異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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すみません、諸事情(急な課題)により遅れました。


第16話 どこにだって七光りは居る

 新しい職業ゲットの事でなんやかんやあったけど、私達は今ロイドが戦闘の方の試験をしてるっていうギルドの闘技場に向かっていた。

 

「ねぇティア、やっぱり試験っていうからにはかなり強い人と戦ってるのかな!?」

「多分。それじゃないと、試験にならない」

 

 もしOKしてくれるなら私も一回戦ってみたいなぁ……そんな事を思いながらパタパタと走り、ものよ数分で闘技場に到着した。

 だけど、そこで私が目にした光景は……

 

(え、は? 相手の人、弱すぎじゃない?)

 

 直前の予想とは違って、この一言に尽きた。どうやら得物は大きな斧……バトルアックスってやつなんだけど、私が使った方がマシってくらいにしか使えてない。しかも動きが遅いせいでロイドに擦りもしてない。

 

「ね、ねぇリュートさん。これって前哨戦でいいんだよね?」

「アイツ、雑魚」

 

 いくら私とティアとの模擬戦(死ぬ気)を連日続けていたって言っても、仮にもSランクとここまで差が開くなんてあり得ない。 だってどう見てもティアの言う通り雑魚だもん。

 

「いや、アレでも一応Sランクの冒険者らしいよ。戦士タイプの」

「正直なところ、私でも勝てそうだって思ったよ」

 

 リュートさんとレーナさんがそう答える。なん……だと、確かにロイドは私製の装備を着てるけど、それでもリュートさんといい勝負って感じだったんだよ? 

 

「あんな粗悪品の武器防具に振り回されるような雑魚が、Sランク……?」

「いや、+7は十分名品だからね」

「そこはイオリちゃんの感覚がおかしいからね?」

「……あれ?」

 

 +7なんてある程度適当にやっても作れるようになったせいか、感覚がおかしくなってたみたい。だけど、あの武器が名品っていうならそれはそれで……

 

「一鍛冶師としては、マトモな人に使われない装備が可哀想……かな。ちゃんとした整備がされた様子も無いし。まあ、私らしくない考えだけどね」

「ロイドも、呆れ半分みたい」

 

 そう言われてロイドの顔を見てみるけど、目の前に集中してはいるものの表情から呆れが見て取れる。

 全身鎧を着てる相手のせいか、ロイドは思いっきり攻めに移れないでいる。うーん、ちゃんと刃筋さえ立てれば私の剣ならあんな鎧、一太刀で両断できるのに……

 

「そういえば、なんで普通の武器でやってるの?」

 

 目の前のバトルを見て、ふと思ったことをリュートさん達に聞いてみる。審判みたいな受付嬢さんはいるけど、話しかけに行ける雰囲気でもないからね。

 

「原理は分からないけど、気絶かHPがなくなっちゃう攻撃を受けたら外に出される結界が張ってあるんだって」

「まあ、よくあるデュエル用のフィールドってやつだよ、イオリさん」

「マスター、そこから結界」

 

 そう言ってティアが指差す場所を解析してみると、確かにそういう効果の結界が張ってあるみたいだった。うーん、でも義手の必殺技はどっちもそれくらい貫通しちゃいそうだなぁ……

 

 面白いから、とりあえずティアに似たような効果の魔法を作れないか頼んでおいて……精霊使いが荒いって言われたけど、楽しそうだからいいじゃん。

 

「これって応援しても大丈夫だよね?」

「お好きにどうぞって言ってたね」

「ありがとリュートさん」

 

 一応そこそこ距離があるので、一旦息を大きく吸い込んで私は言う。元々応援するつもりで来たんだし、やっぱりやっておかないとね! 

 

「ロイドー、やっちゃえー!!」

「おうっ!!」

 

 私の声が届いた途端、ロイドの動きが良くなった。私の声には、ワルキューレとかシンフォギア的効果が!? いや、無いよね。

 対戦相手がすごく驚いてたから、耳をすませてどんな会話をしてるのか聞いてみる。

 

「な、お前今まで本気じゃなかったのか!?」

「当たり前だ!!」

 

 うん、まあそうだよね。ロイド、魔法を一切使ってなかったし。それに義手の機能……スラスターもなにも使わずにやってたもん。

 

「はぁっ!」

「な、なんなんだよっ!?」

 

 全力で動き始めたロイドの振る剣は、全身鎧を少しずつ斬り飛ばしていく。ふふん、私の武器はあんな使い手を振り回すような品じゃないのだー!! というか、完全にロイド専用になるように2日に1回ずつくらいの頻度で調整してるし! 

 

 スラスターも魔法も使い始めたロイドに、元々ギリギリ以下の戦いをしていたSランク(仮)な人が耐えられる訳もなく……

 

「ち、ちくしょう……」

 

 そんな小物感溢れるセリフを残して、Sランク(仮)さんは大きくばってんに斬り裂かれて倒れた。血こそ出なかったからいいけど、こういうのを見るとやっぱり怖いって思う。

 

「勝負あり! 筆記・戦闘の結果から、冒険者ロイドをAランクからSランクに昇格します!」

「よしっ」

 

 剣を鞘に納めたロイドが小さくガッツポーズをする。私とリュートさんの時もそうだったけど、やっぱり嬉しいよね! 

 私達と受付嬢さんの5人分の拍手が響くなか、結界の外に放り出されていた例の男が何故か鎧が修復された状態で戻ってきた。

 

「対してダビルスさん、あなたはAランクへと降格です。普段の行動や依頼の怠慢、その結果がこの試合です。言い逃れはできませんよ」

「ま、待ってくれ。ここには他のSランクがいるんだ!! そ、そうだ、そこの小さいの! お前ら両方ともSランクなんだろ? 俺と勝負しろ!」

「「え?」」

 

 突然巻き込まれた。えっと、小さいのって言ったら私とティアだろうけど、私達と戦ってなにがあるの? 

 

「俺がこいつらに勝ったら、降格は取り消しにしてもらう!」

 

 そうビシッと決めるダなんとかさん。冒険者に、そんな権力なんてないよね? クラネルさんクラスならまだしも。なんて事を思っている内に、受付嬢の人が渋々といった様子で口を開く。

 

「仕方がありません、次は無いと思ってください。勝負はなんでもありの一本勝負でいいですね?」

「いいだろう」

 

 ……いやちょっとわけがわかりませんね。いきなりすぎてなにがなんだか……あ、負けるつもりは一切ないけど。

 

「すみません、私も自分の馘首(クビ)は惜しいのです。本当にすみません」

 

 そう小声で受付嬢さんが謝ってくれた。そして小声で事情を説明してくれる。なるほど、七光りのバカ息子ってやつか。私達を小さいのってしか言わなかったのもそれなら納得だね! 

 

「大丈夫です、負けるつもりなんてさらさらありませんから!」

「5秒あれば倒せる」

 

 こうしてなんだかよくわからない内に、よくわからない戦いを私達は押し付けられるのだった。よくわからないまま戦うけど……うん、生き物の定めだよね! (違う)

 




山月記感

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