異世界に転移したと思ったら転生者? 〜〜幼女で鍛冶師な異世界転生〜〜   作:銀鈴

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なんで休日に模試があるんだよ…平日にやってよ…
あと授業ならまだしも、テストの数学100分は長いよ…他のと同じで80分でいいって。


第11話 お風呂でピンチ

 あれから40年! じゃなくて2時間と少し経った頃、一応事情聴取みたいなものを受けた後、マスゴミに捕まりたくなかったので私達は早めに家に帰ってきていた。

 

「まさか、戻ってきた初日にこんな事に巻き込まれるなんてなぁ……」

 

 私がそうボヤくのは、家のリビングで開いた《もう一つの世界(アナザーワールド)》の中だ。明日は姉ちゃんと一緒にお買い物だし、1日でも休むと腕が鈍っちゃいそうだから中で物作りをしてる。

 

「マスター、お義姉ちゃんと一緒にいなくていいの?」

「うん、今はリュートさん達とお話ししてるみたいだからね」

 

 開けたままのドアの向こうからは、リュートさんと姉ちゃんが何か話をしているのが聞こえてくる。なんか、向こうでも私はこういうトラブルに巻き込まれるのかーとか、いやいやもっと酷いことの方が多いですよーとかそういう話だ。

 

「そういえばマスター、さっきから作ってるソレは、なに?」

「ん? ティア用の杖ー。いつまでも私のこれじゃ嫌でしょ? 元々はこうやって……」

「きゅう?」

 

 カードを手元に引き寄せて、フローを召喚する。よくよく考えたら、物を変に弄らないならここの中に召喚しっぱなしでいいのかも? とりあえず、フローの頭を撫でてその旨を伝える。魔物の素材は絶対たべないでねー! 

 

「召喚だったり封印だったりに特化した杖なんだし」

「確かにそう」

「だからこそ、専用のこの杖なのですっ!」

 

 私は今完成した、木と機械が絶妙に混ざり合った杖を掲げる。

 中心の棒には私が全財産を投げ打って買ったユグドラシルの枝を、その上には余っていたダンジョンコアを球形にした物を乗せて、金属製の底からは黒いヒヒイロカネと金のオリハルコンで二頭の蛇が巻きつくような意匠を施し、そして最後に大きく広げられた翼の形の魔法を強化するためのパーツを付けて完成だ。

 

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 カドケウスの杖

 

 AGL +540

 DEX +650

 MIND +600

 INT +666

 LUK +78

 

【属性】混沌

【耐久】頑丈(自動回復)

【重量】2.4kg

【全長】140cm

 

《スキル》

 Acta est fabula(アクタ・エスト・ファーブラ)

 無限連鎖反応(アルファサイクル)

 魔法効果極大化 Lv── 魔法範囲強化 Lv ──

 

《備考》

 イオリが全力を尽くし、パーツの一つ一つを丁寧に作り上げたユニーク装備の杖。自身の大鎌とはまた別の方向へ壊れており、その能力は魔法方面に特化している。一定以上の強さを持たない者がこの杖を使おうとした場合、魔力供給過多となり爆発四散する事になる。

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 スキルが少ないのは、1個目のユニークスキルが死ぬほど容量を食ってるからだけど、その分の強さはきちんとあるから大丈夫! 

 

「マスター、ユニーク装備は、普通国宝とかだよ?」

「うん、それで?」

「それで? じゃない。そこのタンクの中身といい、国宝級の物を量産するのはダメ」

 

 いやいや、流石に私も量産なんて事は出来ないって。そこに吊ってある大鎌もその杖も、パーツ一つ一つを全力で造ったんだもん。杖だって何日か前からゆっくり作ってたんだし。ナノゴーレムは……言い訳のしようがないけど。

 

「それでも、数日で国宝級の物を作れるのは、頭おかしいとしか言いようがない」

「えー」

「えーでもない。少しは自重をする」

「うぅ……それじゃあ、みんなにはヒミツにしてた刀鍛冶の人の作業をコッソリ見に行くのも……だめ?」

 

 しょんぼりしながら私はそう言う。せっかく日本人なんだし、伝統芸能って言うのかな? 一応同じ鍛冶師だから、見てきたいって思ってたのに……転移と透明化が使えるんだし。

 

「いや、それは別にいい。見れるかどうかはともかくとして」

「よかった……」

 

 実は刀はそんなに上手く作れてないので見てみたかったのだ。日本にきてやりたかった事の上位に位置する事がダメって言われなくて安心していると、外から姉ちゃんが私達を呼んだ。

 

「結衣姉なにー?」

 

 杖は一旦置いてティアと一緒に外に出ると、そこには3()()()のタオルと着替えを持った姉ちゃんが待っていた。その手にあるのは、明らかに姉ちゃんの服と昔の私の服達とだった。

 オフロガワキマシタって音が聞こえたし、これってまさか! 

 

「久しぶりに一緒にお風呂でもって思ってね」

「い、いやいや、久しぶり言っても私が小さかった頃の話だよね?」

「今の蒼矢、小さいじゃない」

 

 なにも、言い返せない。確かに私とティア、姉ちゃんが一緒に入ってもギリギリスペースは大丈夫だろうけども……男の時とはまた別の羞恥心が……その……なんというか。

 

「ひ、1人でも入れるよ?」

「だーめ、あなたは元々男の子でしょ? ほら髪もこんなにボサボサになって……ないわね。異世界ならもっと、髪の毛が傷んでたりすると思っていたけど……」

「王族ごよーたしのシャンプーとかリンスとか使ってるからね!」

「勿論私も」

 

 私の言った言葉にティアも同意する。ミーニャちゃんの所のお風呂で使ってたやつを、かなり高額ではあるけど私も買って使ってるのだ。出費は馬鹿にならないけど、髪の毛は大切って言われたしね! 

 

「へぇ、異世界の王族御用達の……気になるわね」

「あっ」

 

 姉ちゃんの目がキラリと光ったように見えて、私達は作戦が失敗した事を悟った。あ、もうこれ一緒に入るしかない感じですね。

 

「れ、レーナさんたすけ」

 

 引っ張るのが姉ちゃんなので力を込めて暴れるわけにもいかず、最後の頼みとしてレーナさんに助けを求めてみたけど、笑顔で手を振ってくるだけだった。

 

(ティア、覚悟決めようか)

(それしかない)

 

 ティアと頭の中でそんな話をしながら、私達は風呂場へと連れて行かれるのであった。

 あれ? そういえばロイドはどこに? 一緒に帰っては来たけど……

 


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