょ?
「私、これでも一応鍛冶師をやらせて頂いておりますので、注文して頂ければ最高の一本を作るしょぞんです。なので、ギルドからじょめーする事はご容赦いただけませんでしょうか?」
敬語とかがおかしくなってる気がするが、出来る限りかしこまってお願いする。ギルドに加入してないと、お金の収入源が道具の販売しかなくなっちゃうし、それじゃあ若干赤字になると思う。権力には勝てなかったよ……ペンは剣よりも強い。
「ははっ、そんなに畏るこたぁねえよ。まあ剣自体は後で頼むが、こんくらいで除名なんてしたりしねえよ。隣のその子は精霊か? 人族で精霊を使えるなんて奴、今まで数回しか見たこと無いぜ?」
「マスターは、命の恩人だから」
退屈は人を殺すっていうし、ある意味命の恩人なのかも。そんなことを考えついた時、いままで平静を保っていたけど私の堪忍袋がポンって破裂した。
時折チラ見していたけど、タクと柊
「ちょっとスミマセン、流石にあの2人イラつくので怒ってきます。ロイド、ちょっと来て」
「え、ああ」
若干困惑気味のロイドの手を引いて、アルディートさんの前から去って言い争ってる2人の前に出る。目上の人との話を切っちゃう感じで悪いと思うけど、もうプッツンしそうだし。
「ああもう煩いっ!」
さっきから散々向こうだけで言い合ってこっちには何も説明がないし、ふもうなろんぎってやつになってるしなにより!
「あのさぁ……こっちは魔界から帰ってきたばっかりであのよく分からない洗脳された人たちに襲われて、それから逃げて馴染みのある街に戻ってきたの! そんなところをいきなりタク達に、事情説明もなにも無く殺しに来られたんだよ? まず何かいう事があるんじゃないの!?」
「えっと、そのことは……」
は? 『そのことは』?
「そのことはって、普通それは一番最初にいう事でしょうが!」
私の怒鳴り声なんてそんなに迫力はないと思うけど、それでも2人は固まっている。うん、やり過ぎないように隣に精神的ストッパーとしてロイドにいてもらってるし、思った分だけ全部言おうそうしよう。
「アレ防げなかったら今頃私達全員、ミンチだよミンチ! それに私、前にも勇者に殺されかけてるんだけど? 私も勇者の称号は最近ゲットしたけどなに? 人間界じゃ、勇者は怪しげな人物は幼女だろうがなんだろうが即殺せって言われてるの!?」
「それは、今の人間界は状況が……」
「あなた達がそんなスキr」
「あんたは黙っててニンジャ! 爆発四散させるよ!」
柊何某の足元を爆発させる。私は今タクに話してるんだ、タクの近くでベラベラベラベラ喋ってるだけの女子は黙っててほしい。魔眼でのゴリ押しでステータスとか色々覗いたから分かるけど、私とさして変わらない平坦め。
「それに! さっきから散々言われてるこの《暴食》のスキルだって好きで取った訳じゃないしぃー! タク達が持ってるのと同系統のスキルで悪影響は中和してますー! そっちの事情もある程度分かるけどさ! それでもさ!」
多分人間界は大変な事になってるんだろうし、今までのタク達の動きを考えるなら街を守ってたとかそんなんだろうし、でも一番最初に謝って欲しかったよ……
「まずは2人とも1発殴らせて?」
隣で雰囲気に飲まれてポカンとしてしまっているロイドの右腕を見て、まだ仕舞ってなかったナノゴーレムを右手に纏わせる。魔法とスキルによる補助は全開、硬度はMAXで手の保護も万全。
そしてタクに近づいていく中、私の背中に創形されていた3枚の羽のうち一本が消える。
「衝撃のォォォ! ファーストブリットォォォォッ!!」
「ぐはぁっ」
そしてそのまま、後ろの柊何某を巻き込んでタクは吹き飛んでいった。大丈夫大丈夫。軽く150mは吹き飛んだけど、タクの方は同時に回復魔法も叩き込んだから死にはしないさ。
「そんなタクなんて! だぁぁぁぁぁいっ嫌いだあぁぁぁぁぁ!!」
大声で叫んでから、ふぅと汗を拭う。いやー、スッキリした。
「俺、イオリにあんな事言われたら心が折れる自信があるぞ……」
「だからやったんだもん」
プイッとタク達を吹き飛ばした方向から顔を背け、アルさんの方に戻る。いや、でもよくよく考えると謝らなかったのはあの柊何某のせい?
イオリちゃんの頭の中は、絶賛混乱中です。怒りとか嫉妬とかイラつきとか色々で。